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ギタリストインタビュー〜木村大
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ー東京国際で優勝し、17才でCDデビューしました。とても順調ですね。

木村:そうですね。「17」という響きがいいと思って、東京国際で優勝した後に、17才でデビューできるように頑張ろうということになり、うまくいきました。今思うと階段をトントン拍子に登っていたなと思います。

ークラシックギタリストとしてのデビューであり、デビューアルバムはスタンダードなクラシック曲もありますが、アンドリュー・ヨークの楽曲をとりあげるなど、現代曲への嗜好も強かったように感じます。

木村:ギターのコンサートを聴きまくっていましたが、最初は満足していても客観的にお客様の立場で聴いた時に、徐々に本当にクラシックギターはこのままでよいのだろうかと思ったんです。僕だったらこうするのに、という欲求が出てきたんですね。そこで17才の時に、クラシックギターの本質的な部分と、ポピュラーな曲を探してアンドリュー・ヨークという大きなキーワードが出てきました。大きな意味でアコースティックな音楽作りをしているという認識をするようになってきました。そういう意味では、現代ぽいけれどクラシックな演奏があって、アコースティックなサウンドも作ることができたと思います。

ー最初の段階から伝統的なクラシックだけでない音楽を目指していたんですね。

木村:僕はジョン・ウィリアムスが活動してきた歴史というのが、僕たち若い世代のギタリストに答えを示していると思っています。彼の活動というのは、バッハなどのクラシックもありますが、クラシックギターという楽器を使って映画音楽を演奏したり、バンドを組んだりもします。いろいろなサウンドを作り続けていて、それを見て感じるプレイヤーというのは、クラシックギターの魅力に気づくと思うんですね。その発想や柔軟性というのは、ジョン・ウィリアムスから得るものがたくさんありました。その上でアメリカのアンドリュー・ヨークという存在が、僕が向こうとする方向にいるんです。

ージョン・ウィリアムスのバンドというのは確かに衝撃的でしたね。

木村:クラシックの休日とか言われてましたね。彼は本気だったのに(笑)。目茶苦茶面白いアルバムではないかもしれませんが、エレアコを使って足を組んで弾いているというのは、ギターの一つの形だと思います。これが許されるギタリストだし、僕らの世代はかっこいいと思うことはどんどん真似した方がいいし、そこからまた若いプレイヤーが増えていくというように、クラシックギター界が盛り上がればいいなと思います。

ージョン・ウィリアムスがサンバーストやカヴァティーナを取り上げたことも大きいですね。

木村:ヒットソングがないと楽器そのものが衰退してしまいます。今はクラシックギターでヒット曲が全然ないから問題ですね。ヨークのサンバーストで世界的にクラシックギターが盛り上がりましたが、今はそういった作品が出ていないです。


クラシックギターを使ってどのような表現をするかとか、純粋に音楽を表現したかっただけなんです

木村大ーアルバムデビュー以降、ロンドンへ留学をしたりアルバムも精力的にリリースし、アンドリュー・ヨークやロラン・ディアンスなど現代曲も多く取り上げてきました。そんな中で驚いたのが、2013年にリリースされた「HERO」というアルバムです。クラシックギタリストらしからぬ選曲にみんな驚いたと思います。これは小・中学生の頃に聴いていたギターヒーローたちでしょうか。

木村:それももちろんあります。「HERO」を作る時に、大きい意味でのアコースティックということで、クラシックギターの枠を外し、自分が一ギタリストとして作品に向き合って演奏したり、リスナーに届けることがどのようなことなのかを考えた時に、ジャンルに関係なく、大好きなギタリストやギターに通じる作品にしたら素敵だなというところから始まりました。このアルバムはキングレコードの移籍第一弾のアルバムで、担当ディレクターとじっくり話をして作り上げましたが、いくつか候補曲を出してもらった時に、懐かしいという曲がいくつもあったんです。一番は「賢人」ですね。久しく遠ざかっていたので、新たな刺激と、これをギターにしたら面白いなと思いました。あとプログレ全盛期の時に誰もが弾いてみたいと思ったフレーズをやってみたいという、センチメンタルな部分もあったりします。幅広く選曲して、行き着くところは「SPANISH FLY」ですけど(笑)。クラシックギターという僕が原点としている技術と表現力を、どのくらい1本のギターでロックやポップスなどを融合して一つの作品にできるかなと思って「HERO」が生まれました。
そこにはとても広いアコースティックな世界が待っていて、クラシックもあり、ロックもありのサウンドです。よく木村大が別のジャンルに行ってしまったとか、もうクラシックはやらないらしいと言われるのですが、僕はクラシックギターをやめるとは言ったことありません(笑)。聴いてる人にとってジャンルは関係ないと思います。音楽がよければ評価してくれると思うし、クラシックギタリストという名前から一回離れて、クラシックギターを使ってどのような表現をするかとか、純粋に音楽を表現したかっただけなんです。

ーキングレコード移籍第一弾のアルバムですが、クラシックギタリストの作品という訳ではなく、アコースティックなインストゥメンタルの作品というものを作ることになっていたのでしょうか。

木村:そうですね。こういう中にバッハの曲を入れても映えると思います。メタルやロックの人たちはクラシックを大いに取り入れています。サウンドとして純粋にカッコいいか、カッコ悪いかです。このアルバムによってすごく広い世界に足を踏み出した、第一歩だと思います。

ー選曲、アレンジのどちらも独特だと思います。ヴァン・ヘイレンの「SPANISH FLY」はロックの人たちには人気曲ではありますが、かなり難曲だと思います。これをクラシックギタリストが弾ききってしまうというのはすごい発想だと思います。

