Acoustic Guitar World
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ギタリストインタビュー〜伊藤賢一
クラシックギターとアコースティックギターを使い分け美しいサウンドを奏でる伊藤賢一さんにギターの音や演奏への様々なこだわりを聞いてきました。
(バックナンバーvol.14より2012年10月22日東京)

Acoustic Guitar World vol.78電子書籍(EPUB)ファイルをダウンロード
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特にポール・サイモンの「アンジー」に憧れて、一生懸命練習しましたね

ーギターを始めたきっかけはどのようなことからでしょうか。

伊藤賢一(以下、伊藤):物心ついた頃には父親が家でよくギターを抱えて自作の歌を歌っていたんです(父はプロではありませんが、今でも歌を作っています)。そこで初めてギターを意識しました。音楽自体にはっきり興味を持ったのが小学校に上がったくらい。吹奏楽が盛んな学校で、6年生が運動会で鼓笛隊をやったりする学校でした。小2の時にその鼓笛隊がビートルズの「ヘイ・ジュード」をやってるのを聴いて、「なんていい曲なんだろう!」と感動したのを覚えてます。そこで家にあったビートルズのレコードやカセットテープを聴くようになったのですが、聴いているうちに自分がギターの音が好きだということに何となく気づいてきました。それもエレキではなく、アコースティックギターの音にすごく惹かれていましたね。特にホワイトアルバムのギターの音と演奏がすごくいいなと思い、自分でもやってみたいと思ったのが小4の頃です。その時はうまく弾けませんでしたが、中学2年生の時に近所のお兄さんからキャッツアイのドレッドノートのギターをいただき、それを手にしてからコピーがはかどりました。ビートルズやサイモン&ガーファンクル、ニール・ヤングなどをコピーしました。特にポール・サイモンの「アンジー」に憧れて、一生懸命練習しましたね。中学卒業の頃にどうにか「アンジー」が弾けるようになって、みんなの前で演奏したら「すごい!」と言われて(笑)、それで相当調子に乗りましたね。「自分はギターがうまいんだ!」と勘違いして、どんどんのめり込んでいきました。
中学、高校と剣道をやっていたのですが、高校の頃には竹刀よりも自然とギターを手にすることが多かったです。大きな転機となったのが、高校2年生の時に知り合いからジョン・レンボーンの『鐵面の騎士」というアルバムを借りて聴いた事です。かけた瞬間に「あ、これがやりたい!」って思いました。アルバムの中心にアコースティックギターの音をフューチャーしているものは初めて聴きましたし、何よりレンボーンの音楽自体の力に衝撃を受け、すぐさまコピーを始めました。ジョン・レンボーンの音楽を聴いていると、フォークやブルースの影響もありながら、何よりクラシカルな古い音楽の影響が色濃かったんですよね。そういった古い音楽全般に僕自身もどんどん憧れていきました。そこで自分も一度クラシックというものを学んでみたいと思うようになりました。この頃になると大学に行く気はすっかり無くなっていて(笑)、国際新堀芸術学院という4年制のギターの専門学校に入学しました。鉄弦ギターが弾きたかった自分にとっては遠回りかもしれないですが、今後も長くギターと付き合うのだからと、在学中4年間はほぼクラシックギターしか弾かず、アコースティックギターは家やバンド活動で弾くくらいでした。
この学校はアンサンブルを中心に据えたカリキュラムで、在学中は小さいアンサンブルから大編成ギターオーケストラまで、いくつもの団体に所属していました。覚える曲数も多く大変でした。しかしそこでバッハやヴィヴァルディなどの古典に出会えて、譜面を見るだけでなく、実際に演奏する事ができたというのは自分にとってすごく大きかったです。主旋律、低音部、内声の動きも実際に演奏して響きの中で体験するとやはり新鮮でしたね。一人でギターを練習してるだけでは味わえない刺激を受けました。実りある4年間だったと思います。クラシックギターを専門的にやっていたのはこの4年間だけですね。
当初、専門学校を卒業した後は鉄弦だけで活動しようと思っていました。クラシックギターは封印して、そこで得た知識や技術などを鉄弦に生かしていけばいいと考えていました。でもいざ封印してみると、クラシックギターで得られる「鳴り」の充実感が忘れられないんですよね。その音の出し方はやっぱり忘れたくないと思って、クラシックとアコースティックをとっかえひっかえ弾いて、両方ステージで弾けるようになりたいと思うようになりました。自分にとってどのようなフォームがいいのか、ストラップをつけたり脚を組んでみたりいろいろ試したのですが、結局自分が一番練習した、「足台を使ったクラシックギターのフォームで鉄弦も弾く」というのが一番しっくりきました。フォームを変え、爪の長さを変え、クラシックと鉄弦のちょうどいい落とし所を探しました。そんな感じで、アルバイトしながら3年くらい練習中心の生活をしていましたね。 そしてモリダイラ楽器主催のフィンガーピッキング・ギター・コンテストが始まり、第1回目に出場する事になりました。「出場者は年輩の人ばかりだろうな」と思っていたのですが、僕より下の世代もたくさん出ていた事にすごく驚きました。全国にはこんなにギター好きな若者がいたんだな~と。彼らの中には独自に演奏活動を始めている人もいて、彼らの紹介で自分もライブハウスで活動するようにもなりました。最初はギャラも無い対バンライブを重ね、そのうちにソロライブを企画するようになり、アルバムを出しツアーを組むようになり、少しずつ活動が広がってきて現在に至ります。

