ー3rdアルバム「invisible」がリリースされました。このアルバムのどのようなコンセプトですか。
矢後:今回はアルバムのために曲を作るというコンセプトアルバムではなく、今まで作ってきた曲からピックアップしています。アルバムのために作った曲ももちろんありますが、今回やりたいことを意識して曲を選びました。アルバムのタイトル「invisible」は目に見えないという意味です。人間の感情や感覚、成長などに触れている曲が集まり「invisible」というタイトルにしました。人から人へ受け継がれていくものなどにフォーカスした作品です。
これまでの自分の曲は心地よい情景が浮かぶようなものが多かったのですが、今回のアルバムでは少し違った感じの曲が多いです。必ず主人公がいて物語がついてくるような曲です。それを狙ったというよりは勝手に揃ったので、今自分がやりたいのはそういうことなんだと思いました。
明確なコンセプトの一つとして、聴きやすさというのがあります。前までの作品が聴きにくいと思っているのではなく、ソロギター特有の独特な難解な雰囲気だったり、自分がかっこいいと思うギターのこだわりとか、ギター的な魅力にこだわってピュア・アコースティックという感じで作りました。今回はそこをがらっと変えて、純粋に聴く人が気持ちいいな、心地良いな、というわかりやすさを目指しました。わかりやすさというと、歌えるメロディなどの手段があるのですが、そういうことではなくて、あくまでも僕のアートとしての範疇でみんなに伝わりやすいもの、「わかりやすさ=伝わりやすさ」というイメージでやってみました。単にわかりやすさというと媚びるみたいで嫌なんですが、聴きやすく、すっと入っていく質感をものすごく大切にしました。実際に、聴きやすい、という声は多くいただいています。
ーメロディアスにして聴きやすい、という感じではないんですね。
矢後:そうですね。アート作品としての側面で自分の色を出して、聴きやすさを出しています。自分のやりたいアートを出しつつ、聴く人の感性に訴えかけやすいという方向にしたらどれだけできるかというチャレンジでもあります。
例えば1曲目の「Daily Growing」は技巧的な面白さや音楽性を押し出しつつも、ポップに仕上がってると思います。おもしろくハマったと思います。
このアルバムは物語性の強い曲が多く、ドラマや映画のワンシーンのようだと言われています。僕のやろうとしたわかりやすさというのは効果が大きかったと思います。このアルバムはグローバルに展開していきたいとも思っています。
ーアルバムではいろいろなギターを使用していますね。
矢後:今回4本使用しています。以前から使っているM-Factoryに、新しくBeneteau Guitars、Gibson LG-1、OKITA Guitars Model Classicです。OKITA Guitarsはナイロン弦ですがクラシックギタリストが使うよりネックが少し薄めだったりと普段スティール弦を弾いている僕には弾きやすいです。サイド・バックはハカランダですね。最近ナイロン弦を弾いているギタリストが増えてると思います。
Gibson LG-1は2ndアルバムのレコーディング中に購入したのですが、その時には使っておらず今回初めてのレコーディングで使用しました。
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