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ギタリストインタビュー〜LAST TRAP
ローデンギターを愛用し、アイリッシュ、ブリティッシュフォークなど様々なバックグラウンドを持つ小川倫生、アコースティックギター、クラシックギターを使い分け、クラシック音楽への造詣も深い伊藤賢一。全く異なる音楽観にして、芯には共通点が垣間見える二人のデュオ、「LAST TRAP」。二人の出会いからアルバム「LAST TRAP」製作の経緯、二人の音楽に対する考え方などお話しいただきました。

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ー二人の出会いから教えてもらえますか。

伊藤賢一(以下、伊藤):国分寺クラスタというライブハウスに僕がCDの納品に行ったのですが、小川さんがちょうどライブのリハーサルをしていました。「Black Cat」を弾いていたのを覚えてます。

小川倫生(以下、小川):僕はその時御用聞きが来たのかと思いました(笑)。

伊藤:僕は小川さんを知ってましたが、小川さんは僕のことを知らなかったでしょう。

小川:いえ、知ってましたよ。すでにCDも持ってました。

伊藤:そうでしたか。その日はそのまま帰ってしまいました。

小川:その日に出るみんなで、え、それで帰っちゃうの?と言ってましたよ(笑)。
小川倫生&伊藤賢一
伊藤:感じ悪いと思ったでしょうね(笑)。それから半年以上たったと思いますが、三宿のミトラサールというライブハウスで初めてお互いの演奏を見ました。小川さんが「Night Jasmine」のリリース直前で、「アストロノーツ」や「チェルシーグリーンの日々」などを弾いていたのをよく覚えてますね。小川さんはその日はマーティンを使ってましたね。実際に見てみるとアルバムでの繊細な印象が変わって、ガシッといく人だなと思いました。

小川:それは雰囲気一発のひとという意味でしょうか(笑)。

伊藤:実はアルバムではそんな印象もありました(笑)。もっとヒーリングのように聴いてたのですが実際の弾き姿を見て聴き方が変わり、アルバムからも違う味わいを感じましたね。それからメールをやり取りを始めました。

小川:そこから少し空きましたね。2年くらいでしょうか。その間僕はAKIさんや下山亮平くんとよく一緒にやってました。

伊藤:僕も下山くんとやってましたね。自分が25才くらいの頃でしょうか。それからいろいろなギタリストとジョイントを重ねていきました。アイリッシュパブや、もうなくなってしまったミトラサールなどでよくやってましたね。その後小川さんがあまり活動しない時期がありましたが、少しずつ活動を再開してるのを見て声をかけて、一緒にやるようになりました。それはお互いの地元で企画してミニツアーみたいにしてやってました。まだ二人で遠出はしておらず。

小川:2011年から二人でツアーをするようになりましたね。山梨のハーパーズミルが最初だったと思います。

伊藤:僕は毎年関西に一人で行っていて、お客様によく「小川さんと一緒に関西に来てください。」と言われてたんですよ。それもあり2012年からは一緒に関西まで行くようになりました。移動距離がだんだん伸びて、2014年には九州まで。よく車で行くと思いますよ(笑)。

小川:去年はなぜか九州ツアーを組んでしまいましたね(笑)。

伊藤:これは九州でツアー中に空いている一軒家を貸してもらえるという話があったんです。そこでモツ鍋を食べながら焼酎を飲むために行きました(笑)。

小川:このツアーは最初から色々ありまして、僕が伊藤さんの家に着くまでに濃霧で途中高速を下され、下道から来ました。くたくたになって伊藤さんの家で合流したらすぐに出発し、沼津のサービスエリアではエスパー伊東さんがいました(笑)。営業をしていたようで、僕らに近しいものを感じましたね(笑)。

伊藤:この西日本ツアーは兵庫西宮のUncle Jamから始まりました。次の岡山の音楽館では小川さんのシールドが断線したんですよね(笑)。この日はギタリストの高尾和樹くんがいたのですが、彼は電気系のスペシャリストなので代わりのシールドは出てくるわ断線したケーブルは修理してくれるわでかなり助かりましたね。ここで断線して良かった。
次は山口県防府市のJazz屋でしたが、ここのPAが故障してて(笑)。でも自分たちでPA機材を持っていたので、この日は使う予定ではなかったのすが、急遽セッティングしました。

