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ギタリストインタビュー〜木村大
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木村大ー「HERO」が2013年にリリースされ、1年2カ月後である2014年5月に最新作「ONE」がリリースされました。このアルバムも「HERO」とは異なる衝撃があります。アコースティックギターを使用されていることに驚きました。アコースティックギターへのチャレンジもテーマだったのでしょうか。

木村:チャレンジというのもありましたし、一つのアルバムや2時間のコンサートということを考えた時に、無理にクラシックギターを使ってスティール弦のような響きを出そうとするより、僕の中では曲に適した楽器を選びたかったんです。その曲が求めている楽器がウクレレやリュートかもしれませんが、今回はたまたまスティール弦のアコースティックギターだったんです。ナイロン弦の純粋していく淡いニュアンスとは、対照的なサスティーンがきれいなスチール弦を弾きたかったんです。

ー確かに「Blackbird」などはナイロン弦よりスティール弦の方が自然だと思います。

木村:多くの人がアコースティックギターの音が耳に残っているのに、そこでクラシックギターで弾くよりはスティール弦で弾いた方がいいと思いました。なおかつ、僕はスティール弦が初披露でレコーディングの1カ月前に決めたことなので、本当のアコースティックギターのスタンダードナンバーが1曲欲しかったんです。あと「ONE」のコンセプトが「愛」だったので、それを象徴するピースフルな曲を選びたいと思った時に、すぐに「Blackbird」が浮かんできました。アコースティックギタービギナーの僕にとっては(笑)やりがいのある曲じゃないかと。

ー今までアコースティックギターの録音はありませんが、弾いたこともなかったのでしょうか。

木村:持ったことないですね。初めてです。アコースティックギターを持ってないから知り合いに相談し、特注モデルがあるからということで弾いてみたら、島村楽器の開発しているモデルが自分が録りたかった音に近かったんです。

ークラシックギターとアコースティックギターはナイロン弦とスティール弦の違いだけでなく、テンションやネック幅など様々な違いがあり、右手も左手も奏法が変わってしまうのではないかと思います。

木村:そうですね。別の楽器として捉えていますが、いろいろと良いアコースティックギターに触れると、逆にアコースティックギターとクラシックギターの差異を感じなくなりました。ギターのメーカーやタイプによって全然違うこともわかりますし、弦を張った時にナイロンに近いやわらかさのアコースティックギターをセレクトしていくと、ナイロン弦とタッチ感もあまり変わらない感覚もあります。そういった楽器をセレクトしていった方がいいだろうということが最近わかってきました。レコーディングの時はこんなにも違うんだと驚きましたけどね。スティール弦を触って1年くらい経っていろいろな楽器を紹介してもらい、クラシックギターとあまり変わらない楽器や弦によって、違いが関係なくなってきましたね。
コードで鳴らすアコースティックギターと、フィンガーピッキングでクラシックギターに近い曲を演奏するためのアコースティックギターだと、それが顕著にわかります。コード弾きするギターで違和感があって弾きずらいという場合、技術的にカヴァーしますが、繊細な楽器だとクラシックギターと変わりません。ストロークをするか、指で弾くかというのがシンプルな選び方でしょうね。俗にいういいギターというのは、クラシックギターと似ている傾向があると思います。

ーアコースティックギターを弾いている人がクラシックギターを弾くというケースはプロでもアマチュアでもよく見受けられますが、逆にクラシックギターを弾いている人がアコースティックギターを弾くというケースはほとんどないように思われます。

木村:そうなんです。「ONE」を作る時にすごく感じました。ロックをやってる人たちもよくナイロン弦のギターで演奏していて、うまい下手ではなく、曲に合わせてナイロン弦の響きを使うなどの試みをしているのに、僕たちクラシックギタリストがそれをやるのはダメなのではという先入観があります。そんなこと全然ないんですよね。多分クラシックギターを演奏している人はスキルやポテンシャルがとても高いと思います。弾くというアプローチに対してもっと柔軟にできるのではと、自分でやってみて感じましたね。

ー長年クラシックギターを練習してきた人の演奏能力の高さというのは、相当なものだと思います。

木村:そうだと思います。センスはともかく(笑)。センスというのは平等で、自分で磨き上げていくものなので、そこはクラシックギタリストはステージパフォーマンスとして考えなければいけない気がします。精神を磨くというのがクラシックの大事なファクターですので、その精神性を聴きにくるリスナーと、そんなことよりもどのようなパフォーマンスで、どのようなギターの情熱で観客を沸かせてくれるなのかというリスナーとでは求められるものが全然違ってきます。
クラシックギターのコンサートというのはマイノリティーな感じがあると思います。みんなそれを打破しようとしていると思います。コンサートプレイヤーとして、クラシックギターを使っていくのか、それとも別のプロとしてやっていくのか、両方にするのかという選択は大事だと思います。僕はプレイヤーという道を選んで続けてきているので、魅せる時間と、音楽の精神も2時間のステージで伝えられたらいいと思っています。

