第5回 「旅先のギターの扱い」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。 秋はツアーの季節。只今竹内いちろさんとの西日本ツアーの真っ最中です。米子から山口県に向かう車中で、海を見ながらこれを書いてます。
旅はいいですね。演奏も楽器も、毎日どんどん変わっていきます。
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さて今回は、旅先でのギター扱い方について、ツアーミュージシャンの立場から気をつけている事を紹介したいと思います。
ちなみに、私のツアーは車移動になります。電車移動の場合と若干変わると思いますのでご了承ください。
・ギターの弦は緩めるか?
ギター愛好家の間でも常に懸案事項になるお題です。結論から言いますと、私はスティール弦もナイロン弦も緩めてます。とはいえ毎日ではありません。ツアーの最初と最後の大移動の時だけ。ライブ日程が始まってからは張りっぱなしにしています。ちなみに、車の振動からの影響を抑えるために、置くときはギターの裏板ではなく側面を下にします。
・弦交換のタイミング
新品弦のブライトな響きがなくなったくらいでは交換しません。音の芯が出ているうちは張りっぱなしです。そして音程が合わなくなってきたら、問答無用で替え時です。私の場合はスティール弦はソロライブ2.3回、ナイロン弦は4.5回で交換してます。これはプレイヤーの手汗の量にもよると思います。私は手汗をまったくかかない体質なので、もちが良いのかもしれません。
・乾燥と湿度に注意
滞在先では、いつもと全く違う気候、湿度に晒されます。特に急激な温度変化に注意です。猛暑の中しばらく歩いてからキンキンに冷えた室内に入った時などは、しばらくギターケースを開けるのは控えた方が良いと思います。開けるときはファスナー、留め金を外し、またしばらくしてから開けると良いです。急激な変化が最も良くないので、なるべく緩やかな変化をさせてあげるようにしています。
・飛行機の場合
飛行機に手荷物として預ける場合、まず弦は全て緩めます。そしてヘッドを緩衝材(プチプチ)でぐるぐる巻きにします。さらにケース内でボディが動かないように側板周囲に緩衝材を渡らせ、表面板にフタをするように緩衝材をかぶせます。
私の場合はこれだけです。ちなみにケースはロッコーマンのスーパーライトケースを使用してます。もっと堅牢なケースであればなお良いかも知れませんが、重量のあるケースと軽量なケースとでは、トラブルになるパターンが違うのも事実です。ハードケースの場合は上から落とされた時に衝撃が強く、軽量なケースでは圧迫に弱い。なので軽量なケースの中でもクッションを渡らせたキグバッグ系ではなく、しっかり「ボディ」のあるケースを選んでいます。飛行機に乗せて12年。今のところトラブルは皆無です。
※とはいえあくまで個人の例です。最終的には自己責任でご判断ください。
こうしてまとめますと、ツアーだからといって特に特別なことをしてるわけではなく、普段のケアの延長と考えているのがわかります。
普段にはない振動や温度変化に対して、どう対処するか。それをひとつひとつ考える事が重要なのだと思います。
秋は旅の季節ですね。皆さんもギターを手に良い旅を!
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2019年10月1日】
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