チェット・アトキンスのイベントであるCAASの日本版、Nashsound villeを6月18,19日に企画した西山隆行さんに、Nashsound villeの楽しみ方、方向性や、合わせてCAASについてもお話しいただきました。CAASの写真と一緒に、雰囲気を味わいながらお楽しみください。
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ーまず、Nashsound villeを企画した理由を教えてもらえますか。
西山隆行(以下、西山):自主企画で『毎月24日はにっしーの日Live』というイベントをやっておりまして、約4年をかけて毎月24日に全国47都道府県のどこかでライブを行うというイベントをしています。今年の12月で全都道府県を周りきりることになり、来年1月24日がファイナルとなります。ファンの方から「来年はどうするのですか?」と質問をよくいただくのですが、単に2周目を同じように周るのも面白くないですし、にっしーの日Liveの海外版は経費的にも無理なので、何かそれに代わるイベントを企画したいと考えました。にっしーの日Liveのように毎月開催ではなく、しっかり計画を練って開催できるように年に1回の大きなイベントをやりたいと思いまして、このNashsound villeを企画しました。6月20日がチェット・アトキンスの誕生日でして、本当はこの日に開催をしたかったのですが、今年は月曜日なので、6月18日(土、夜)、19日(日、昼)の二日間の開催としました。
Nashsound villeは毎年アメリカ•ナッシュビルで開催されるCAAS(Chet Atkins Appreciation Society http://www.chetsociety.com)の日本版という感じをイメージしています。CAASは4日間(前夜祭を含めると5日間)のイベントでして、Nashsound villeもこれから毎年続けていき、いずれ4日間くらいの大きなイベントに育てていきたいですね。
僕はチェット・アトキンスの音楽やギターのテクニックを日本にもっと広めたいと思ってるのですが、チェットの音楽だけのイベントにしてしまうと、日本では狭いイベントとなってしまうので、初日は「Super guitar night」というタイトルで、ギター(エレキ、アコギ、ナイロン弦など)がメインのイベントを企画しました。カントリーはもちろん、ロックやハードロック系の演奏もすることでエレキギターが好きなお客さんの来場も多くなります。カントリー系のギターを聴いたことがない人が生演奏で興味を持ってもらえて、2日目にも来ていただけると嬉しいなぁと思います。
2日目はチェット・アトキンス・トリビュートで、チェットの完コピやアレンジ&セッションを。トミー・エマニュエルやマール・トラヴィス、ジェリー・リードの曲等も、今は日本人でも沢山弾ける人がいるよという部分も見てもらいたいですね。
ーアメリカのCAASはどのような内容のイベントなのでしょうか。
西山:最初はチェットと仲の良い友人や音楽関係者と集まって食事会をする夏休みのバカンスだったみたいです。みんなで食事をしながらギターを弾いたりしていたそうです。それが年々集まる人数が増えて発展していき、ステージのある会場を借りてライブをメインに開催するようになり、現在は4日間(プラス前夜祭)の大きなイベントですね。イベントが大きくなっていっても、最初からのコンセプトの”みんなで一緒に食事をする”というのが本当のこの会の意味でして、今でもライブ•イベントが終わった翌朝にみんなで朝食を食べて「また来年も会おうね。元気でね!」と挨拶をしてからそれぞれの家に帰るのです。今年で開催が32年目ですが、チェットが亡くなってからも継続していて、現在は会長のMark Pritcherさんが運営しています。
ー現在はチェットを偲ぶイベントなのでしょうか。
西山:そうですね。「Chet Atkins Appreciation Society」というのはチェット・アトキンスに感謝をする集まりという意味でして。イベントは毎年7月の2週目水、木、金、土と行われます。最終日の夜はチェット・アトキンス・トリビュートという別料金のコンサートがあります。このコンサートはチェットと所縁のあるミュージシャンが次々とステージに出てきて、チェットとのレコーディング秘話などの話も交えたり演奏をしたりして、だいたい毎年5時間ぐらいに及ぶイベントです。レコーディングで使ったギターを持って演奏したりとか、チェットのファンにとってはすごく貴重なイベントです。水曜日~土曜日の夕方まではチェットの音楽が大好きな人や、僕のようにチェットのテクニックを吸収して活動しているミュージシャン達が世界から約80名ほど集まり、色んなステージで演奏をしています。特にサムピックを使った弾き方や、ギャロッピング奏法の曲がほとんどですね。土曜日のチェット・アトキンス・トリビュートがメインイベントで、それまでがずっと前夜祭みたいな感じです(笑)。
チェット・アトキンス・トリビュートのステージではチェットが演奏してきた曲がメインですが、それ以外のステージでは自分のオリジナルを弾いてもいいし、特に決まりは無いみたいです。エレキ、アコギ、ナイロン弦など様々なスタイルのミュージシャンが集ります。
