Acoustic Guitar World
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ギタリストインタビュー〜住出勝則
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ー同じギターとはいえ別の楽器くらいの感覚があると思います。

住出:全然違いますね。弦高や弦のテンション、ネックの幅などが全く違ってきます。でもガットならではの感じになったと思います。今回使用したギターはそれぞれ個性が違って面白かったですね。いろいろ勉強になりました。これだけ個性が違うので、どれがいいというよりは好みになってくるでしょうね。僕らがやってる音楽もそうです。うまいといっても、好きか嫌いかですから。たまたま自分と波長の合った人達がライブに来てくれます。みんながみんなそうなる訳ではなく、ライブに来た人が友達を連れてきてくれても、その友達がハマるかどうかは、その人の好みなのでわかりません。それこそ一期一会ですね。僕らもテレビを見ていても心の中で勝手に決めてますよね。こいつアホかとか(笑)。こんな下手でよく歌っとるなとか(笑)。こういうのは誰でもあるはずで、それが僕らにも当てはまるんです。だからこそ、自分がやりたいことをやった方がいいんです。どうせそういうことを言われますからね。人に合わせてしまうと無色になってしまう。よく見ると、ダントツで売れている人は、ダントツに嫌いな人も多いはず。ですが、耐えられないという人が多くても圧倒的に支持する人が上回っています。好きでも嫌いでもないというのは中途半端なんです。それだけアーティストに色があるということなんですね。そういうことはすごく必要だと思うんですね。抜けきれないアーティストは何か個性が足りないんでしょう。例に出して申し訳ないですが、松山千春さんなんかはいい例ですね。正直なところ、好きじゃないという人もいると思いますが、それをはるかに上回る、圧倒的に支持する人がいます。無色になり、玉虫色みたいだと、一般受けはするかもしれないけれども、どうでしょうか? 僕なんかは自分がやりたいことを突き詰めたいと強く思っています。これは自分の感覚ですが、どこまでソロギターの表現力や技術を含めて、アートとして上がっていけるか、というのがあります。自分の中ではそれがすごく大切なんです。売れるかどうかも大切ですが、自分が純粋に納得できるかどうかです。その道筋でついてきてくれる人がひとりでもふたりでも増えてくれたら、それ以上に嬉しいことはないですね。今後は妙な媚び方はやめる、自分にもお客様にも媚びたらいけないんです。正直にやりたいことをやる。僕の場合、極端にあの人の音楽は嫌、というのが出てきた方がいいのかもしれない。それくらい頑固にやっていきたいですね。人間的には昔より丸くなってますよ(笑)。平和にいきたいですが、音となると、いい意味でお前と違う、というところがないといけない。

住出勝則オーストラリアにいた時に、いろいろな人にナメられたので、それが僕にはトラウマみたいになっています。とにかく、ナメられたくないというのがものすごくあります。僕のキーワードですね。いわば、僕のギターの原点は、そこから生まれた反骨精神に基づいていると思います。しつこいようですが、極端にいうと、ナメられたら終わりです。例えば、インターナショナルギターフェスとかで5人、10人の出演者の中で、楽屋にいれば上下関係がわかります。年齢は置いといて、セッションをすれば誰がうまい、いまいちというのは一発でわかります。ミュージシャン同士は、そこではそんなこと絶対に口にしないですが、4小節くらい一緒にやればわかります。そういうのをたくさん見てきています。こういうところでナメられたくないというのはありますね。軽く見られるというのはアーティストにとってはよくありません。逆に言えば、自分の中に圧倒的にしっかりとした芯とか力がないと、相手は見てくれないということですよね。トミーのように、ステージで相手に頭突きを入れて、さらに倒れてるのに金的まで入れるくらいのギターを弾かないといけない(笑)。トミーをなめる人なんて誰もいないですよね。極めるというのはこういうことではないでしょうか。いくら若くても、おっと思ったらそこにはリスペクトが生まれ、いい意味で一目おかれます。ただ、かなり精進しないといけません。
一目おかれているギタリストの演奏を見ると、技術はもちろんのこと、全ての面で違います。ステージマナーや、サウンドチェックを見るだけでも違いがわかります。見られているということもわかっていますし。プロとしての自覚が高いんです。いろいろなギタリストが集まると面白いですね。若い人達も、年齢が近かったりすると火花が散るとまではいかないまでも、いろいろあるんじゃないですかね。
僕にはナメられたくないというのはものすごいエネルギーになってますね。普段はナメられてもいいんですよ(笑)。ただ、ギターを持ってステージに出た時は、圧倒的な存在でいたいと思うんです。僕の目標ですね。ギターを持った時点でみんなが納得するくらいの域にいきたいですね。いつになるかはわかりませんが、そういう場所というのはあると思います。

