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垂石:元々ピアノが創作の出発点であるが故の、“南澤さんならではのギター・プレイへのこだわり”を全国のギター・セミナーでもお話されていると思いますが、そこを掘り下げてみようかと思います。演奏時の注意点、いろいろと気にしている事など教えてください。
南澤:自分としては、メロディを必ず意識して、頭の中で歌いながら弾いていますね。「ここがメロディです」っていう意識をしながら弾いて、聴いて頂く。こういうメロディの曲ですよ、っていうのをできるだけ丁寧に提示して、また歌うように弾くためにも、テクニック面では消音を行います。あとは伴奏とメロディとの差別化や、音量、指先のタッチ、その立体感ですね。頭の中の理想形は、ソロギター用の楽譜を追って演奏していくイメージではなくて、その曲を歌っているだけのイメージ。手は勝手に動いているような感じです。伴奏パートは手が勝手に動いていて、メロディ・パートを自分が歌って、プレイしているようなイメージでいたいんですよね。
垂石:ライブ中に気にされていることはありますか。
南澤:心が折れやすいので、できるだけ折れないように(笑)。演奏で折れることはないけど、だいたいMCで折れる(笑)。
垂石:僕も同じです(笑)。例えばギター愛好家の方から、「部屋でギターを弾くのは好き。だけど人前で弾くなんてとんでもない!」っていう方、結構多いと思うんですよ。僕も昔そうでした。そんな皆さんに向けて、自信に繋げられるお話ができると楽しいかなと思いました。“プロがやっている、自信への繋げかた“。
南澤:ギター・セミナーでよくこんな話をします。練習の達成具合を“100”とする。でも本番では発揮できる力は“20”とか、そんなぐらいです(笑)。
ここを解決するには2つの考え方があって、練習の“100”が“150”や“200”に向上するようにトレーニングする。これは自分の実力をアップするための練習、ということですね。もう一つは本番の“20”を、どう底上げして“30”や“40”にするか。これは演奏力というよりも、本番に対するメンタルの強化だと言えます。そもそも練習で出来た事がそのまま本番で出来るわけも無いので、本番という“場”に慣れることが大切です。
垂石:自分が弾いていて楽しいものは、やっぱり皆さんに聴いてもらえると楽しい。そこには弾いている方も聴いている方もハッピーな時間が生まれますよね。例え自分が納得いかない演奏が出てしまっても、それはそれで聴いている人も喜んでもらえる事は多い。ただ上手い、下手じゃないというのが“ライブ”というコミュニケーション。で、やっぱり“ライブ”中はいろいろあるので“演奏中の拘りを持たない”。練習で拘って、ライブではあんまり拘らないこと、は考えていますね。もう一つ、読者の皆様に練習への取り組みなどのアドバイスなどを頂けますか?
南澤:漠然とした答えであれば、楽しみながら練習してほしい。細かくやるなら、できるだけ楽譜をしっかり読み「覚えたな」と思っても、また楽譜に立ち返る。どっかで間違って覚えちゃうこともありますし、演奏しているうちに変わってきちゃうので、「もうバッチリ覚えた」って思っていても楽譜を見直したりする事は良いと思います。でも、「以前はこうだったけど、自分は今、弾きやすいからこうしている」っていう自覚を持って変えていくのは良いと思いますよ。
垂石:新しい曲の練習の事初めには、練習のマイルストーン、目標の区切りを決める事も大事ですよね。1小節ごと、1小節を半分に区切って良いし、1拍でも良い。それを安定したリズムで弾けるテンポまで落として、例えばテンポを半分以下に落として、1つずつ目標をクリアして行けば良い、と僕も言ったりしています。
南澤:「遅く弾く」は、とても大事ですけど、皆さん、あんまりやらないですよね。どうしても元の曲のイメージがあるから、元の曲の速いテンポというか、元の曲のテンポで弾きたくなっちゃう。そんなに最初から指も動かないし、ましてや頭で覚えきってないので体が動くわけがないですね。ゆっくりで良いのでテンポにムラが出ないように一定のテンポで練習するのは是非!です。
垂石:普段の練習の話になったところで、もう一つ。最近出版されているソロギター譜も五線、タブ譜、ダイアグラム、奏法解説と、情報が結構多いじゃないですか。僕はこの解説のページまでよく読んでもらうように結構勧めます。実はココ、情報の宝庫ですから。
