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レコーディング・エンジニアから見た“ギター・ミュージック”

垂石:ここでは“カフェギター・シリーズ”全作品を通してレコーディング・エンジニアとして携わってくれた滝川博信氏も交えてお話をお伺いします。“カフェ日和”では、この“キング関口台スタジオ”で録音するとお伺いしていたのですが、下見も出来ない状態のまま当日を迎えてしまって(笑)。まずは、このスタジオが作られたのはいつ頃ですか?


滝川博信(キング関口台スタジオ/ チーフ・エンジニア)滝川:1997年です。音の響きを抑えた音響的に“デッド”なスタジオがトレンドになった頃です。

垂石:“カフェギター・シリーズ”の定番として利用する事になった、この第2スタジオに入ってまずうれしかったのは、天井が高かった事。圧迫感があるRECブースでの仕事が多かったので驚きました。クラシック・ギターの自然な響きをそのまま聴いて録音出来た印象です。

滝川:スタジオ内は反響音を止めた“デッドな響き”が基本です。ホールなどは逆に反響させようと思って作っていますよね。確かにこの第2スタジオは天井が高いから演奏中にそう感じてもらえたのかもしれませんね。

垂石:過去、この“キング関口台スタジオ”でソロ・ギターを録音されたアルバム作品はなかったのですか?いわゆるクラシック・ギター・ソロでも、アコギでも。

滝川:多分無いと思いますし、僕もクラシック・ギターのソロ・スタイルを録音した事はなかったので、夏目さんにお話を頂いた時に上司に相談しました(笑)。“鈴木大介”さんのギターの音をテレビCM用に録音した経験くらいだったので。

夏目:アコースティックなギターに関しては、ホールなどのサスティーンが相性は良いんでしょうが、自分は録音の環境的にはスタジオが好きです。「ホールじゃなきゃ絶対にダメ」っていう、クラシック界のテーゼもありますけど、スタジオ録音でも良い音源はたくさんあります。アーティストにもよりますが、ホールの立地を含めて様々な要因でレコーディングが中断する事も多々あります。例えば外でヘリコプターや救急車が通ったとか、暖房で壁が軋んだので、良いテイクが録れていても使えないとか。

滝川:録音した音を確認する“プレイ・バック”も舞台からモニター・ルームまで行くのに時間がかかったりね。ディスカッションをしながらテイクを重ねて作り上げていくというよりは、ディレクターやプロデューサーのOKが出るまで録音し続けて、後で編集したりしますね。“カフェ日和”は、まず、この誰もが知っているメロディを耳に入れていかなければいけない。ボワーンとぼやけた音像じゃないほうが良いとなると、スタジオの方がメリットは大きいですよね。録音プロセスも含めて、良い音作りを目指しました。

垂石:レコードから流れてくる録音された音が「遠くでなっている音」なのか「近くでなっている音」なのか。「オン」、「オフ」の意識ですが、スマホやPCだけで音楽を聴いてしまうと確認が疎かになっていったり、それ自体を味わう事の喜びを再認識するきっかけになりました。

滝川:出音がマイクから近いとクリアになる。音像がくっきりと、解像度が上がっているという状態なので、雑音が少ないですよね。ホール録音はマイクから遠ざけるとやはり雑音が増えるわけで、S/N比、音とノイズの比率が非常に大きな問題になってくる。“ボー” っていう暗騒音とかね。
ギターはピアノなどに比べると弱音なので気は使いますしね。

垂石:ギターは狭い音量レンジの中で、音色の魅力を引き出して、音楽の幅広さを表現するのが、また醍醐味ですし。ギタリストとしては小さい音でもとにかく微妙なニュアンスをしっかり出すっていうことが大事で すね。

夏目:ホール自体の音像を「美しい」って判断も出来ますけど、スタジオ録音はダイレクトに弱音であるハーモニクスやアルペジオをしっかり拾えますしね。“カフェ日和”でもマイクも結構な数を立てていましたよね。

滝川:ギターからいろいろな音が出ていても、結局、楽器は1つじゃないですか。音1つ1つに、弦1本1本にマイクを立てられるわけじゃない。 様々なマイクで録音した音を整合する、トラック・ダウンという作業があり、ここに気を使いますよね。この“カフェ日和”では随分と試行錯誤して苦労した点ですね。

垂石:夏目さんは当時のレコーディングの際に、滝川さんに音の注文は何かしていました?

