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ギタリストインタビュー〜LAST TRAP
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伊藤:そうだったんですね。あとは「Jock O'Hazeldean」は感じだけの打ち合わせでした。コード進行を確認してスウィングワルツでやろう、というくらいです。

小川:「Reynardine」は16ビートで僕が歌っていたのをベースにアレンジし直しました。

伊藤:「The Water is Wide」は、まぁできるだろうと(笑)。これで全6曲ですね。
僕たちの面白いのは、イメージをすぐに共有できることなんです。車中でこんな感じで、と話しているだけでも実際に音を出した時にすぐにとりかかれて、話が早いですね。

小川:車ではいろいろな人のCDを聴いてますが、そこでいろいろなアイデアがでますね。移動距離が長いのでいい打ち合わせにもなります。周りの風景が変わるので会議的にならず、煮詰まらないんですね。

伊藤:ツアーの最終日は別府のカフェだったのですが、翌日そこから愛知のDenpo-Gまで移動しなければならなかったんです。朝8時にホテルを出て、ナビをセッティングしたら所要時間が12時間以上(笑)。走行距離901キロでした。九州から出るだけで4時間くらいかかり、到着したのは夜の9時頃です。さすがにもう打ち合わせすることがなかったですね(笑)。

小川:Denpo-Gに着いたらご飯を用意してくれていて、ちょっと飲みまして(笑)。

伊藤:その後お風呂入ってしまうともうできないと思ったので、すぐレコーディングを始めました。1曲目は「Jock O'Hazeldean」でしたが、2テイクでOKでしたね。これは面白いしいけると思いました。

小川:結構いいペースで録れまして、1曲ずつプレイバックを聴くとだんだん元気になってくるんです。

伊藤:そういったところはミュージシャンなんですね。録音は3時間くらいで6曲終わりました。

小川:これだけ疲れてると雑念もなくなるんですね(笑)。ミスタッチがないんですよ。元気だと余計なことを考えて間違えるんでしょうね。次のMCで何を話そうかとか(笑)。このようなことは初めてでした。

伊藤:このミニアルバムのコンセプトからして、二人とも普通じゃない体験をしているという意識があったので、この空気感を出したいというのがありました。

小川:間にインプロビゼーションを入れました。最初と最後にテーマを弾いて、間に掛け合い的なことをしています。僕たちはジャズではないですが、ジャズ的な構成にしました。アルバムのコンセプトにもなってよかったですね。

伊藤:ツアーでも二人でそういうことをしてましたが、アルバム作りをすると見えてくるのが二人の違いですね。これが面白かったです。音の出し方も違うし、音楽の好みとかあらゆるものが違う。最初は小川さんと似ているものがあるかもしれないと思って一緒にやり始めたんです。似た者同士という意識があったのですが、やればやるほど違いが見えてきました。でも、そこで嫌にならないんですよね。

小川:かえって似てると嫌になるんじゃないですかね。これだけ違うからいいと思います。

伊藤:二人の音も相当違いがあって、小川さんの音はどちらかというとドンシャリなんですね。高域もパンと立つ音。僕の音は真ん中の密度が濃いのですが、それがいい具合になって喧嘩しないんです。こういったものも録ってみないとはっきりとわからなかったですね。

小川:僕はベースライン、和声が好きです。和声同士がぶつかると大変ですが、この辺りもいい具合にアプローチが違います。 ところで、伊藤さんはインプロビゼーションは興味がありましたか?ソロギタリストはいつも一人なのでアドリブとかやらない方が多いんですね。

伊藤:インプロヴィゼーションは好きです。即興でできるほどの技術がある訳ではないのですが、その時にしか生まれないものというのは楽しいですね。

小川:僕には意外だったんです。伊藤さんはかっちりとしたことが好きだと思ってたので。

伊藤:僕はいい加減ですよ(笑)。かっちりされてると皆さんに思われるのは、かなり得をしていると思います(笑)。

小川:ギタープレイはいい加減に見えないですね。逸脱しないでしょう。ここにワンフレーズ入れてみようとか急に思うことはないんじゃないですか。

伊藤:そういうのはないですね。

小川:僕は間違えた時とかやるんですよ(笑)。
小川倫生&伊藤賢一
伊藤:クラシックギターを勉強していると「曲を仕上げる」という言い方をする事があるのですが、自分の作曲の際もフィルインをどういうものにするかとかは決めるんですね。クラシックにもカデンツァという即興的な演奏があり、そもそもコンチェルトではソリストの即興に任せるものだったのですが、出来の良い人気のあるカデンツァを譜面に起こし、それをみんながやるようになったんです。

小川:もともとはインプロヴァイズされていたのもが常套句になってしまったんですね。構築されすぎた感じがしますね。

伊藤:小川さんは自分の曲を譜面にするのが好きではないですよね。

小川:そうですね。僕は決定版というのが嫌いなんです。

伊藤:僕は抵抗はないんです。CDは決定版にはならないのですか?

小川:ならないですね。やはり音楽は生き物なんです。

伊藤:なるほどそれが自然なんでしょうね。

小川:その日のニュアンスでフレーズが一箇所違っただけで次のフレーズがおのずと変わるでしょ。そうすると決定版というのはないんですね。今日はこれがベストであり、明日はこれがベストといったように、演奏って生きているのもので楽譜にはできないと思ってしまうんです。CDをある意味で完成形としてその時点でそのまま譜面にするのもわかるんですけどね。

伊藤:CDは曲順もありますからね。曲順に対してのプレイというのもあると思います。それは僕のように決まった曲を弾く時も同じです。ライブで毎回同じ演奏をすることを目指している訳ではなくて、その日の空気によって当然変わってくるのでライブは好きですね。

小川:ソロギタリストは決定版を作りたがるかもしれないですね。僕のは決定版がないからか、自分の曲をギター作品として取り上げられたりとかがほとんどないみたいです。どちらかといえば音楽のエッセンスを拾ってもらえればいいんですけどね。

伊藤:ギターを好きな人の特徴かもしれませんが、何よりギターを弾くということが楽くて「この曲を弾けるようになりたい。」ということなんですね。
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小川倫生 http://ogawa-michio.com

1974年生まれ。
5才からクラシックピアノを始め、中学二年生でギターを始める。
高校1年生の6月にカセットレーベル「Greenwind Records」を設立。
1998年にファーストアルバム「太陽と羅針盤」リリース。
1999年にギタリストのPeter Fingerが主宰するドイツのレーベルAMRのコンピレーションアルバム「Acoustic Guitar MADE IN JAPAN」に参加。
2001年2ndアルバム「スプリングサインズ」リリース。
2003年3rdアルバム「Night Jasmine」リリース。
2006年4thアルバム「PROMINENCE」リリース。
2012年5thアルバム「Si Bheag,Si Mhor」リリース。
2014年プロデューサーとして東日本大震災復興支援プロジェクトCD「木を植える音楽」を担当。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。


伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得
2001年1stアルバム「String Man」発表
2002年2ndアルバム「Slow」発表
2007年3rdアルバム「海流」発表
2010年4thアルバム「かざぐるま」発表
2012年5thアルバム「Tree of Life」発表
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」発表
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。

「LAST TRAP」

LAST TRAP

販売価格:2,500円(税込)
レーベル:Denpo-G Studio

1. Sagitarius
2. 旅の座標
3. Reynardine
4. Nine Apple Seeds
5. Updown Highway -中国自動車道に捧ぐ-
6. Last Trap Blues
7. The Water is Wide
8. Night Jasmine
9. Quantje suis mis/Tourdion
10. Jock O'Hazeldean

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