南澤:これはもうホントに仰る通りで、ぜひ解説は読んでほしい。楽譜の書き方にしても、ダイアグラム譜にしても、指の指定にしても、何かしらその作曲者、編曲者の意図があり「ここはこうすると楽だからこの指になっている」事が結構あります。ダイアグラム譜も見ず、解説も読まず、指の指定とかも見ず、適当に弾いて「指が届きませーん」とか、ならない
で欲しいな…と、切に願います。
垂石:僕はクラシック・ギターで五線譜をトレーニングしましたが、そもそも楽譜を読み取るっていうのが難しいですよね。感情まで読み取るモノですし。タブ譜があったり、ダイアグラム譜があったり、演奏内容を読み取りやすくなる、情報量が多くなる事は良いことだと思うので、面倒臭がらず見るっていうのは、“急がば回れ”で上達の近道だったりするのかなと思ったりもしますね。そして、楽譜は1枚の絵として、ビジュアルで覚えちゃう。「Bメロ始まりは2ページ目の2段目の頭」とか。コーヒーでも飲みながら優雅に、曲を聴きながら楽譜を楽しむっていう時間は上質ですよ(笑)。
南澤:同意です。紅茶でも飲みながら(笑)。
垂石:こだわって楽譜を作ってらっしゃる姿勢を受けて、今回こうやっていろいろお世話になったカフェ日和ですが、普段からの楽譜作りのこだわりを教えてください。
南澤:そもそも楽譜をきれいに書くための特別な勉強はしたことがなく、浄書の専門会社で修行したこともないので、全部自己流です。ユーザー目線で「この楽譜は見づらいな」とか「これはとてもきれいだな。読みやすいな」とかっていう自分なりの物差しがあるので、それらを形にするようには心掛けていますね。出版社によってもルールがありますが、できるだけ見た目として分かりやすくてきれいな楽譜にしたいと考えています。
垂石:昔教わった先生に「楽譜の行間を読め、音符の距離を測れ」ってレッスンを受けたこともありました。
南澤:そうです。楽譜ではない、普通の本でもそうですが、「どうしてこの本はこの行間で組まれているのか」とか「どのフォントが使われているのか」とか「どの字のサイズなのか」とか「ページ数がどこに付いているのか」など、そういうデザイン的なものには多分、全てに意味があるので、そこを汲み取ってくれるとうれしいですよね。浄書も最初、そもそもは校正が面倒臭かったのでやるようになったんです(笑)。
垂石:でも、やっぱりお好きですよね、きっとね。
南澤:うん、作業的には演奏しているよりは楽しいかな(笑)。
南澤:今回ダイアグラム譜を担当するに当たり、垂石さんの楽譜で興味深かったのは、フォークから入ったアコギ弾きとは違う運指。薬指を使わないでCコードを押さたり、Gも薬指小指を使わない。これが意外と多かったので、もしフォーク系から入った方がこの楽譜を手に取ったのなら、その辺をポイントに見て頂けると良いかなと思います。
垂石:このアプローチには、スラッキー・ギターのテクニックの影響もありますね。指の調子が悪くなってギターが弾けない時期があった時にリハビリの一環で、スラッキー・ギターも始めたのですが、これが楽しくて!ハワイっていう土地の感覚からこんなテクニックが生まれた経緯に触れたりして、「これでいいのだ!」みたいな、妙な納得を得た思い出があります。
南澤:開放弦を弾くとコードになっている“オープン・チューニング”ですね。
垂石:カフェ日和で言えば収録曲の「サンバースト」は元々、アンドリュー・ヨークも鉄弦でレコーディングしていますし、この楽譜集は結果キングレコードの作品「カフェ日和」の後追いですが、ナイロンでも鉄弦でも、どっちで弾いてもギターが喜んでくれるような、そういうアレンジを目指したつもりではありました。南澤さんも既にアレンジした事がある名曲ばかりの選曲ですし。
南澤:鉄弦を弾いている方は何の気なしに楽譜を手に取ってくれるかもしれないし、それで「音源が出ているのなら聞いてみようか」っていうのでナイロン弦の音を聞くことになるかもしれないし。
垂石:今回こうやって南澤さんにチェックしてもらった事をきっかけに、アコギを弾いている人も「ナイロンも良いじゃないの」って、クロスオーバーして頂ければ本当にうれしいですね。もちろんクラシック・ギターを弾いている人がアコギを弾いてみたり。
南澤:今ではいろいろな楽譜が手に入ったり、音源を手に入れる事ができますが、模範演奏が鉄弦だろうがナイロン弦だろうが、自分の好きなギターで弾けば良いだけのことなので、自由に楽しんでほしいですね。
垂石:キングレコードの夏目ディレクターもギタークラブ出身です(笑)。
「カフェ日和」はそんな“ギター好きが集まって作った作品”。末永くご愛読を頂ける事を願っております!