夏目:最初はそんな話は全然していなかったかも。ポピュラー、クラシックと分けて考えてもいなくて、とにかく“はっきりとしたクリアな音”で録れれば良いかなと思っていました。

滝川:夏目さんが好きなジョン・ウィリアムスの音源を聴いたら結構近い音。部屋感があって好みで言ったら結構好きです。ギターっぽい。楽器の本来の大きさと音を如実に表している感じですね。好みの問題は「気持ち良けりゃ何でも良い」とは思いますので、自分の「気持ち良い」録音は何なのかなっていうのを考えてみるのは面白いですよ。「自分はこういう音が好きなのだけど、これ、実はどういう音なのか。AとBで比べて「自分が好きなこのギターの音は、どういう所で録っていて、どういう録音方法をしているのかを考えたり調べたりしても面白いと思います。録音場所はCDのジャケットに記載されている事も、ままありますしね。

垂石:エンジニアの滝川さんから感じた「ギター・ミュージック」の“面白さ”みたいな事を教えてください。

滝川:全部1人で表現してしまう、自分でメロディも弾きながらオケも演奏するような感じじゃないですか。これは意外に大きくて、録音する時もこの点に結構、気を遣いました。後は特殊奏法など、音色が他の楽器に比べて多い。爪で弾いたりピックで弾いたりはもちろん、ボディーを叩いたりする発想ってなかなか出ないですよ。

夏目:あと、チューニングもね。

滝川:そう!囚われないというか、楽器の形状も変わっていたり、ボトル・ネックとかいろいろな小道具も使えたり。伝統楽器じゃなかなかこうはいかない、割と革新的な所も魅力ですよね。オーケストレーションがしっかりした楽器ゆえの多彩さ、でしょうか。

垂石:まさにギターは小さなオーケストラですね。

「ソロ・ギター/カフェ日和」 読者の皆様へ

垂石:最後に読者の皆様に楽譜集「カフェ日和」について一言!

夏目:垂石さんには「弾いて楽しいっていうより、聴いて楽しいアレンジにして欲しい」っていう注文をさせてもらったので、ちょっと弾くには難しいアレンジになっている部分はあるかもしれません。ですが、「この有名曲群をこのアレンジで楽しむ」っていう事を楽しんで頂きたいですね。

滝川:録音中、結構、聴いていて弾きたくなりますよ。やっぱり聴かせたいアレンジだからだね。弾いて誰かに聴かせて「お、すげえ」って思われるでしょ?例えば“ティアーズ・イン・ヘヴン”とか、「1人でこれ弾けちゃったらカッコよくね? (笑)」みたいな所がある。

垂石:ええカッコしいは原点ですからね!

滝川:そう。だから例えば高校生男子が「クラシック・ギター習っていて…」とか言って彼女の前で弾く、あの感じで。

夏目:そこで “アメイジング・グレイス”とか“星に願いを”とか! “禁じられた遊び”も良い曲ではあるけど、それだけじゃなくて。

滝川:年齢、性別は関係なく。「ちょっと練習してみたんだよね」って言って親しい人の前で弾くっていうのには、コレ!良いです。

夏目:お洒落に決める!やっぱりアレンジの妙ですよ。

垂石:「キメる!」がテーマですね! (笑)


【読者プレゼント】

垂石雅俊さんがキングレコードからリリースされた「ソロ・ギター/カフェ日和」〜癒しのギターでくつろぎのひととき〜のTAB譜付スコアとCDをサイン入り、セットで1名様にプレゼントいたします。
スコア、CDの詳細は本ページ左側をご参照ください。

・申込要項
Acoustic Gutar Worldのメール info@aco-world.com 宛に、
タイトル:読者プレゼント
本文:「カフェ日和」希望、アンケートとして、好きなギタリスト2名をご記入ください。(任意)

