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ーフィンガーピッキングデイはその翌年に出場されてますね。
矢後:そうですね。最初に比べると音の出し方一つから、全て変わっていたと思います。曲を弾くことに対しての意識も変わっていました。より表現というものに重きをおけるようになってきて、カヴァーアレンジを自分の表現で弾くには、どんな音色を使うかというところを考えられるようになりました。聴いて下さった方々は全然違うプレイヤーのような印象を受けたのではないでしょうか。
ーこの年はとても緊張している出演者が目立った気がします。その中でリラックスして自分の演奏をされていたように見えました。
矢後:コンテストなので緊張はありましたが、自分の音楽を表現することに集中できるようになっていたと思います。自分の求める音をしっかり出すことを第一に考えたら、結果がついてきてくれたと思います。
ー1回目と2回目の時でそれほど大きな変化があったのですね。
矢後:もう別人ですよ(笑)。本当に小松原さんの存在が未だに僕の中では大きいですね。あと、小松原さんにはセミナーの時にもっと芯のある楽器を使った方がいいよ、と言われました。当時はテイラー714を使っていたのですが、芯と言われてもあまりピンと来ませんでした。はい、とは言ったのですがよくわからないままでしたね。僕は楽器よりも弾き手の問題だろうと思ってたところがあったので、楽器はある程度よければそれでいいと考えてました。でも、段々気付いてくるんですね。
ー2回目のコンテストではスギクラフトを使っていましたね。
矢後:はい。当時は学生で超高級ギターのイメージだったので、一大決心でした。このあたりから小松原さんに言われたことに薄々気付き始めるんです。芯のある音というか、まず自分の表現したい世界を出せるギターとそうでないギターがあるということに、なんとなくの感覚ですがわかり始めてきたんです。ライブを始めた頃は父からもらったギブソンJ-45使っていたのですが、どう考えても違うんですよね(笑)。自分の出したい音、世界が見えてくるにつれて、ズレというのが大きくなっていくんです。テイラーは何か違うと思い始め、このままではこれ以上広がっていかないのでは、というあせりというか、危機感のようなものを感じ始めました。そこでいろいろギターを見て、スギクラフトを購入しました。
ースギクラフトをメインで使用していたのはどのくらいの期間でしょうか。
矢後:2年くらいです。あらためて考えると結構短いですね(笑)。
ーフィンガーピッキングデイは2012年に優秀賞、2013年に優秀賞、オーディエンス賞、オリジナルアレンジ賞を獲得していますね。
矢後:どうしても、自分で勝手に作って勝手にライブしているので、周りからの評価が見えにくいです。それが形としていただけたというのは嬉しかったですね。同時に、聴いてくれる方がたくさん増えたので、フィンガーピッキングデイには感謝しています。2013年に3つの賞をいただき、アルバム制作のきっかけにもなっています。特にオーディエンス賞というのはお客さんに選んでもらったので、とても嬉しいです。
ーオーディエンス賞を獲得したことで、レコーディングをされたのでしょうか。
矢後:オーディエンス賞の副賞は、コンテストで演奏した2曲のレコーディングです。曲はどれでもいいよと言われてましたが、僕はコンテストの2曲を選びました。ここで録音して、葉山ムーンスタジオのAKIさんからアルバムも作ってみない、というようなお話をいただいたのですが、半年くらいはどうしようかと考えていました。その間に、使用ギターが変わったんです。去年のハンドクラフトギターフェスで、M-Factoryのギターに出会いました。
ー展示されていたものを購入されたのでしょうか。
矢後:はい。どうしてもこれがいいと言って、譲って頂きました。人それぞれだと思いますが、僕はオーダーという選択肢があまりなくて、実際に手に取ったギターを気にったら欲しくなるという感じです。メーカーもこだわりはないですね。フェスで弾いた感覚が忘れられず、その後何回もM-Factoryの三好さんのところに通って弾かせてもらいました。このギターが自分の表現にとって本当に適切なのかというのをじっくりと見極めたくて何回も弾きにいきましたが、やはりこれだと感じましたね。9月頃に購入しましたので、フェスから4ヶ月くらいたってます。
スギクラフトを使っていて、自分の弾き方が変わってきて、ここが欲しいとか、自分の楽曲の中でスギクラフトで出ない音を使いたくなったんです。ライブでは何本もギターを持っていけないので、どの曲でもいける万能で自分の出したい音が出せる1本ということを考えると、必要だと思いました。なので、曲によってはスギクラフトの方がいいものもあります。でも、ライブを1本で通して弾くことを考えると、M-Factoryが合ってるんですね。
ーM-Factory購入直前くらいはスギクラフトの弦高をかなり高くしたようですね。
矢後:1度滅茶苦茶なくらい弦高を上げてみましたが、そういうギターではないということはわかりました(笑)。これは弾き手の問題だとは思いますが、ピッキングの入力値に対してどんな反応をするかというのを見ています。これのキャパがスギクラフトはそんなにある方ではないんです。スギクラフトは音が軽いタッチでも十分に飛ぶギターで、これはすごいことなんです。ただ、僕は極端な表現を求めたり、要所要所で強いタッチを求めたり、重みのある音を出したいという要望が出てくるようになりました。端正な曲であればスギクラフトがいいんです。M-Factoryはピッキングの入力値に対するキャパシティ、ものすごい包容力があるので、どんな弾き方をしても応えてくれます。スギクラフトでそんな弾き方をしてしまうと、ギターの持つ美しいトーンが崩れてしまうんです。すごく繊細で透明感のあるサウンドですから。
いろいろなきっかけがあって、自分のスタイルが変わって、使うギターも変わってきました。求めるものが変わってきて、最初とは全然違ってきています。
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矢後憲太 http://acoustic-kenta-y.jimdo.com
1990年栃木県生まれ。フィンガースタイルギタリスト。多彩な奏法を駆使し、様々な情景、感情、物語などをギター1本でありありと表現する。色彩感溢れるその豊かな音色は、聴く者を色とりどりの世界へと誘う。
2012年、モリダイラ楽器主催全国規模フィンガーピッキングコンテストにて優秀賞を受賞。
ライブカフェ宮内家でほぼ毎週木曜日ライブを行い、多くのギタリストとも共演する。
2013年、同コンテストにて優秀賞、オリジナルアレンジ賞、葉山ムーンスタジオ賞 (オーディエンス賞)の三冠を受賞。
2014年、自身初となるフルアルバム『85.』を葉山ムーンスタジオレーベルよりリリース。
アコギソロでライブ活動を展開。ライブやイベントの出演に加え、ラジオ番組への出演やパーソナリティとしての活動、楽曲提供、バレエコンサートとのジョイント、アート作品展とのコラボレーションなど、他分野に渡って精力的に活動を展開。
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「85.」
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1.夢の旅路
2.85の夏
3.にびいろの風
4.Amazing Grace
5.群青と茜色
6.斜陽
7.君と僕の物語
8.A Whole New World
9.遠き春
10.My Way
11.風薫る季節
2,000円(税込み2,160円
CD販売ページ
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