今、ようやく自分のギターが自分の右腕となって、自分の一部となったなという感覚があります。自分の感情が素直にギターに伝わります。だから逆に怖いですよ。ギターは嘘をつかないですから。いい面と怖い面がわかり始めたような気がします。
弾いていて、どっちがどっちかわからなくなる時があります。自分がギターに伝えてギターが応えているのか、ギターに自分が応えているのかという感覚があります。単にギターを弾いているだけではないんですよ。間の感じが最近ものすごく、いい意味で気になります。昔に比べたらバラードはよくなってるはずなんです。こういうのを口で言うのは簡単ですが、観客が何も感じなかったら終わりです。伝わるものは伝わるものと信じて演奏するしかありません。だからこそ、きちんと発信するレベルにいかなければいけない。常にこちらがうまく発信していかないといけない。
だから、良くも悪くも人の心を動かしている訳ですから、できればいい影響を与えたいですよね。僕らはお客様の笑顔を見て、また頑張ろうと思うのですから、ヘルシーなギブ・アンド・テイクを提供していければと思います。

ー今後の活動はどのような予定がありますか。

住出:昔はライブを多くやるのが大切でしたが、今は質ですね。本数は減るかもしれませんが、準備をきちっとして、大袈裟にいうと魂を削るくらいのライブにしたい。だから最近ライブは疲れます。年齢的なこともあるのでしょうが、精神的に注ぎ込みますからね。でも終わった後は気分爽快です。量より質で、もっと質の高いギター音楽を求めていきたい。まだまだ伸びしろはあるはずですし、できていないこともあるので、まだまだ伸びていきたい。おそらく音数はそのうち関係なくなるでしょう。10個のことを伝えるのに10個の言葉はいりません。3個でも伝わる時がありますからね。逆に7個が邪魔な時もあります。手数を乗り越えた質というものを追求していければいいなと思います。きっとそれは伝わるはずなんです。最近は、昔やっていたような派手にギターを叩いたりする部分はほとんどないです。意識的にしている訳ではないですが、表現方法が変わってきたのでしょう。昔はしゃかりきにロックやってましたからね。バラードは1,2曲しかやらなかったです。今はどちらかというとバラードが多いですね。アップテンポだから表現できないというのではなく、バラードの方が今は自分にしっくりくるという感じです。自分の曲である必要もないですね。オリジナルでなければいけないという感覚もなく、最近はカヴァーが多いですね。それでギターの良さに気付いてくれる人も多いです。知ってる曲をギターで弾くとこうなりますよと。まぁ、ギターよりオリジナルの方がいいと言われればそれまでですが(笑)。ただ単にライブをやるというのをやりたくなくて、毎回何かしらテーマを持って、きちんとしたものを提供したいですね。今はそういうプログラムになっています。

あと、僕というよりも、これから出てくる人達を含めて引き続きサポートしてやってください。僕が言い出しっぺでやるほど甲斐性が無いので歯がゆいところですが、何かフェスティバルをやっていかないといけない。そういう場所で、こういうアーティストがいるんだということが少しずつ広がっていくと、ソロギターに限らず、アコースティック音楽と考えたらチャンスも無いことはないです。そういう企画もやりたいけど自分のことでいっぱいなので・・・できればいろいろやりたいですけどね。アーティストはお金をいただく訳ですから、それに見合った内容をきちんと練ってやってほしいです。これは自戒をこめてですね。

ー最後にギターファンにメッセージをお願いします。

住出:ギターファンの皆様、僕よりうまくならないでください(笑)。僕よりうまくなりそうだったら、そこで練習はやめてください(笑)。というのは冗談ですが、ギターを弾く人にとって楽しみの一つであってほしいですね。僕らみたいにプロになってしまうと、ものすごく犠牲にする部分も出てきます。趣味の範囲であれば楽しくないと。そこで友達ができたりとか、そこにギターがあると僕らはうれしいですし、そこでMasa Sumideのライブを観にいこうかとなったら、もっとうれしいです。いい意味で今後はお返しできればと思いますね。僕もギターがあったからこそ今までの人生が楽しいです。ギターがなかったら何もありません。No Guitar,No Lifeです!

【2014年5月9日ドルフィンギターズ恵比寿店にて】
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【New Album】
Back To Basics

Back to Basic

1.Say The Word
2.Too Hot To Handle
3.A Night To Remember
4.Am I Blue
5.Massa Nova
6.The Water Is Wide
7.Happy Heart
8.Short Short Story
9.Will You Be Mine?
10.Close Your Eyes
11.Missing You
12.Make It Funky
13.Live It Up
14.悲しい色やね
15.蘇州夜曲

2014年5月24日発売
日本録音/K-Dol
¥3,000(税込み)


ドルフィンギターズ ショッピングサイト

住出勝則 http://www.masasumide.com/

1956年 京都府生まれ。
1974年フォークグループ「シグナル」に参加、翌年「20歳のめぐり逢い」でデビュー、1983年の解散までシングル14枚、アルバム7枚をリリース。
その後、武田鉄矢、谷村新司らのサポートをこなす。
1996年オーストラリアに移住、ソロギタリストとしての活動を始める。
1999年初のソロギターアルバム「TREADIN' EASY」をリリース。
2002年帰国、日本を拠点にソロ活動を始め、毎年アルバムをリリースしながら、2011年には滝ともはる、矢沢透と「HUKUROH」を結成、ソロ、バンドとも精力的に活動中。

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