ーこの教本の先としてはクラシックでもいいし、クラシック以外の音楽でもいいという感じでしょうか。
木村:そうですね。スティール弦でもナイロン弦でも何のためにテクニックを習得しようと頑張っているかというと、楽器の持っているポテンシャルを活かすために音のレンジ、強弱をどれだけコントロールできるかが最も重要な要素と考えています。
速く弾くこと、ゆっくり美しく弾くこともありますが、いかに音を大きくしていくか、小さくしていくかを、右手、左手のバランスのコントロールというのが最終目標です。
この教則本は初級、中級、中の上までカバーしている本ですが、レンジをコントロールしていく基礎的な部分が凝縮されています。
ーナイロン弦とスティール弦の違いをわかりやすくいうとどのようになりますか。
木村:僕の感覚ですが、ナイロン弦はスティール弦よりも音量が大きく、よりレンジのコントロールが要求されると思います。エレクトリックの要素をつけずに生の楽器としてコンサートホールなどで鳴らすものであり、小さい音から大きい音までコントロールを習得するにはとても有効な楽器だと思います。
スティール弦でも大きな音が出ますが、音量の幅はナイロン弦の方があると思います。
その中でスティール弦はパーカッシブなリズムセクションなどの歯切れ、シャープさや特殊奏法などが重要になる場合があります。これらが大きく違うと思います。
ーこの教則本はスティール弦におきかえてもできそうな感じですが、ナイロン弦独特なところはありますか?
木村:親指のグリップは大きいと思います。アコースティックギターではコードで歌の伴奏に特化している人が多いですが、メロディーとベースとコードなど一緒演奏するソロギターがあり、小指が届かないなどの場合、クラシックのフォームでの親指の位置はソロギターに有効です。クラシックギターのフォームをアコースティックギターと融合させてよいと思っています。
親指が移動しなかったり、親指でフレットを抑えたまま他の弦を押さえるなどで左手を痛めた人をたくさん見てきたので、ここは慎重に情報を得ながら練習してほしいという気持ちは強くあります。
ー教則本で特にここを注目してほしいというのはありますか?
木村:1週間のトライアルから全部つながっていて、何かを飛び越えていくことがほとんどなく基礎を重要視しています。
それがアルペジオになったり、アルペジオでも逆の動きになったり、右手の動き、左手の動きを丁寧に説明しています。
ギターは左手で押さえて右手で弾くだけではなく、そこに思考があるのが重要です。コンマ1秒くらいの動作のための思考があり、それを常に準備することを、この教本の中で重要としています。頭を使いながら、左手、右手をストレッチしていくんです。
ーここに掲載している曲を練習することにより、他の曲にも応用がききそうですね。
木村:目茶苦茶ききますね。ギターをただ弾いても上達しないんです。そこで歌ったり、手拍子したり、弾きながら譜面を歌うだけで音の捉え方が変わってくるし、ギターも鳴るようになってきます。歌って、ギターを弾いて、というのを繰り返していく内容になっています。
ー木村大さんの近況をお聞きしたいと思います。最近はどのような活動をされていますか?
木村:最近は上半期、8月くらいまでMusic Lab.に対して時間を使い、下半期をコンサートと制作活動にあてています。
今年は10月以降にコンサートを予定していて、教則本のプロモーション、ワークショップなどもあります。
来年2月からは沖仁さんとのツアーも控えています。
1年通して目まぐるしいですね(笑)。とても充実していて、Music Lab.はこれまで会えなかった人たちと出会える場になっていますし、自分が外に出ていく時はギタリストとして準備する、メリハリを感じています。Music Lab.は思っていた以上にやってよかったと思います。
ーMusic Lab.は4年前から開始したということですが、どのようなきっかけだったのでしょうか。
木村:土浦の文化人の方たちと土浦は文化度が低いよね、みたいな話になったのですが本当にそうなのかなと思い、もしかしたら僕の知らない誰かがいるんじゃないかと思いMusic Lab.を立ち上げてみたら、哲学家や小説家など、いろいろなアート、音楽に意識を向けている人たちが多くいて、こういう場所を待っていた、という感じでした。
ぜひ自分もとか、音楽したいです、という人たちが集まり驚いています。
アートや音楽に意識を持っている人たちがこれだけいるというのは本当にすてたものではないと思うし、色々な意味で世の中が発展していく中でアートに対する感覚は、ご飯を食べたり洋服を着るのと同じように、当たり前のように身につける文化として長く続いていくという期待しかないですね。
当初こういう場所をプロデュースするということは全く考えていなかったのですが、周りのスタッフや家族からアイデアをもらったり、音楽を言葉として発してアクションを起こすきっかけをもらえました。4年前は想像がつかなかったですが、楽しいですね。
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