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ギタリストインタビュー〜シオミモトヒコ
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ー使用しているギターについて教えてもらえますか。

シオミ:ここ十数年ほどはコリングスとテイラーを使っていました。元々トリプルオーのギターが好きで、コリングスの評判がよく実際に見てみたらよかったんですね。コリングスのネックはアコギでは珍しいボルトオンで、僕が楽器業界にいた当時ではあり得ないような仕上げですがすごいギターです。ギターの技術革新が進んだのに驚きました。
ライブではテイラーを使ってましたが、これもボルトオンで、工業製品としてすごい完成度です。
指板のフラットさ、フレットの正確さというのは手では真似ができないない精度だと思います。

あとはレコーディング時に再三利用したホテルの近所にあったドルフィンギターズで衝動買いしてしまった、製作家の西恵介さんがプロデュースしているWEDGEというギターです。僕はアコギは弾きこんでから鳴らすのに5年、10年かかるという古い感覚があるので、もう自身が50代になって以降、新しいギターを買ってもそのギターがベストに鳴る頃にはこの世にいないと思ってギターを買う気はまったく無かったのです(笑).
ところがこのギターは新品でもすごく鳴っていて、録音中のある曲にはこのギターの方がいいかな、とか思って買ってしまいました。最初にレコーディングした曲も何曲かこのギターで録り直しもしました。
ライブではテイラーにM-Factoryを付けて使っていましたが、今はWEDGEに付け替えています。
ただし、これらの今の手元にあるギターはどれも100%満足して買ったかというとそうではありません。テイラーもコリングスもスペシャルオーダーであちこち注文を付けてどうにか折り合いを付けていましたし、WEDGEも手に入れてからすぐにピックガードを貼って、ネックを削って握りを変え、ヘッドの裏の突起部分のエッジを丸く滑らかに削り、さらに塗装もつや消しへと、自分の支配下に置くため、あれこれと手をかけてもらっています。

実は本当にフェイバリットなギターに関しては、ある縛りを自分に課していることがあって、いまだにそのギターには辿り着いていないのです。
というのは、古くからの家族ぐるみの友人で内田光広さんというギター製作家がいますが、彼の奥さんは昔僕にギターを習っていたことがあるのです。
内田さんはもともとクラシックギターの個人製作家の下で修業を積んでナイロン弦のギターを作っていたのですが、そんな縁で知り合ってからスティール弦のギターでもソロの音楽があるということを知った経緯があって、その後、彼ら夫妻はドイツに渡りローデンギターの工場長をやったりして、スティール弦のギターに関する経験値を増やしていきました。やがて帰国して長野に工房を構えて、内田ギターの製作をスタートさせるわけですが、初めて遊びにいった時、シオミさんのギターを作る時のためにこのネック材をとっておくからね、と言ってくれたんです。
僕もやがて内田さんに完全に自分の好みを満足させるギターを作ってもらうつもりでその話を当然のように聞いていたのですが、その後何年経っても僕のギターに対する態度が定まらず、頼む方向性が絞り切れないまま、適当に妥協して今所有しているギターたちがたまたま僕のギターということになってしまっていて、本当に大切にしたいと思える最愛の伴侶は内田さんに頼む時、という縛りが自分の中にできてしまっているのです。

ー内田さんにオーダーはしないのですか。

シオミ:多分このまま出来ないで終わるかも知れませんね。お箸は内田製でハカランダなんです(笑)。今も毎日使っていますが、お箸のハカランダはお勧めできません(笑)どうやらこの木は水に弱いようです。
これは内田さんの奥さんがギター材から作ったものです。いろいろな材で作ってるようですが、僕は気に入っている握りのお箸を送って、これと同じように作ってくれとお願いしました。お箸はスペシャルオーダー製です。

ー最後にギターファンにメッセージをお願いします。

シオミ:ギターを通じて僕が一番お世話になった中川イサトさんがお亡くなりになりました。CDが完成したらお知らせしようと思っていたのですが、制作していたこと自体伝えておらず。完成が間に合わず本当に残念です。フィンガースタイルのギタリストや製作家、ギターメーカー、更には楽器店からライブハウス、出版社に至るまで、これらの人たちの全てのとっかかりは、イサトさんが永い時間を費やしてきた種まきから派生して育ってきたものだと思います。中国の古い諺で「水を飲む時、井戸を掘った人に感謝する」という話がありますが、この種の音楽を楽しむ人たちは中川イサトさんというギタリストが居たことを忘れないで欲しいと思います。
僕はイサトさんの切り開いた道をさらに伸ばすという役割は背負いませんでしたが、岸部君や押尾君が着実にその道を辿ってくれていると思っています。
晩年のチェットアトキンスのステージで錚々たる後輩ギタリスト達がチェットに対するリスペクトを込めながらセッションしている姿が印象的でしたが、イサトさんにももっと長生きしてもらって、そんな姿を見せてもらいたかったなと思っています。


■CDリリース記念ライブ■

日時:7月30日(土)Open/16:00、Start/16:30
会場:Denpo-G Studio
   愛知県一宮市伝法寺三丁目10-11
料金:2800
​予約:info@denpo-g.com

日時:8月26日(金)Open/18:30、Start/19:00 
会場:5th‐sreet
   大阪市西区南堀江1丁目1-12 浅尾ビル
料金:¥3000(ドリンク別途)
ゲスト:岸辺眞明

日時:9月18日(日)Open/16:30、Start/17:00 
会場:ラストギターミュージックスクール
   (ラストギター旧店舗)
   東京都杉並区成田東4-34-15 榎本ビル201
料金:前売り¥3000 当日¥3500​
​詳細:Acoustic Guitar World
予約・問い合わせ:info@aco-world.com


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シオミモトヒコ 
https://donighdecker.wixsite.com/eadgbe

京都生まれ​
幼少期は5歳からオルガン、その後ピアノ、クラシックギターとお稽古通い。
1976年 中川イサトギター教室に入門し、翌年最初の卒業生となる。
その後、当時はまだ珍しいフィンガースタイルのギター教室を愛知県で開始、関西の中川イサト教室、関東の岡崎倫典教室と共に合同合宿などを展開し、フィンガースタイル黎明期の普及に関与。 一方で楽器商社に永年従事し、カナダのLARRIVEEギター日本初上陸、タカミネギターの国内販売立ち上げのプロモーション展開などを担当。今や業界に定着した「エレアコ」という言葉を生み出した。
2022年オリジナルアルバム 「 ONCE AND FOR ALL 」リリース。
ONCE AND FOR ALL
ONCE AND FOR ALL

発売日:2022年6月1日
販売価格:3,000円(税込)

1. Morning Haze
2. 春かな
3. C#Rag
4. 8月
5. Maria Elena
6. Orange Jam [duet with 岸部眞明]
7. Eの呟き
8. どこか
9. Katsura
10. 晴れ時々曇り
11. 窓の向こう
12. 見上げてごらん夜の星を
13. ゆめのまた夢
Bonus Track
14. Danny Boy
販売サイト プー横丁
       Amazonで購入








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