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伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏


【第二回】新シリーズ:ディテールを聴く King Crimson「Starless」

アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
いよいよ暑くなってきますね!この時期ギターの管理には充分な注意が必要です。
都市部では日中留守の時間に上昇する室温をどうするかが一番の課題と言えますね。私は2年前から「エアコン28℃に設定して24時間つけっぱなし」という方法をとっています(ちなみに、設定温度まで下がったら運転をスリープする機能が付いたエアコンを使っています)。ご参考になりましたら幸いです。

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King Crimson「Red」

Red

音楽に触れて心が揺さぶられる要素とは何だろうか?
・サウンドの魅力
・メロディ・ラインの美しさ
などがすぐに思い浮かぶが、実は音楽の構成そのもののに感動することが実に多い。

音楽は宿命的に”構成”を持つものである。
例えばひとつのメロディをとっても、ただそれだけで感動を生み出すのではない。
そのメロディが楽曲のどの箇所に出てくるのか?どうやって演奏されるのか?ヴォイシングは?編成は?音量は?そしてもちろん、”誰”が演奏するのか?
「いいメロディだな」と感じた瞬間には、こうした何層もの要素が絡み合っているものだと思う。

そんな構成の持つ魅力は、ディテールに如実に表れる。
そうした構成の妙を、自分なりに見ていこうというのが、「ディーテールを聴く」というシリーズ(?)の主旨である。
重箱の隅をつつくような内容になるかもしれないが、遠い目で楽しんでいただければ幸いである。

さて今回はKing Crimsonのアルバム「Red」ラストナンバー「Starless」である。
今更解説するまでもない名曲中の名曲であり、この曲をもってクリムゾンの最高傑作とする人は多いだろう。

冒頭はメロトロンによるストリングス・サウンドのフェイド・インからの抑え気味ながら計算された抜群のトーンを持つロバート・フリップによるギター・フレーズ。ジョン・ウェットンのハスキーヴォイスもロングトーンが美しく、ビル・ブラッフォードのドラミングと共に荘厳に曲が進んでゆく。そして3コーラスが過ぎ、歌のラストは元KeyのGmでなくCに転調して一旦終結。終結と同時に開始するBassの通奏フレーズに乗ってギターを中心に緊張感の高まりを4分半もの時間をかけて演出。突如飽和したように爆発するリズムと、サックスのインプロヴィゼーション。
そして聴きどころはここから。
緊張が高いまま音量を落とし、歌のメインフレーズを奏ではじめるサックス。すぐさま元の狂騒にかき消され、そのままラストに突入する段になって、今度はイントロのギター・フレーズをサックスが呼び起こすのだ。
このサックスによる2段階の邂逅がクライマックスとなり、熱く幕を閉じる。何度聴いても身震いするような力を持った音楽だ。

だが私が注目する今回のディテールはサックスではなく、そのバックにあるメロトロンの表現である。
クライマックスの11:17からサックスによってイントロフレーズが帰ってくる。そこにクレッシェンド(=次第に音量が増加するの意)で立ち登るメロトロン!この「俺も帰ってきたよ」と言わんばかりのクレッシェンドに、毎回目頭が熱くなるの
である。もちろんここでのメインはサックスであり、ゴリゴリに燃えるベースとドラムも感動的なのだが、それを更に加速させているメロトロンにもぜひ注目してみてほしい。
メロトロンもクレッシェンドでなく最初からフォルテで奏でられたら、こうはならない。(クレッシェンドの箇所は時間でいうと11:18~11:26のあたり)
そもそも、メロトロンとサックスという組み合わせはクリムゾンのアイデンティティの大きな要素なわけで、それをバンドとしての(一旦)ラストに演出するところにも感動してしまう。

このクレッシェンドなくして「Starless」なし。

やはり名曲というのは、「名曲を作って終わり」でなく、どう表現でえぐり出すかにかかっている。
ギター・ソロの曲でもそれは全く同じだと思う。


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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。

伊藤賢一

【2019年7月1日】

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