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小川 :音が違うというのも面白そうですね。自分の音はこうでなくてはいけない、というのはソロでやっているので、二人でやる時は臨機応変でいいですね。自分でも何が出てくるかわかりません。でもこれらはソロに還元できるんでしょうか。
伊藤 :それはできるんじゃないですか。
小川 :ところで「LAST TPAP」の後で変わったことはありますか。
伊藤 :今の所そういう感覚はないですね。ソロだとわがままになってアイデアを全部試してみようと思いますが、それが二人になるとお互いにすり合わせていこうという意識が生まれてきます。
小川 :伊藤さんは他の人とのデュオも増えてますね。
伊藤 :そうですね。最近いろいろなユニットで演奏していて鍛えられてると思います。クラシックのアンサンブルでは譜面通りにやることもあり、ヴォーカルとやる時はヴォーカルの個性に合わせて弾き方が変わります。いろいろな状況でギターを弾くというのが大事だと思っていて、それは当然ソロに生かされてると思います。小川さんは「LAST TRAP」以降変化がありそうですか。
小川 :どうでしょう。最新作の「Si Bheag,Si Mhor」はカヴァーアルバムなので、オリジナルアルバムは2006年以来作ってないんです。次回作を作ってみないとわからないですが、何かしらの「LAST TRAP」の影響はあるでしょうね。
伊藤 :最近変わってきてると思いますよ。
小川 :「LAST TRAP」だけではなく、毎月やっている「Music Bar Lynch」という宇都宮のミュージックバーでの実験も大きいと思います。ここには新しい音楽を創作しているミュージシャンやアバンギャルド好きのお客さんがたくさん集まってきます。そこでいろいろなギターの実験をしてるんです。毎月実験テーマを自分で決めて、普段のソロライブではやれないことをやってるんです。これを2012年2月からかれこれ4年くらいやってます。ここで最初の頃にやったトラッドのアレンジから「Si Bheag,Si Mhor」のアイディアも生まれています。ここでの実験はすごく大きくて、自分のメインのソロに大きく還元されていると思います。
「LAST TRAP」は未知のものでしたが、この世界を見てしまい、気持ち良く二人で演奏していることは自分のどこかに出てくると思います。一人でやっていたのでは発想できなかったことがたくさんありますね。
伊藤 :僕もどちらかといえばメロディが好きで、自分の曲は旋律を立たせる曲を書いてましたが、最近かなり変わってきたと思います。
小川 :リフを楽しそうに弾くようになりましたからね(笑)。
伊藤 :リフだけとかアルペジオのパターンだけとか、そういうものがソロの作曲に中にも入ってきました。アルペジオパターンというのは均一に弾くと相当つまらないと思いますが、そういったリフやアルペジオに伸縮性を持たせる作り方を最近はしています。逆に小川さんはすごく旋律的になってきたような気がします。
小川 :メロディアスだけれども、追えないメロディだと思います。
-今後の活動の予定はありますか。
伊藤 :今年のコンセプトは地固めをしようということです(笑)。遠くに行くばかりでなく、関東近郊で積極的にライブをしようと思います。LAST TRAPとしての次のアルバムはまだ考えてないですが、今度は駐禁のようなきっかけが無くても作りたいですね(笑)。今回のように一気にレコーディングするというのはかなり変わったことだと思います。1曲ずつ小川さんの所などいろいろな所で録りためていくやり方もいいと思います。
小川 :次回作はジャケットの衣装を考えた方がいいですね(笑)。
伊藤 :ちなみに撮影場所は水門をコントロールする立入禁止の場所です(笑)。
小川 :70年代のフォークデュオのようです(笑)。今後は具体的には考えてはいないですが、デュオは楽しいので続けてはいきたいですね。
伊藤 :今回のように思いついてすぐにレコーディングするというのは、ソロの方が身軽だと思ってましたが一人だと踏ん切りがつかないんですね。
小川 :もっとこうした方がいいんじゃないかとか、もっと良くなるんじゃないかとか欲がどんどん出てくるしね。
伊藤 :二人での録音だと、たとえ自分のプレイがいまいちでも相手のプレイが良かったらそれを生かしていこう、という事もよくあります。
小川 :「Reynardine」は1stテイクがよかったんですよ。伊藤さんがリフで疲れて最後にコケてしまった方です(笑)。二人だとそういうのもありますね。でもそれもアリの世界だなと。今回はプロデューサー無しだったんですね。Denpo-Gの中神さんと3人で意見を出し合いながら進めました。