小川:山口まで行くのにも疲れましたが、PA機材を運んでさらに疲れました(笑)。路上で荒んだ風情で弁当を食べてる写真が残ってますね(笑)。

伊藤:ライブが終わりお店を出たのが22時頃で、山陽道~中国道を飛ばして福岡の貸してもらえる一軒家に向かいました。山陽道から中国道に入ると急に暗くなって道が細くなって、かなりスリリングでした(笑)。前に桜塚やっくんが事故に遭ったその辺りです。真っ暗の下りカーブで本当に危険でした。
夜中に目的の一軒家に到着しました。玄関前に駐車して良いと言われていたのでそこに車を置き、そのまま寝て朝になって起きたらなんと駐禁が貼られてました(笑)。

小川:ほんの少し隣の家にはみ出してましたかね。

伊藤:ほんの少しだと思いますが。。。夜中の4時頃に切られてたので誰かに通報されたんでしょうね。「空き家のはずなのにおかしい」とか。それで近くのセブンイレブンにお願いして停めてもらいました。最初からこちらに停めればよかったんですね(笑)。

小川:でもそこに停めてたら「LAST TRAP」はできなかったんです。

伊藤:そうですね(笑)。でも山口から夜間車を飛ばして疲れていた所に駐禁ですから落ち込みましたね。その時は自分が運転していた車だから自分が全部払いますよ、とかっこいい事を言いましたがショックは引きずってました。

小川:その後スーパーに買い出しに行きましたが、伊藤さんは全然楽しそうじゃない(笑)。家に戻ってモツ鍋をつつきながら、駐禁分を何とかしようという話が出て、それじゃあ路上ライブをしようという話になりました。アップテンポでウケる曲をやろうよ、とか言ってましたね。

伊藤:その日のライブ会場の最寄り駅に行って、どこでやろうかと場所を探したのですが、平日だし人が全然いないんです(笑)。これはダメだと思い他に何か方法を考え、作品を作ろうという話が出ました。

小川:ツアーをやって息も合ってきていいんじゃないかと思い、帰りに愛知のDenpo-Gさんで録音させてもらおうという話になりました。

伊藤:Denpo-Gさんでもマイクのテストをしたいという話があって、渡りに船と思い即座にお願いして録音することになりました。それで、これから曲を準備しようという話になりましたね(笑)。

小川:3日後には録音しなきゃいけないのに、これから6曲準備しなければいけないと。

伊藤:宿に滞在している間にアイデアを出し合いました。小川さんの「Nine Apple Seeds」はツアーでずっと弾いていたのでこれは入れようと。14世紀フランスの作曲家ギョーム・ド・マショーを何かやろうという話をして、二人であぐらかいて演奏している動画を撮りました。録音しておかないと忘れてしまうので(笑)。これが「佳きひとに逢っての帰り」という曲で最初にまとまりました。あと駐禁とられたモヤモヤをブルースにしようという話になり、タイトルを「Last Trap Blues」にしようと。

小川「LAST TRAP」というキーワードが出たのは僕のブログなんです。この時のツアーの1日目で西宮のホテルに泊まったのですが、ここの駐車場が鬼のように狭いんです。隣の車と一センチ数ミリみたいな。そこで「数百キロ運転後の伊藤さんにラストトラップが待っていた」といった風に書いたんです。それを思い出したというのがあります。これは駐禁事件前なので、そう思うと前途多難でした。
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小川倫生 http://ogawa-michio.com

1974年生まれ。
5才からクラシックピアノを始め、中学二年生でギターを始める。
高校1年生の6月にカセットレーベル「Greenwind Records」を設立。
1998年にファーストアルバム「太陽と羅針盤」リリース。
1999年にギタリストのPeter Fingerが主宰するドイツのレーベルAMRのコンピレーションアルバム「Acoustic Guitar MADE IN JAPAN」に参加。
2001年2ndアルバム「スプリングサインズ」リリース。
2003年3rdアルバム「Night Jasmine」リリース。
2006年4thアルバム「PROMINENCE」リリース。
2012年5thアルバム「Si Bheag,Si Mhor」リリース。
2014年プロデューサーとして東日本大震災復興支援プロジェクトCD「木を植える音楽」を担当。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。


伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得
2001年1stアルバム「String Man」発表
2002年2ndアルバム「Slow」発表
2007年3rdアルバム「海流」発表
2010年4thアルバム「かざぐるま」発表
2012年5thアルバム「Tree of Life」発表
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」発表
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。

「LAST TRAP」

LAST TRAP

販売価格:2,500円(税込)
レーベル:Denpo-G Studio

1. Sagitarius
2. 旅の座標
3. Reynardine
4. Nine Apple Seeds
5. Updown Highway -中国自動車道に捧ぐ-
6. Last Trap Blues
7. The Water is Wide
8. Night Jasmine
9. Quantje suis mis/Tourdion
10. Jock O'Hazeldean

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