ギターを弾くと返してきてくれて、それを僕なりに返すということができるアーティストです

ー「ONE」ではフラメンコギタリスト沖仁さんと共演されています。アルバムでの共演は初めてかと思いますが、コンサートなどでは今までも共演されていたかと思います。

木村:イギリスに留学する前の20才前後くらいだと思いますが、沖さんと出会っています。ギタリスト鬼怒無月さんと3人でギターサミットというライブをしました。この時はお互いクロスすることもなかったのですが、すごいフラメンコギタリストだと思いましたね。その時に、いつか沖さんと一緒にやる時がきっと来るだろうと思っていました。二人ともそれぞれの活動を続けて、「ONE」をリリースする1年前くらいに沖さんから連絡がきて、一緒に面白いことやらない?と言われました。それで沖さんのライブにゲストで出演しました。僕がクラシックギタリストとして、沖さんがフラメンコギタリストとして、二人が生きて、なおかつガチンコでやり合えるような曲を探してるということだったので、僕がとっておきの曲があるよと言って、ヴィヴァルディの「四季 Summer-Presto」という曲を伝えました。僕の「INFINITY」というアルバムに収録してるのですが、沖さんとならやれると思いました。これが沖さんと一緒にやるきっかけですね。1+1が2になることが当然ですが、プラスアルファになるギタリストというのは僕の中では多く経験していないので、沖さんの懐の深さ、フラメンコのポテンシャルも含めて凄いギタリストと感じる瞬間でした。リスペクトの気持ちをギターで返してくれるというか、安心してどの曲でも二人ならこういうことができるという話ができます。沖さんの存在というのはとても大事ですね。

ー「ONE」では2曲共演されていて、マドンナの「ラ・イスラ・ボニータ~美しき島」をアレンジされています。選曲もアレンジもかなり驚きました。木村さんのアレンジなのでしょうか。

木村:はい。僕のアレンジで、もう1曲の「Levanter」は僕のオリジナル曲です。アルバムのテーマが「愛」なので、僕がフラメンコに恋をしたという設定でそれぞれアレンジ、作曲をしています。アメリカのフラメンコの捉え方というのはメキシカンなんですね。なのでマドンナの曲は生粋のスパニッシュではない、ラテンの雰囲気です。それに対して「Levanter」はフラメンコの王道のコード進行を使っているので、沖さんには大暴れしてくださいと(笑)。これらが対になって面白いと思います。かたや情熱的でアクティブなラテンアメリカの旋律を弾き、かたや「Levanter」は「アルケミスト」というパウロ・コエーリョの小説からイメージをもらって書いた曲で、二人がギターを奏でて大事なもの、大切なものというのは何なんだろうというのを、ギターを通して二人で語ろうというイメージです。沖さんでないとできない作品です。

ー今後も沖仁さんとは共演をされるのでしょうか。

木村:はい。9月に大阪で沖さんのライブにゲストで出演します。

2015.09.13 Sun @大阪・大阪狭山市SAYAKAホール
沖仁 フラメンコギターコンサート~木村大を迎えて~
http://tone.jp/liveinfo/okijin/index_2.html

今新しい曲をやってみようと二人で話しています。いろいろなことができるので、沖さんと一緒に演奏するのは心がとても豊かになります。ギターを弾くと返してきてくれて、それを僕なりに返すということができるアーティストです。無理がないし楽しいですね。





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木村大

http://www.kimuradai.com/

1982年、茨城県土浦市に生まれ。
5歳より父、義輝に師事、ギターと音楽理論を学ぶ。
小学1年で第13回GLC全国学生ギターコンクール小学校低学年の部優勝。
1996年、ギターのコンクールでは世界最高水準と言われる第39回東京国際ギターコンクールで見事14歳で優勝。
1999年、17歳でソニーより「カデンツァー17」でCDデビュー。
2002年4月より英国王立音楽院に留学、2004年帰国。
2013年キングレコードに移籍、第一弾アルバム「HERO」発売。
2014年アルバム「ONE」発売。

プロフィールの詳細→http://www.kimuradai.com/about/profile.html


「ONE」
ONE

発売時期:2014年5月21日
発売元:キングレコード
販売価格:3,000円+税


01.Nuovo Cinema Paradiso ニュー・シネマ・パラダイス
 (Ennio Morricone – Andrea Morricone)
02.Blackbird ブラックバード
 (John Lennon – Paul McCartney)
03.La Isla Bonita ラ・イスラ・ボニータ~美しき島
 (Madonna – Bruce Gaitsch – Patrick Leonard)
04.Don’t Know Why ドント・ノウ・ホワイ
 (Jesse Harris)
05.My Favorite Things マイ・フェイヴァリット・シングス
 (Richard Rodgers – Oscar Hammerstein Ⅱ)
06.Wonderful Tonight ワンダフル・トゥナイト
 (Eric Clapton)
07.Shape Of My Heart シェイプ・オブ・マイ・ハート
 (Sting – Dominic Miller)
08.tune チューン
 (Dai Kimura)
09.Levanter レヴァンタール
 (Dai Kimura)
10.Someone Like You サムワン・ライク・ユー
 (Adele – Daniel Dodd Wilson)
11.When You Wish Upon A Star 星に願いを
 (Leigh Harline – Ned Washington)

[Guest Musicians]
沖 仁  (Flamenco Guitar) *M3,9 by the courtesy of Victor Entertainment
ホセ・コロン (Percussion) *M3,9
JAH-RAH (Drums,Percussion) *M5,7

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「HERO」HERO

発売時期:2013年3月21日
発売元:キングレコード
販売価格:2,900円+税


01.Ayers Rock エアーズ・ロック 
 (木村 大)
02.SPANISH FLY スパニッシュ・フライ
 (VAN HALEN)
03.PURPLE HAZE 紫の煙
 (JIMI HENDRIX)
04.FRAGILE フラジャイル
 (STING)
05.DEE ディー
 (RANDY RHOADS[OZZY OSBOURNE])
06.INSPIRATION インスピレーション
 (GIPSY KINGS)
07.LOVIN’YOU ラヴィン・ユー
 (MINNIE RIPERTON)
08.BRON-Y-AUR ブロンイアー
 (LED ZEPPELIN)
09.CHANGE THE WORLD チェンジ・ザ・ワールド
 (ERIC CLAPTON)
10.BECK’S BOLERO ベックス・ボレロ
 (JEFF BECK)
11.THE SAGE 賢人
 (EMERSON,LAKE & PALMER)
12.earth アース
 (木村 大)

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