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5.カロスの朝
「ラジオカロスサッポロ」という札幌のコミュニティFMに「キャッチボールラジオ」という番組があり、ここによく出させていただいてます。番組パーソナリテイの深澤雅一さんに捧げた曲です。深澤さんは毎朝ブースに入って第一声を出す時にすごくわくわくするんだ、というお話をしてくれました。その印象で書いた曲です。今回アルバムとしてまとまった形で渡すことができて良かったです。
この曲は軽快なC調のワルツです(3カポなので実音はE♭)。C調のギターの曲は取り組みやすいと思われるのですが、すごく難しさがあります。主要三和音は全て左手で低音を押さえなければいけないのですが、高音では開放弦がからむことが多い。そうなると消音するのに右手忙しくなるんですよね。いつか譜面にしてみなさんに弾いてほしいと思います。
6.囚われの月
この時代の閉塞感を曲にしたいというテーマと、これまで「荒城の月」のアレンジの中間部に使っていた自分の曲をオリジナル曲として形にしたいという2つのコンセプトがありました。ずっとAmで展開していくアルペジオのパターンが特徴です。地球上にある様々な厳しい状況を等しく照らす月というイメージで書きました。英語で「The Moon」としているのは、そのようにどこにでもある月という意味ですが、日本語の「囚われの月」は厳しい状況を照らす月という、意味合いが少し違うタイトルのつけ方をしました。
7.ソリチュード(Duo)
18歳から4年間、ギター専門校である国際新堀芸術学院に通っていましたが、一学年下に垂石雅俊さんがいたんです。彼は作曲、演奏、編曲もできるし教授法にも優れています。イベント企画力もあって、すべてが高レベル。ものすごいバイタリティのある人です。彼とは学生時代苦楽を共にした大事な友人の一人です。
そんな彼が今回「ソリチュード」を二重奏に編曲してくれました。僕はそのまま独奏版を弾いて、垂石さんがオブリガートパートです。独奏版のニュアンスをうまく拾ってくれて、音形やメロディの流れが美しい、とても良いアレンジになっています。
8.Jardin Secret(Jean Marie Raymond)
9.Sweet Bonnie Dickinson(Jean Marie Raymond)
Jean Marie Raymondというフランスのギタリスト兼作曲家の2曲を収録しています。「Jardin Secret」は、クラシックギターの巨匠、故稲垣稔さんが近江楽堂で行なった最後のコンサートで演奏されてました。その時の稲垣さんの演奏は、ギターの匂いすらしない透明感があって圧倒されました。音楽だけが聴こえてきたような…忘れられないコンサートです。それ以来レパートリーにしています。
「Sweet Bonnie Dickinson」はJean Marie Raymondさんの楽譜集を見て弾いてみた中で、すごく引っかかった曲です。どういう経緯でできた曲かはわからないのですが、自分の中では音やメロディに対する「憧れ」の部分を強く刺激されました。2曲とも素晴らしい楽曲で、こうして取り上げることができて非常に光栄に思っています。
「Sweet Bonnie Dickinson」「夜明けの街」「おかえり」の3曲はギターの音そのまま収録できたんですよね。EQはおろか、リバーブもかかっていません。「Sweet Bonnie Dickinson」はハウザーの素直で透明な味わいが素晴らしく録れていると思います。
10.おかえり
自分にとってとても大事な曲です。2013年6月。僕が使用しているギターを製作してくれた大屋建さんの奥さんが、出張先のフランスで急病により亡くなってしまったというつらい出来事がありました。病に倒れた直後からフランスに飛んでいた大屋さんが、ショックのあまりこのまま帰ってこないのではと私は勝手に心配してしまって…亡くなったお知らせをメールで受け取った10数日後に「今日本に帰ってきました。」と大屋さんから電話をいただいたんです。その時に生まれた曲です。亡くなった奥さんに捧げる曲というよりも、お二人の存在の大きさが書かせた曲です。これからもずっと大事にしていく曲ですね。大屋さんのギター以外ではステージで弾く気はありません。
この曲も良いテイクが録れるまで何度も録り直し、結果良いテイクを捕まえることができましたね。
「あなたはどういうギターを弾くのか」と誰かに訊かれた時には、この演奏を聴いてもらうと思います。
11.道のりのどこかで
「おかえり」という重いテーマの曲をアルバムのどこに置くかは、非常に悩みました。まず、ラストの曲にしたくなかった。アルバムの最初にしようとも考えたし、後半の最初にしようとかいろいろと考えました。この曲「道のりのどこかで」ができたことで解決しましたね。この曲を一番最後にして、「おかえり」をその前にすることですんなりまとまりました。
最近僕の友人、親族などが重い病気になったり厳しい道のりにいる人たちに、どうか顔を上げてほしいといという気持ちで書いた曲です。
この曲は今までの自分らしい作り方ですね。メロディがはっきりして最初から最後まで歌える曲です。アルバムの中に1曲は普遍的なメロディのギター曲を書きたいという思いがありますが、今作ではこの曲がそれにあたるかなと思っています。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅(
Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
Another Frame
発売時期:2017年5月15日
販売価格:2,500円(税込)
1.Inner Medium
2.Carolan’s Ramble to Cashel (T.O'Carolan)
3.ハックルベリーの舟出
4.夜明けの街
5.カロスの朝
6.囚われの月
7.ソリチュード(Duo)
8.Jardin Secret(Jean Marie Raymond)
9.Sweet Bonnie Dickinson(Jean Marie Raymond)
10.おかえり
11.道のりのどこかで
販売サイト http://kenichi-ito.com/cn13/index.html
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