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プロフィール
垂石雅俊 http://masatoshi-taruishi.com
1977年2月18日生まれ。福島県出身。
2012年にキングレコードにてメジャーデビュー。ギタリスト・プロデューサー・アレンジャー・コンポーザー・CEOの顔を持つ。多数のレコードや著作のリリースをはじめ、「モーリス・フィンガーピッキング・ディ」の審査員や、自身がプロデュースするイベント「ギターカーニヴァル」のオーガナイザーなど、ギターにこだわった音世界を拡散中。
キングレコードより「カフェ日和
~癒しのギターでくつろぎのひととき~」など、多数。著書に「弾きたい曲からはじめる!私のクラシックギターシリーズ」「ソロ・ギター練習帳」(リットーミュージック社刊)など。
そのたおやかなギターサウンドはTV、ラジオなど、多くの主要メディアでも用いられている。日本スイーツ協会認定のスイーツ・コンシュルジュでもある。
音楽教室ギターレ&エアストはコチラ http://www.saimusic.jp/
南澤大介 http://www.bsvmusic.com
1966年12月3日生まれ。
作・編曲家として、プラネタリウムや演劇、TVなどのサウンドトラック制作を中心に活動中。
近作に、NHK教育TV「しらべてゴー!」(作曲)、フジTV「ブザービート」(ギター演奏)など。
高校時代にギターの弾き語りをはじめ、のちソロ・ギター・スタイルの音楽に傾倒。
マイケル・ヘッジス、ウィリアム・アッカーマンら、ウィンダム・ヒル・レーベルのギタリストに多大な影響を受ける。
1992年、TVドラマ「愛という名のもとに」サウンドトラック(作曲:日向敏文)への参加が、プロ・ギタリストとしてのデビュー。
ギター1本でロックやポップスの名曲を演奏したCD付き楽譜集「ソロ・ギターのしらべ」シリーズが累計40万部を突破(2015年現在)し、楽譜としては異例のベストセラーを続けている。
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TAB譜付スコア
「ソロ・ギター/カフェ日和」〜癒しのギターでくつろぎのひととき〜
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12月発売予定
価格:2,160円
楽譜: 112ページ
出版社:ドリームミュージックファクトリー
曲目
・虹の彼方に
・タイム・アフター・タイム
・ティアーズ・イン・ヘヴン
・マイ・フェイヴァリット・シングス
・追憶
・ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア
・フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
・イエスタデイ・ワンス・モア
・アメイジング・グレイス
・サンバースト
・僕の歌は君の歌 (ユア・ソング)
・カヴァティーナ
・スペイン
・星に願いを
・ポートレイト
「アメイジング・グレイス」PDFファイル
http://www.aco-world.com/acoworld/vol91/AmazingGrace.pdf
Amazonで購入
垂石雅俊氏の通販サイトから予約の際はサイン本として販売予定
https://tarugitarre.thebase.in/
確定いたしましたら情報を更新いたします。
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CD「カフェ日和」〜癒しのギターでくつろぎのひととき〜
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価格:1851円
発売日:2012/11/7
レーベル: キングレコード
1. 虹の彼方に(オーヴァー・ザ・レインボー)
2. タイム・アフター・タイム
3. ティアーズ・イン・ヘヴン
4. マイ・フェイヴァリット・シングス
5. 追憶
6. ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア
7. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
8. 宇宙飛行士
9. イエスタデイ・ワンス・モア
10. アメイジング・グレイス
11. サンバースト
12. タイム・トゥ・セイ・グッバイ
13. やさしく歌って
14. 僕の歌は君の歌(ユア・ソング)
15. カヴァティーナ
16. スペイン
17. 星に願いを
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