現在の会場はナッシュビル空港から近くにあるシェラトン・ホテルです。小さいステージは500人くらいのスペースで、一番大きいのは1,500人くらいのスペースです。土曜日のチェット・アトキンス・トリビュートのコンサートでは、小さい部屋と大きい部屋、そしてギターメーカーが展示しているブース部屋の壁を全てとって、3,000人ぐらい入る部屋に変わります。他にも50人くらいの部屋も沢山あり、そこではギターのテクニックなどのセミナーやクリニックなどをやっています。
チェットのスタイルはエレキもアコギもガットも弾きますし、バンド編成からオーケストラをバックにクラシックも弾いていました。そういう意味では、ここに集まるミュージシャンや関係者は本当に色々なジャンルを演奏する人達が集まります。その雰囲気がとても良いのですよね。日本にはこういう雰囲気のイベントが無くて。。。日本ではバンドマンとして活動をしていると、バンド同士でイベントを開催したり、ソロギターであればソロギターの人達だけでイベントを開催したり、シンガーソングライターであれば、歌う人達が一緒になるイベントという感じでジャンルで見えない壁ができてしまっていると僕は感じます。
そういうこともあり、このNashsoud villeは色々なジャンルのギタリストやミュージシャンが集まるイベントを目指したいですね。CAASもNashsound villeにも共通にしたいのはフィンガースタイルや、サムピックを積極的に使うこと、ギャロッピング奏法で演奏するスタイルの音楽も取り入れるということですね。
CAASではトミーが出演ようになってからアコギ奏者の層が増えました。ホテルのロビーとかでもセッションをしてみんなで遊ぶのですが、エレキギターだとアンプや電源コンセントが必要になってくるので、そういうセッションではアコギの方がとても便利なんですね。毎日朝の9時から夜中の0時頃までライブが行われています。その後は若いギタリストが朝までロビーでセッションをしたりしています。ギター好きにとっては本当に天国ですね!
ー西山さんはいつ頃からCAASに出演されていますか。
西山:2010年から参加しています。今年で7年目になりますね。一生に一回はCAASへ行ければ良いと思ってたのですが、初回に参加した時にとても楽しい時間を過ごしたことにより、おかげさまで毎年参加をしています。毎年CAASに呼んでもらえるのはとても嬉しいですね。
ーCAASから呼ばれているのでしょうか。
西山:最初はトミーの日本公演で僕がオープニングアクトをした時に「CAASにいつかは出演したい」という気持ちをトミーにお話をしたのです。そしたらトミーは「NishiならいつでもOKだよ!」と言ってくれて、CAASの会長のMarkさんへトミーがすぐに連絡をしてくれたんです。トミーが色々とCAASヘの出演をサポートしてくれました。初回はナッシュビル空港までトミーが迎えに来てくれたり、宿泊するホテルの予約も手配してくれました。ナッシュビルの観光にトミーの車でドライブに連れていってもらったり、チェットが眠るお墓にも連れて行ってくれました。トミーも僕もチェットへ想いを込めてお墓の前でギターを弾きました。本当に信じられないぐらいの出来事や、良い想い出がいっぱいです。あっと言う間に時間が過ぎてCAASのライブ・イベントも終わり、朝食をみんなで食べている時に、Markさん達が「また来年も来てね!」と言ってくれました。翌年もMarkさんから連絡が届いて出演をさせていただきました、そうやってありがたいことに毎年参加させていただいています。
CAASは出演者はみんなノーギャラでボランティアなんです。チェットに恩恵を受けた人達が、その恩を大切にして集まるイベントで。みんなギャランティが無くてもCAASに出演ができること、チェットのファンの前で演奏ができることが最高に幸せなのです。世界中からギタリストが集まるので情報交換もしますし、自分が知らなかった曲も聴けるので、とても刺激にもなります。チェットと直接関わった人はチェットへの恩を忘れません。チェットはみんなのお父さんみたいな人だったそうです。本当に”チェット愛”に包まれたイベントですね。
ー日本人で他に参加している人はいますか。
西山:過去に出演プログラムへ載っているのはたぶん僕だけですが、僕が参加して2年目か3年目の時、当時、豊田渉平君がアメリカのオハイオ洲に家族と住んでいてCAASに遊びに来ていました。その時はオープンマイクの部屋で出演していましたよ。
日本から毎年CAASを見に行っている人もいます。去年は元ベンチャーズのノーキー・エドワーズがアメリカ・ツアー中にCAASの出演があったのですが、ノーキーさんとツアーを一緒に周っていた日本のノーキーさんファンの方達が10人くらいCAASにも来ていましたよ。
チェットが存命の頃、日本人でチェットと仲が良かった方がいるそうで、その方は自分が書いた曲をチェットにプレゼントしたそうです。CAASの会場では、その日本人のことを知っているか?とよく質問されることもあります。
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