木村:そこが面白いんですね。レコーディングをする2週間前に「SPANISH FLY」をやるかやらないかの話が出て、そこからアレンジと練習をしました。僕は完コピしているというのではなく、こんな感じだろうという耳コピをしています。レコーディング当日は100mを走るようなイメージでした(笑)。20本くらい録ったと思います。だんだんうまくなっていくんですよね。最後に弾ききった時に、思わず「イエイ」と言ってしまいました(笑)。

ーそのまま声も収録されていますね(笑)。

木村:そうなんです。自分でできるかできないか、崖っぷちに立たされるような瞬間もありますが、こういったことがそそられるんです(笑)。

ー「DEE」や「CHANGE THE WORLD」はアコースティックでよく取り上げらるとは思いますが、ジミ・ヘンドリックスの「PURPLE HAZE」というハードロックの代表曲はなかなかアコースティックなインストでアレンジする人はなかなかいないと思います。

木村:原曲はもっとスローな重いグルーヴなんですが、ギターインストにした時にトリッキーな部分と速くめまぐるしい展開がくる部分があるので、ラスゲアートを入れてラテンぽい雰囲気と、土ほこりが舞っているところが見えたらいいなと思います。

ー見事なバンドサウンドのアレンジだと思います。アコースティックのアレンジだともっと淡白になってしまいそうですが、重量感もあり、聴きごたえがあります。

木村:今はもっと変化していて、ライブではテクニカルな魅せる曲になっています。ライブハウスでは盛り上がりますね。

ー「HERO」にはカヴァー曲だけでなく、自作の曲も収録されています。これまでも自作の曲がありましたが、今回の「earth」は大作で、組曲になっていますね。

木村:今回のカヴァー曲は名だたるアーティストの作品を取り上げているので、その中で見劣りしないようなオリジナルの作品を作りたいと思っていました。このアルバムの中で自分の曲が見劣りしてしまうのであれば、僕の力もそこまでとなってしまうので、自分でハードルを上げたところもあります。自分が今思うフレーズを展開できるように構築して作り上げて、生まれてきたのが「earth」です。この曲を最初に持ってこようかという話も出たのですが、それは勘弁してくださいと(笑)。

ー確かに締めの雰囲気の曲ですからね。

木村:いろいろな曲をアレンジして、ある程度レコーディングを終えた時に作っています。なので、このアルバムがなければ生まれなかった曲です。オリジナルを作るという重要性は増してきているので、これからもそれを意識したいと思っています。



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木村大

http://www.kimuradai.com/

1982年、茨城県土浦市に生まれ。
5歳より父、義輝に師事、ギターと音楽理論を学ぶ。
小学1年で第13回GLC全国学生ギターコンクール小学校低学年の部優勝。
1996年、ギターのコンクールでは世界最高水準と言われる第39回東京国際ギターコンクールで見事14歳で優勝。
1999年、17歳でソニーより「カデンツァー17」でCDデビュー。
2002年4月より英国王立音楽院に留学、2004年帰国。
2013年キングレコードに移籍、第一弾アルバム「HERO」発売。
2014年アルバム「ONE」発売。

プロフィールの詳細→http://www.kimuradai.com/about/profile.html


「ONE」
ONE

発売時期:2014年5月21日
発売元:キングレコード
販売価格:3,000円+税


01.Nuovo Cinema Paradiso ニュー・シネマ・パラダイス
 (Ennio Morricone – Andrea Morricone)
02.Blackbird ブラックバード
 (John Lennon – Paul McCartney)
03.La Isla Bonita ラ・イスラ・ボニータ~美しき島
 (Madonna – Bruce Gaitsch – Patrick Leonard)
04.Don’t Know Why ドント・ノウ・ホワイ
 (Jesse Harris)
05.My Favorite Things マイ・フェイヴァリット・シングス
 (Richard Rodgers – Oscar Hammerstein Ⅱ)
06.Wonderful Tonight ワンダフル・トゥナイト
 (Eric Clapton)
07.Shape Of My Heart シェイプ・オブ・マイ・ハート
 (Sting – Dominic Miller)
08.tune チューン
 (Dai Kimura)
09.Levanter レヴァンタール
 (Dai Kimura)
10.Someone Like You サムワン・ライク・ユー
 (Adele – Daniel Dodd Wilson)
11.When You Wish Upon A Star 星に願いを
 (Leigh Harline – Ned Washington)

[Guest Musicians]
沖 仁  (Flamenco Guitar) *M3,9 by the courtesy of Victor Entertainment
ホセ・コロン (Percussion) *M3,9
JAH-RAH (Drums,Percussion) *M5,7

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「HERO」HERO

発売時期:2013年3月21日
発売元:キングレコード
販売価格:2,900円+税


01.Ayers Rock エアーズ・ロック 
 (木村 大)
02.SPANISH FLY スパニッシュ・フライ
 (VAN HALEN)
03.PURPLE HAZE 紫の煙
 (JIMI HENDRIX)
04.FRAGILE フラジャイル
 (STING)
05.DEE ディー
 (RANDY RHOADS[OZZY OSBOURNE])
06.INSPIRATION インスピレーション
 (GIPSY KINGS)
07.LOVIN’YOU ラヴィン・ユー
 (MINNIE RIPERTON)
08.BRON-Y-AUR ブロンイアー
 (LED ZEPPELIN)
09.CHANGE THE WORLD チェンジ・ザ・ワールド
 (ERIC CLAPTON)
10.BECK’S BOLERO ベックス・ボレロ
 (JEFF BECK)
11.THE SAGE 賢人
 (EMERSON,LAKE & PALMER)
12.earth アース
 (木村 大)

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