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伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏


第6回 この一枚を聴く」
Rachel『Bothside』

アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。 秋のツアー真っ只中におります。只今新潟県は上越でこの原稿を書いております。
今回の車内BGMに流れてきてハッとさせられたアルバムについてご紹介したいと思います。

・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

Rachel

Rachel。
"レイチェル"なのか"ラクエル"なのかもわからず、なぜかアルバムだけ一枚持っている。それが今回ご紹介する『Bothside』だ。

アルバムタイトルは、ディック・ゴーハンの名曲『Bothside the Tweed』からとったのは明白で、当然同曲もカバーされている。

Rachelの歌とハープ(彼女自身の演奏のように聴こえる)、その他にギター、ホイッスル、太鼓。それぞれの楽器は必要最小限の使われ方。基本は彼女のハープ弾き語りなのだと思う。

一聴してカバーが多いアルバムだが、とにかくアレンジのセンスが抜群だ。
足し算引き算は出来て当然。音色とフレーズの"相乗効果“を狙った掛け算アレンジが絶妙なのだ。

今回ツアー先で運転中にハッとさせられたのは、この中からの一曲『Fields of Gold』。
スティングが作りヒットさせた曲で、エヴァ・キャシディのカバー、それを元にしたケルティック・ウーマンのバージョンなどでも世界的に知られた曲。女子フィギュア・スケートのミシェル・クワン選手がエヴァのバージョンで演技して注目を集めた事もある。

この手垢のついた曲にあって、Rachelの歌い回しは、スティングともエヴァとも違う。多少原曲を崩しているように見えて、細かいビブラートやこぶしがハープの伴奏と縫い合わさるピンポイントを狙ったような、実に見事な節回し。すっかり心奪われてしまった。

彼女に触発されて、自分も早速この曲のギターソロ・アレンジに取り組み、なんとあっという間に完成してしまった。
「フレーズ」の字面でなく、アンサンブルの絡み方が生み出す世界観に影響されると、自分の中に流れるイメージがずっと変わらない。それが短い時間で完成に至った理由なのかもしれない。

あまり知られていないアルバムなので、気になった方はぜひ手に入れてみてください。




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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。

伊藤賢一

【2019年11月3日】

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