CDレビュー〜「Another Frame」伊藤賢一 
           
 スティール弦、ナイロン弦の両方を巧みに使用する伊藤賢一のニューアルバム「Another Frame」がリリースされた。ソロアルバムとしては5年ぶり6枚目となる。 
 
 普段から生音でのライブも多く行っているが、そのポリシー、活動内容を反映するように、まずはギターの音の良さ目立つ。ギターそのものの音の良さと、それを忠実に再現するようなこだわりの録音によるものだろう。 
 
 楽曲はバラエティに富んでおり、カヴァー曲が3曲ある。いわゆるソロギターのカヴァーはポップスなどの一般的に有名な曲をソロギターアレンジすることが多いが、本アルバムではアイルランドのターロック・オキャロラン(1670〜1738)とフランスのジーン・マリエ・レイモンド(1949〜)とマニアックともいえる選曲。その楽曲はとても美しく、アレンジ、演奏も素晴らしい。オキャロランの「Carolan’s Ramble to Cashel 」では三好紅さんのヴィオラが入り、一層情感がこもった仕上がりだ。 
 
 オリジナル曲も充実しており、1曲目の「Inner Medium」はもともとアルバムタイトルに予定していたとのこと。その経緯は省くが、ヘルマン・ハウザーII世で奏でられる演奏は、このアルバムが充実したものであることを感じさせる独特な雰囲気を醸し出している。 
各曲強い個性を持っているが、印象的なのは「囚われの月」。洋題を「The Moon」としているところも面白い。和を感じさせつつも、それだけではない様々な展開のスリリングさがよい。 
 
 ソリチュードはギタリスト垂石雅俊氏とのデュオ。前作「Tree Of Life」の冒頭飾る曲だが、本作ではスティール弦のデュオでの演奏。アレンジは垂石氏が行っている。 
 
 「おかえり」は伊藤賢一氏をとりまく環境を知しりながら聴くととてもせつない。それを抜きにしてもやさしい曲調はとても魅力的だ。 
             
             使用ギターは「Ken Oya Model-J 2008年」「Hermann Hauser II 1960年」(ナイロン弦)「Martin D-18 1952年」「M.J.Franks 2016年」と4本。スティール弦3本も録音状態が良いため、音色がそれぞれ異なっていることがよくわかり、音色の違いも楽しめる。 
             
             先述した通り、とにかく音が良いアルバムなので、良いオーディオ環境であればその真価も発揮される。電気店などでは良いオーディオで試聴をさせてくれるので、試してみるもの良いでしょう。
             
             
             
            伊藤賢一 オフィシャルサイト  
             
            発売時期:2017年5月15日 
            販売価格:2,500円(税込) 
             
             
1.Inner Medium 
2.Carolan’s Ramble to Cashel (T.O'Carolan) 
3.ハックルベリーの舟出 
4.夜明けの街 
5.カロスの朝 
6.囚われの月 
7.ソリチュード(Duo) 
8.Jardin Secret(Jean Marie Raymond) 
9.Sweet Bonnie Dickinson(Jean Marie Raymond) 
10.おかえり 
11.道のりのどこかで 
  
            販売サイト  
   
   
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            【2017/5/18】