ー最後にギターファンにメッセージをお願いします。
伊藤 :デュオを経験して、ギターは自由にやりたいことができる楽器だと思いました。あまりステレオタイプにこだわらず、大胆に発想していけたらいろいろなものが生まれると思います。音響にせよ構成にせよ、自由に選んでいいと思いますね。LAST TRAPも今回は生音がよく響く環境でレコーディングしましたが、決めつけないです。アコースティックギターが好きであれば、それを使って何か楽しいと思うものを弾ければいいと思います。
小川 :人の演奏を聴くということが大事だと思います。ギターソロはカラオケの文化に近づいてきている気がします。カラオケボックスでは閉鎖的で人の歌を聴かない。また音楽でコミュニケーションを持たない。僕らのデュオは相手の音を聴いて、それに返事をします。それは自分のソロの演奏にも返ってきて、自分でボケとツッコミができるようになります。カラオケは一方的に完結して、自分の音をよく聴くということも無いです。デュオというのはどんどんやった方がいいですね。
伊藤 :一緒に同じ独奏曲を演奏をすることを”合奏する”と言ってるのをよく見ますが、それは間違いです。本来合奏というのは複数のパートで合わせるアンサンブルの形態に含まれるので。アンサンブルはお互いのパートを聴かないとできないものですね。
小川 :アンサンブルの醍醐味は、心地いい響き合う音を探してかぶせてみたり、こうきたらこう返すというコール&レスポンスのようなものであったりなんですが、そのような駆け引きは最初からはできません。一回でできなかったからといってあきらめず、何度チャレンジしてもいいんです。そのうち楽しい会話が出来てきます。
始めは緊張や余裕が無くてどう弾いていいのかわからないと思います。とにかく耳を澄まして音を聴けば、次の音を導くことができます。まずは真っ白な状態で音を聴いて楽しむことですね。人の音も自分の音も楽しむ。楽しく聴いてください。Happy New Ears! by ジョン・ケージ。新しい耳で、固定観念ではなく毎回楽しんで聴いてください。
【2016年3月5日伊藤賢一ギター教室にて】
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小川倫生 http://ogawa-michio.com
1974年生まれ。
5才からクラシックピアノを始め、中学二年生でギターを始める。
高校1年生の6月にカセットレーベル「Greenwind Records」を設立。
1998年にファーストアルバム「太陽と羅針盤」リリース。
1999年にギタリストのPeter Fingerが主宰するドイツのレーベルAMRのコンピレーションアルバム「Acoustic Guitar MADE IN JAPAN」に参加。
2001年2ndアルバム「スプリングサインズ」リリース。
2003年3rdアルバム「Night Jasmine」リリース。
2006年4thアルバム「PROMINENCE」リリース。
2012年5thアルバム「Si Bheag,Si Mhor」リリース。
2014年プロデューサーとして東日本大震災復興支援プロジェクトCD「木を植える音楽」を担当。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得
2001年1stアルバム「String Man」発表
2002年2ndアルバム「Slow」発表
2007年3rdアルバム「海流」発表
2010年4thアルバム「かざぐるま」発表
2012年5thアルバム「Tree of Life」発表
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」発表
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
「LAST TRAP」
販売価格:2,500円(税込)
レーベル:Denpo-G Studio
1. Sagitarius
2. 旅の座標
3. Reynardine
4. Nine Apple Seeds
5. Updown Highway -中国自動車道に捧ぐ-
6. Last Trap Blues
7. The Water is Wide
8. Night Jasmine
9. Quantje suis mis/Tourdion
10. Jock O'Hazeldean
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