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ギタリストインタビュー〜LAST TRAP
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小川:僕はギターというものがあまり好きじゃない(笑)。好きじゃないというと語弊がありますが、何をどう表現したいかということですね。決まった表現手段が自分の気持ちと表現するものの足かせにならない方がいい。無条件に自分の気持ちが出せればいいんですね。無条件に出せるのであればピアノでもドラムでも鼻歌でもいい。極端に言ってしまえば媒体が存在しなくてもいいんです。むしろ煩わしいといっていいくらいです。媒体を意識するとそこで潜在意識の表出が止まって媒体の固定概念(ギターの固定概念)が邪魔してしまい、どんどんつまらなくなってしまう。世に言うギターを弾きたいという気持ちではないと思うのですね。

伊藤:小川さんの音楽を聴くとよくわかります。

小川:ギターを好きじゃないといこと?(笑)。

伊藤:「ギターをうまく弾こう」とか「しっかり鳴らそう」とかではないんですよね。

小川:ギターの音は好きだけど、それに溺れずもっと遠くを見たいんですね。ギターから出た音の先を見ていたい。

伊藤:小川さんはプレイヤーというより作曲家なんでしょうね。

小川:それは最初からそうですね。もともとはピアノで作曲をしていました。でも僕はピアノがうまくないんです(笑)。ピアノは好きだけど合ってなかったんでしょうね。ギターに持ち替えたら、ギターの方が表現しやすかったんです。ピアノよりは自分の思いをピュアに伝達できるんですね。

伊藤:何かを伝達するというのが先なんですね。

小川:そうですね。伝達できればギターでなくてお笑いでもいいんです(笑)。落語とかお笑いでも共感できることがあります。お笑い芸人は前にマイクはあっても媒体を感じさせないんですね。ピュアにその人の思いが伝わります。
自分もギターやピアノの存在を感じさせたくないんですね。

伊藤:作曲という事でいうと、僕は心が転がった時しか曲が作れないですね。普段の状態は比較的心が安定してるかもしれませんが、それが不安定になった時にゴトっと動き出す感じです。そういう時に自然に曲ができる。その時には曲の構成やギターの音色は関係ないんですね。出てきたものに対して構成はこうだったとか分析はできるけれども。ギターをやる人は概ねギターの音色をきれいに出したいとか、構成やチューニングはこうでとか、そういう所にまず目が行くけれども、僕は感覚が先で音色や構成はすべて後付けなんですね。

小川:感覚で作っていい曲ができたな、と思った時に後で見るとすごくいい理論でできていますね。たいがい感覚は理論に先立っているもので、理論を先にしてしまうと理論の枠を超えることができません。理論があるという安心感があるからか、これを超えるのは難しいですね。

ー最初に6曲レコーディングをしましたが、その後から再度レコーディングをしてフルアルバムをリリースしましたね。

伊藤:2014年9月が最初のレコーディングで、翌2月に残りのレコーディングしようという決めていました。新しい曲を作ろうという話をしていましたね。

小川:歌を作ろうとしていたんです。ツアーの車中では歌のCDを聴いてることが多いです。僕らのスタイルだとフォークのようになりがちですが、そうでないものを書きたいと言ってましたね。おくゆかしいメロディを書きたいと。でも二人とも詞が書けませんでした(笑)。

伊藤:それはうまくいきませんでしたが、ツアー中のホテルでは「旅の座標」を作りました。ツアーの前には僕の「Sagittarius」を準備しましたが、これをどうやろうかと考えた時に、北欧のジャズでトラディショナルを題材にしていたのですが、その雰囲気でいけるかなと思いアレンジしました。
小川さんの「Night Jasmine」とオリジナルの「Updown Highway」はDenpo-Gでのライブが終わってから作りました。レコーディングの前日ですね(笑)。でもレコーディングはすぐに終わりましたね。

小川:「旅の座標」のイントロは前からあったんですよね。

伊藤:18才の時に作りました。20年以上前です(笑)。すごく気に入ったパートだったのですが、どうしてもその先ができなかったんです。いつか作ってやろうと思ってましたが、こんな所で生きるとは思いませんでした(笑)。

小川:そこから発展させて本編を一緒に作ったんだけど、コード進行と旋律も一風変わった感じに出来ました。

伊藤:そうですね。シンガーソングライターの新居昭乃さんの楽曲の雰囲気に影響を受けてます。

小川:そうそう。僕らは新居昭乃さんや菅野よう子さん、遊佐未森さんらの書くフレーズが好きなんです。ストレートなJ-POPではないんですね。

伊藤:この曲は歌も作ろうとしたのですが、結局曲だけになりました。

小川:ホテルではほとんどコードだけで弾いてましたが、Denpo-Gにいって固めましたね。

伊藤:こんな作り方したことないですね。ソロのアルバムではできないです。

小川:今回のアルバムはいい具合に二人の違いが出ています。何で合うのか不思議ですね。どうしてだと思いますか。

伊藤:リラックスしてるからじゃないですか。会話を楽しんでいるようです。

小川:同じ会話だと面白くないですしね。価値観が違うもの同士だと見てる方も面白いでしょう。漫才でもボケとツッコミの価値観が違うからこそ面白いのだと思います。それが遠ければ遠いほど面白い。

伊藤:張り詰めたようなデュオではなく、練習はしない(笑)。

小川:一緒に合わせるのはツアーやライブの時だけですね。録音時間も短いですね。

伊藤:全部で5時間ですからね。でもいい経験でした。

小川:デュオとしては異色でしょうね。ゴンチチや山弦、DEPAPEPEとかみんな練習してそうですね(笑)。

伊藤:その点僕らはプロらしくないというか、お客様が喜ぶものを提供しようとしているのではなく、やりたい音楽をやってるだけなんですよね。

小川:メジャーレーベルだったらこのレパートリーは却下ですね(笑)。

伊藤:14世紀の曲や、16世紀の舞曲集とか。こんなカヴァー曲を誰が知っているのか(笑)。でもこういう曲を知ってほしいんです。次があればウチとか小川さんの所で少しずつ録っていくというのもいいですね。
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小川倫生 http://ogawa-michio.com

1974年生まれ。
5才からクラシックピアノを始め、中学二年生でギターを始める。
高校1年生の6月にカセットレーベル「Greenwind Records」を設立。
1998年にファーストアルバム「太陽と羅針盤」リリース。
1999年にギタリストのPeter Fingerが主宰するドイツのレーベルAMRのコンピレーションアルバム「Acoustic Guitar MADE IN JAPAN」に参加。
2001年2ndアルバム「スプリングサインズ」リリース。
2003年3rdアルバム「Night Jasmine」リリース。
2006年4thアルバム「PROMINENCE」リリース。
2012年5thアルバム「Si Bheag,Si Mhor」リリース。
2014年プロデューサーとして東日本大震災復興支援プロジェクトCD「木を植える音楽」を担当。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。


伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得
2001年1stアルバム「String Man」発表
2002年2ndアルバム「Slow」発表
2007年3rdアルバム「海流」発表
2010年4thアルバム「かざぐるま」発表
2012年5thアルバム「Tree of Life」発表
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」発表
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。

「LAST TRAP」

LAST TRAP

販売価格:2,500円(税込)
レーベル:Denpo-G Studio

1. Sagitarius
2. 旅の座標
3. Reynardine
4. Nine Apple Seeds
5. Updown Highway -中国自動車道に捧ぐ-
6. Last Trap Blues
7. The Water is Wide
8. Night Jasmine
9. Quantje suis mis/Tourdion
10. Jock O'Hazeldean

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