申込期間は2017年12月24日(日)〜2018年1月3日(水)となります。
当選者には2018年1月4日(木)メールにて連絡差し上げます。


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プロフィール

垂石雅俊 http://masatoshi-taruishi.com

1977年2月18日生まれ。福島県出身。

2012年にキングレコードにてメジャーデビュー。ギタリスト・プロデューサー・アレンジャー・コンポーザー・CEOの顔を持つ。多数のレコードや著作のリリースをはじめ、「モーリス・フィンガーピッキング・ディ」の審査員や、自身がプロデュースするイベント「ギターカーニヴァル」のオーガナイザーなど、ギターにこだわった音世界を拡散中。

キングレコードより「カフェ日和 ~癒しのギターでくつろぎのひととき~」など、多数。著書に「弾きたい曲からはじめる!私のクラシックギターシリーズ」「ソロ・ギター練習帳」(リットーミュージック社刊)など。
そのたおやかなギターサウンドはTV、ラジオなど、多くの主要メディアでも用いられている。日本スイーツ協会認定のスイーツ・コンシュルジュでもある。

音楽教室ギターレ&エアストはコチラ http://www.saimusic.jp/


夏目友平(キングレコード/ ディレクター)

1972年生まれ。千葉県出身、東京都在住。
中央大学法学部政治学科卒業。
1996年キングレコード入社。
名古屋支店営業職、本社J-POP宣伝班を経て、ストラテジックマーケティング本部に異動、販売促進業務に携わり、2012年よりディレクターを務める。
洋楽、邦楽、音楽ジャンルを問わず、ギター系作品を中心に制作業務を担当。
趣味はギター音楽探究、サッカー観戦、読書、飲み歩き、ラーメン巡りなど。


滝川博信(キング関口台スタジオ/ チーフ・エンジニア)

1970年生まれ。
横浜市出身。
横浜国立大学卒業後、1993年よりキングレコード録音部にてキャリアをスタート。
キングレコードのスタジオ部門の子会社化により、キング関口台スタジオへの転籍を経て、2016年より同スタジオのチーフ・エンジニアを務める。
膨大な作品のレコーディングに携わり、そのセッションはロック、ポップス、歌謡曲・演歌、クラシック、ジャズなど多岐にわたる。趣味はPC自作、野球観戦など。
TAB譜付スコア
「ソロ・ギター/カフェ日和」〜癒しのギターでくつろぎのひととき〜
TAB譜付スコア 
「ソロ・ギター/カフェ日和」〜癒しのギターでくつろぎのひととき〜
12月発売
価格:2,160円 楽譜: 112ページ
出版社:ドリームミュージックファクトリー

曲目
・虹の彼方に
・タイム・アフター・タイム
・ティアーズ・イン・ヘヴン
・マイ・フェイヴァリット・シングス
・追憶
・ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア
・フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
・イエスタデイ・ワンス・モア
・アメイジング・グレイス
・サンバースト
・僕の歌は君の歌 (ユア・ソング)
・カヴァティーナ
・スペイン
・星に願いを
・ポートレイト

「アメイジング・グレイス」PDFファイル

http://www.aco-world.com/acoworld/vol91/AmazingGrace.pdf

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垂石雅俊氏の通販サイトから予約の際はサイン本として販売予定
https://tarugitarre.thebase.in/
確定いたしましたら情報を更新いたします。

CD「カフェ日和」〜癒しのギターでくつろぎのひととき〜
CD「カフェ日和」〜癒しのギターでくつろぎのひととき〜
価格:1851円
発売日:2012/11/7 レーベル: キングレコード

1. 虹の彼方に(オーヴァー・ザ・レインボー)
2. タイム・アフター・タイム
3. ティアーズ・イン・ヘヴン
4. マイ・フェイヴァリット・シングス
5. 追憶
6. ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア
7. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
8. 宇宙飛行士
9. イエスタデイ・ワンス・モア
10. アメイジング・グレイス
11. サンバースト
12. タイム・トゥ・セイ・グッバイ
13. やさしく歌って
14. 僕の歌は君の歌(ユア・ソング)
15. カヴァティーナ
16. スペイン
17. 星に願いを

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