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ギタリストインタビュー〜Aki Miyoshi
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8.Moonlight serenade

「酒とバラの日々」と同じく憧れのジャズです。これからの課題として、アドリブができるようになりたいという思いがあります。ライブではCDと違ったアレンジでその都度違うように弾いています。

9.螺旋の光

スピンタン号と同じ頃に家にはサムという犬がいました。当時は家の中で犬を飼うという時代ではなく、外で番犬のようにしていました。小さい頃はかわいくて構っていたのですが、自分が小学生、中学生になるとないがしろになってきて、ご飯もあげているかわからなかったり、散歩もいかなかったり、雪の日も外のままだったりでした。大学生の頃、僕は実家を出ていたのですが、祖母からサムが死んだと電話がきました。この時は一丁前に悲しかったんです。でも当時は彫刻やラグビーが楽しく、青春を謳歌している時期だったので、1,2週間で悲しみは薄れていきました。30才くらいの頃に、サムをないがしろにしていたことをふと思い出して、罪悪感が生まれました。次に飼う犬は家の中で大事にしようと考え、少し前に亡くなりましたが、ブルドックのディーノを飼い始めました。ディーノがいる時に、サムへの謝罪と追悼と感謝を込めて作った曲です。普通に作るとドラマティックにならないし、僕の心も人の心も動かないと思いました。そこでテーマがあって第二テーマがあり、真ん中にミニマルという1960年以降くらいに発祥したスティーブ・ライヒやフィリップ・グラスの作曲方法を使って、またテーマに戻るという構成になっています。

10.Verano porteno

アストル・ピアソラの曲で、邦題は「ブエノスアイレスの夏」です。ピアソラを初めて聴いたのは中学三年生の時で、その時は心に飛び込んできませんでした。エレキギター、ベース、バンドネオン、ピアノ、歌などいろいろなものが入った寄せ鍋みたいな音楽だと思いましたね。ジャケットが格好良かったので買ったのですが、全く聴かなくなってしまいました。1年後くらいに、テレビでフルートの工藤重典さんと、クラシックギターの福田進一さんのデュオの演奏を見たのですが、それが素晴らしい演奏でした。そこでピアソラのCDを持っていたことを思い出してあらためて聴いたら、とても良かったんです。その後、工藤さんと福田さんのコンサートを生で見て、完全に心をつかまれました。そこで自分で弾きたいと思い、練習を始めたんです。
僕が高校生の時に山陰のギターコンクールにエントリーして、この「ブエノスアイレスの夏」を演奏しました。それから忘れられない曲になっていて、アンコールで弾いたりしています。演奏活動をするようになってから、タンゴの曲やクラシックの曲をあまり弾かなくなっていたのですが、今回のアルバムで1曲くらいはきちんとクラシックギターでアレンジされた曲を入れてみたいと思いました。この先、クラシックアルバムを作ろうと考えていたのですが、この曲は今入れた方がいいと思ったんですね。



ーアルバムのどのようなところを聴いてほしいでしょうか。

Aki:自分が好きな曲を集めて、CDとして販売するためのアルバムというよりは、自分がコレクトしてきたアルバムに仕上がったので、「黄色のレシピ」というタイトルにしています。音楽の聴き方として、ソファに座ってそのCDだけを聴くという時間をとる人が少なくなっていると思います。生活の中でBGMとして使って欲しいです。あらためて時間をとらなくても、車の中や通勤電車の中でイヤホンで聴いてもらったりでいいと思っています。そんなイメージで作ったんですね。この1曲が勝負だ、というような曲を作った訳ではありません。
それでも、アルバムを聴いていただいた方から「螺旋の光」がいい、「ゆず茶記念日」がいいなどと言っていただいたりしています。最終的にこういうように聴いて欲しいと仕上げてしまうよりも、BGMのイメージで解き放っているので聴き手が自分たちの生活のスタイルの中でどのように受け取るか、作品をどのように聴くかは自由でよいと思います。そんな中、曲に対するコメントをいただけるのはありがたいですね。
今のアルバムは音圧を上げて説得力があるように制作している作品が多いのですが、今回のアルバムの音圧は通常の半分くらいです。そのため、他のアルバムを聴いた後にこのアルバムを聴くと音量が小さくなるのですが、その分ダイナミクスが広くなっています。そういったものをあらためて聴くのもよいと思います。 レコーディングはすごくこだわっていて、アルバムには「瀬戸内録音所」と書いてますが、ここでぷう吉さんがすごくいいマイクといいプリアンプなどを揃えているので、香川県の田舎までいって録らせていただきました。

ーレコーディングはどのくらいの期間だったのでしょうか。

Aki:3日間です。僕のファーストアルバム「THE ROCK GARDEN」は6時間でレコーディングしています。今回は3日間でしたがテイク数は少なかったですね。レコーディングが短かったのは好きなものばかり集めたというところもあると思います。
ジャケットは自分で描いています。最初はイラストレーターさんに依頼しようかと思ったのですが、自分で描きたいと思うようになり、ジャケットも盤面も自分で描きました。何もかも自分で作ったというところもあるので、満足しています。
前作の「Easy To Use」のジャケットは、僕が作った彫刻に服を着せたものです。最初から最後まで自分でやりたいんですね。
聴き方次第で変わるアルバムで、これを聴いて感動してほしいというよりも、デートの時にBGMで流したらうまくいったとか、仕事がうまくいかなかったけれども、帰宅してこのアルバムを聴いたらホッとしたとか、いろいろな使い方をしてほしいですね。
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Aki Miyoshi http://aki-miyoshi.jimdo.com/

1976年生まれ
5才よりクラシックギターをはじめる。
学生時代多くのクラシックギターのコンクールで賞を獲得。
サラリーマンを経てギタリストへ転身。
2009年1stアルバム「 The Rock Garden」リリース。
2011年フィンガーピッキングデイ2011最優秀賞、アコースティックギターブック賞獲得。
2012年Walnut Valley Festival出場。
同年2ndアルバム「Heart on Guard」リリース。
2014年3rdアルバム「Easy To Use」リリース。
2016年ポーランドで行われて国際ギターコンクールGuitar Masters で6位獲得。
同年4thアルバム「Recipe for yellow」リリース。

プロフィールの詳細はこちら→http://aki-miyoshi.jimdo.com/about-me/
Recipe for yellow

発売時期:2016年11月28日
販売価格:2,500円(税込)


1.overture ~ for yellow ~
2.ゆずちゃ記念日
3.俺のスピンタン号
4.サンキュ
5.Garota de ipanema ~ Samba de uma nota so
6.Days of wine and roses
7.あかねさす たなごころ
8.Moonlight serenade
9.螺旋の光
10.Verano porteno


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