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ギタリストインタビュー〜小松原俊
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イメージ、そんな感じがした、それを僕はすごく大事にしています
ー曲作りのことについておうかがいしたいのですが、作曲方法というのはどのようなやり方でしょうか。

小松原俊
小松原:頭の中にふと映像が浮かんでくることが多いですね。例えば、何かの映像、シーンがあって、それにマッチングした音楽が浮かんできます。この世界観を発見するんです。うまく言えないのですが、世界観を発見して、メロディや和音の動き方、リズムなどが一遍に浮かんでくることが多いです。
あと、このフレーズがいいな、となった時ですが、この場合でも音としてのフレーズがいいな、というのと少し違って、フレーズが出てきた時に、自分で何かの映像が想像できたかどうかなんです。たまたまできたフレーズが花が咲いた時のイメージだね、と自分で納得したら、ここから作っていくことになります。音だけのいいフレーズではないんですね。 僕がギターで音を出した時、どんなイメージをしました、と聞いてもほとんどが、「?」という感じです。それでも何かを感じる時があるんです。
メロディを思い出すためには譜面に書いておかなければいけなかったり、録音しておかなければいけない。でも、録音していたものを後から聴いても、気持ちがなかったら、どういう気持ちのドレミかがわからなくなります。ド、レ、ミという並びはいろんなところにたくさん出てきますよね。そのドレミを一瞬見た時に、どういうイメージかわからないですよね。ドレミという音符が並んでいる事実よりも、絵の方を事実として残しておいた方が、僕の場合はいいんです。絵という事実が残ったら、この絵を表現したいとなり、ドレミという並びを忘れていても、その世界観に戻れるんです。
言ってることわかりますかね(笑)。
映像で結びつける方が後で反芻しやすいんです。音としてドレミというのを聴いて感動して、次の日に音符がドレミではなく、音階が変わっていても、世界観が変わらなければ感動できる。自分でその世界観をどう捉えているかというのが大きくて、必ずしもその音階でなくてはいけないことはないです。イメージ、そんな感じがした、それを僕はすごく大事にしています。

ー曲のタイトルはそのイメージになりますか。

小松原:そのままですね。言葉にしているだけで、タイトルなので接点があればいいし、接点がない場合もあり得ると思います。その言葉と曲がぴったり合ってるというものでもないです。普通この言葉なら、大半の人はこう思うだろうという定義と、自分の感覚が違う場合はあります。ましてや、タイトルというのはオシャレな言葉を選びたかったり、横文字にしたり、キャッチーな言葉にしようかというのもあって、本当に頭に浮かんだ、素直な単語を選ばないこともあります。でも、自分の中ではつながりがあって、成立しています。
タイトルが先に決まるように逆もありましたね。タイトルイコール世界観なんですけどね。 曲作りというのは、日々の努力もあると思いますが、偶然というのもあります。ずっとやっていれば新しいことを発見することもあるし、ずっとやっていればいい並びを発見することもある。万有引力のように、たまたま見つけるということはありますね。

ー小松原さんがソロのインストを始められた頃は、イサトさん、倫典さんくらいしかソロをされている方がいませんでした。現在は多くのギタリストがソロギターとして活躍していますが、これまでの変化をどのように感じていますか。

小松原:ギタリストが増えたという関係ではないかもしれませんが、客層としてギターを弾かない人が増えてきてますね。初期の頃はギターを弾く人がテクニックを勉強しにくる感じでした。ギターを弾いてる人、あるいはギターに興味のある人がほとんどでです。今はギターを弾かないし、他のギタリストも知らない。単純に音楽を聴きに来ている人が多いです。弾かない人が逆転してるかもしれないし、女性も多いですね。昔はほとんどが男性でした。現在でもギター人口を見ると男性が多いですね。

ーギターを弾かない人が聴きに来るというと、ギタリストが増えたとか、底辺が広がったとは違いそうですね。

小松原:弾かない人が聴きに来るということは、底辺が広がったためかもしれないですね。一般の人はギターのインストゥルメンタルという言葉も知らない。底辺が広がったことによって情報が入り、こういう音楽を知ることになったかもしれません。こういう音楽を広げていくにはそれしかないでしょうね。 メジャーな押尾コータローとか宣伝力がある人が動くというのも大きいでしょう。ギターのインストに興味がある人は結構いると思いますよ。それでも、今日のライブでも、ここでやるということを知っている人がどれだけいるか。地方に行くと、新聞にライブの情報を載せてもらうこともあります。都会に比べて余裕がありますね。そういうので紹介してもらえると、動員が増えます。情報というのは大事ですね。

ー小松原さんは中国、韓国等海外に何度も行かれていると思います。最近はいろいろな国でソロギターの人気が高まっているようですが、そういったことを感じますか。

小松原:どのくらい人気があるかというのはよくわからないですが、そこそこ知ってるみたいですね。上海でライブをした時、曲のタイトルを「くじら」というとわかってるみたいでしたし、人気とは別かもしれませんが、認知はされてきていると思います。
他にもいろいろなところに行きましたね。オーストラリア、アメリカ、台湾など、海外は海外での面白さがありますね。言語がきちんとできないですが、逆にそれが真っ向勝負になります。言語ができないから、演奏、曲そのもので伝えなければいけない。言葉のサポートが何もできないので、音楽そのもので感動を与えられるのか、イメージを伝えられるのかというのが勝負のしどころですね。

ー今後の活動について、どのような予定がありますか。

小松原:今まで通り、ライブが中心ですが、韓国でアーティスト契約をしました。その事務所は今までメジャーの仕事をしてきたようで、テレビ、マスコミ関係のコネクションがあるので、これからは韓国の活動が多くなりそうです。韓国は徴兵制があって軍隊もあり、軍隊の時のつながりというのがとても強くて、その上下関係というのが結構続くようです。今僕の周りを取り巻いているのも、そのつながりがすごくあるんです。今後は話が大きくなりそうですね。

ー最後にギターファンにメッセージをお願いします。

小松原:僕は僕のポジションで活動を続ける事によって、ギターのインストが広がっていくと思っています。今韓国でも広がろうとしています。それはアマチュアの人でもできていることです。10人くらいのライブでも、お金をとらないようなライブでも、そういうことの一つ一つをいろいろな人達がやることによって、みんなで広げることができるんです。僕らも頑張らなければいけないけれど、みんなで頑張って、ギターインストの知名度を上げていきたいですね。上手な演奏、いい楽曲を持っている人だけでやっているものではないということです。みんなでこの良さを伝えていけるようにできればと思います。


【2013年6月9日東京国立はっぽんにて】
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小松原俊 
http://www.shun-komatsubara.com

1958年山口県生まれ。 1981年上京、1985年頃から様々なアーティストのサポート、レコーディングを行う
1992年ファーストアルバム「DEAR」発表
1994年セカンドアルバム「SCENE」発表
1997年サードアルバム「Naturally」発売
2004年コロンビアよりベストアルバム「Treasures」発売
1995年より現在にいたり、藤田恵美のライブやレコーディングに参加。独自の世界観あふれるライブ活動を全国で展開でファンを魅了している。まさに日本を代表するアコースティックソロギタリストである。

Best Album「Treasures」

Treasures

2003/12/17発売
日本コロムビア

1. Fragile (新曲)
2. くじら (再録音)
3. 文明開化
4. 走る煙突
5. 桃源郷
6. Mother And Father (再録音)
7. タケル
8. Voyager (再録音)
9. Hiroshige (再録音)
10. Camel
11. ステッセルのピアノ
12. Love Song (再録音)
Amazonで購入







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