ーギターはいつ頃から始めましたか。
山本哲也(以下、山本):14才からです。Bon Joviに衝撃を受けました。当時J-POPなどのカセットテープの貸し借りをしていたのですが、その中にボン・ジョビの曲が入ってました。圧倒的に他の曲と違うんです。
ボン・ジョビを演奏するならエレキギターなのにギターのことを全く知らなかったので、僕はアコギを買いにいきました(笑)。でも楽器店で店員さんがエレキギターでVan Halenを弾いているのを見て、こっちだと思いエレキギターを購入しました。
ーボン・ジョビなどロックをコピーしていたのでしょうか。
山本:ボン・ジョビはアルバム数枚コピーしました。楽譜が出ているのを知らずに耳コピをしていましたね。その後に楽譜の存在を知りましたが、タブ譜が読めませんでした(笑)。中学2,3年生の頃はクラスメイトとバンドを組んでいましたが、もっと本気でバンドをやりたいと思い楽器店に相談したら大学生を紹介してくれたんです。それで中学生の僕がが大学生にまじってバンドで演奏をしていました(笑)。ここではいろいろなことを教えてもらいましたね。
高校生までバンドを続けましたが、当時はGLAYやJUDY AND MARYなどが流行ってましたが僕らは洋楽や訳のわからない海外のバンドのコピーなどをしていました(笑)。今とスタンスは変わってませんね。
いろいろなコンクールなどに出て、名古屋の大きなコンクルールではファイナルにいきましたが、周りはデビューを狙ってるバンドなどが多く、学生は僕たちくらいでした。ライブスケジュールなどインタビューもされましたが特に予定はなく(笑)、このコンクールのために練習してきていました。
ーエレキギターからアコースティックギターに変わったのはいつ頃でしょうか。
山本:19才の時です。バンドをストイックにやっていて、当時はアコギは弾き語りのイメージがあって好きではなかったんです。今はフォークも格好良い奏者がたくさんいるのをわかってますが、当時はあまりよく思ってませんでした。
みんな卒業してバンドをやりきった感じがあり、ブルースやフュージョンなどもやってみようかと思いましたがノリきれず、もうギターはいいかなと思っていたら、当時師匠のような方にもっといろいろな音楽を聴いてみた方がいいと言われ、教えてもらった中にケルトミュージックがありました。
アメリカのAl Pettewayというギタリストをたまたま聴いたのですが、ボン・ジョビと同じくらい衝撃を受けました。DADGADの音楽で目茶苦茶格好良かったです。それでエレキギターや機材を手放し、アコギを始めました。直感でエレキを弾きながらケルトを弾くことは無理だと思いましたね。エレキでアドリブやソロをやってきましたが、これを置き去りにしないとケルトは無理だと感じました。でもエレキでやってきた理論、コードなどはすごく生きてますね。
ーケルトミュージックはどのように練習したのでしょうか。
山本:最初はよくわかりませんでした(笑)。海外のミュージシャン本人に直接メールで聞いたりしました。CDを購入して仲良くなってルーツを聞いたり、アイリッシュセッションでギターを弾いてる方にいろいろ聞きました。
アイリッシュギターはジャンルとしてはとても不安定で、みんなそれぞれ違うんです。チューニングもレギュラーで弾く人もいるし、ドロップDやDADGADで弾く人もいて、奏法も違います。完コピが存在しない世界で、自分のフィーリングを見つけていく作業が必要なんです。自分に合うチューニングを考えていろいろ試しましたが僕は今はDADGADで弾いています。最初はレギュラーやドロップDの曲があったり混在してました。でもDADGADが一番落ち着くようになりましたね。レギュラーで弾いてると早くDADGADにしたくなります(笑)。僕の中ではレギュラーが変則チューニングですね。
ソロギターではPierre Bensusan、Tony McManusなどの曲もコピーしました。
あとアイリッシュの情報が無い時代から長く演奏活動を続けている原口トヨアキさんという、ギターだけでなくパイプス、笛などマルチな奏者にメールをしたりして名古屋でお会いしたり、いろいろな音源を紹介していただきました。聴くポイントを教えてくれましたね。このギタリストはこのチューニングで、このアプローチだとかですね。原口さんはアイリッシュ系ギタリストのまとめサイトみたいのを作ってましたので、よくチェックをしていました。ハンマーダルシマーの小松崎健さんにもいろいろ教えていただきましたね。
ー個々にスタイルが異なってくるのですね。アイルランドでも同じような状況でしょうか。
山本:そうですね。年代によってアプローチが変わってきたり、地域によっても変わってきたりしてると思います。70年代はDADGADで弾くのが普通でしたが、今はバリエーションが増えてます。ジャズとアイリッシュの融合などですね。レギュラーチューニングも増えてきています。
ジャズやブルースなどをやっていた時と同じようにより伝統的な方向へ遡っていくと、そのスタイルに固執し過ぎてしまうこともありますが、僕は伝統的なものをリスペクトしつつ、自分のフィーリングで弾くのがいいと思ってます。
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