伊藤賢一 ーギターを始めたばかりの頃、歌がある音楽が多かったようですが歌ったりしていたのでしょうか。

伊藤:歌わなかったですね~。バンド活動というよりも、アコースティックギターだけが好きでした。ギターのパートだけを弾いたり、ロックでもイントロが素敵な曲があるのでそこだけコピーしたりしてました。ギターの音をいつも聴いていましたね。

ー国際新堀芸術学院というのは入学時にはクラシックギターを学んでいなくても大丈夫だったのでしょうか。

伊藤:今はよくわからないですが当時は大らかでした。入学の際に面接と実技試験を行いましたが、ほとんど全員入学したんじゃないかな。とにかく本番が多い学校でしたので、やる気のある者は入学させて実戦で演奏力を叩き込むというやり方でした。本来ならば卒業と同時に専門学校やギター教室の職員になるという流れなのですが、僕は職員にはならずにプー太郎に・・・(笑)。就職して教室の運営に追われると練習時間を保つのも大変ですし、自分の音楽を作り上げる余裕も無くなると思ったんです。

ーというとこの学校はギターの先生を養成しているのでしょうか。

伊藤:そうですね。高学年になると教育実習という形で週に2回くらいギター教室に教えに行ったりして、ギター教師となる道に進んでいきます。もちろん在学中は自分の演奏力を上げる事にも集中しなければいけませんが。卒業してそのまま職員になれば「ギターで食べていく」事になるので、それでもいいかなと思ってました。その頃は「ギターで食べていく」って言葉はかなりの誘惑だった気がします。卒後間近になり進路を決める際に父親に「ここに残ってみようと思う」と相談しました。すると父は「教室の経営を学びたいのであれば残ればいい。ギターをやりたいのであれば一人でやりなさい。」と言ったのです。これは今思うと本当にありがたい言葉でした。親としては「まず就職しなさい」と言われそうなものですけど「ギターをやれ」と言われた、あの一言で自分の気持ちを整理できました。自分はギターがやりたくてこの学校に入ったのだから、ギターをやるためにここを抜けるのだなと。


隠れている旋律、弾いてないけれど流れている旋律を感じさせる

ー卒業後はどのような活動だったのでしょうか。

伊藤:アルバイトを転々としながらギターの練習をしていました。卒業から3年後の2001年にモリダイラ楽器のフィンガーピッキング・ギター・コンテストに出場して、それをきっかけに演奏活動を始めました。コンテストではチャレンジ賞(3位に相当)をいただいて、自信になりました。

ー当時は作曲もしていたのでしょうか。

伊藤:楽器店でコンテストのチラシを見てから、初めてオリジナル曲を作りました。それまで曲を作った事は無く、フレーズの断片だけがたまっている状態で。それを形にしなければいけないと、コンテストに背中を押された感じです。当時のコンテストは他人の作品を弾いてもOKでしたので、オリジナル1曲と、アンドリュー・ヨークの「サンバースト」を弾きました。この後自分で活動するようになってからは、自然と曲ができるようになっていきましたね。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得
2001年1stアルバム「String Man」発表
2002年2ndアルバム「Slow」発表
2007年3rdアルバム「海流」発表
2010年4thアルバム「かざぐるま」発表
2012年5thアルバム「Tree of Life」発表
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」発表
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
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tri tonica 田野崎文vo 三好紅va 伊藤賢一g
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発売時期:2016年9月22日
販売価格:3000円


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