第14回 この一枚を聴く Indigo Note『Long Way』
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さま、こんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回は、6月にリリースしたばかりのIndigo Note(ヴィオラ:三好紅、ギター:伊藤賢一)のミニアルバム『Long Way』を紹介させていただきます。手前味噌ですが、とても良い作品となったと思っています。
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世界中の誰もが大きな生活様式の変化を強いられた新型コロナウィルスの感染拡大。2020年の4月と5月、予定していた私達Indigo Noteのライブツアーも、その影響で中止となってしまいました。
ツアー中止は断腸の思いでしたが、この突然生まれた時間、ただじっとしているよりも作品を作ってしまおうと思い立ちました。
思うが早く、綿密なリハーサル作業をする前にまずスタジオに入り。
その場で収録可能なレパートリーを選び、アレンジをしながらプレイバックで確認して詰めていくというやり方をとりました。そうして衝動のままセッションを進めるにつれて、当初予定していた曲目とは半分近く別の曲が占めるプログラムに…時代も形式も異なる楽曲がランダムに羅列してあるようでいて、不思議な統一感を持ったアルバムに仕上がったのでした。
俗に言う「2番打者最強説」に倣い、2曲目『誰も通らない道』が、このアルバムの顔です。ギターソロでもライブで演奏しているオリジナル作品ですが、紅さんはここに素晴らしい間奏フレーズを入れてくれました。
1曲目のフレスコバルディの変奏パートも、全て紅さんの作曲です。紅さんの作るフレーズは実にキャッチーで、しかも出過ぎず、オブリガートの妙がいかんなく発揮されています。
ギタリスト浜田隆史さん作曲の『ノチウ』も大きな聴きどころです。ギターのために書かれた曲を持続音で表現するのは難しい事が多いのですが、メロディメイカー浜田隆史の楽曲は、楽器の枠を越えた普遍的な世界観を持っています。そのフィールドで、私達も自由に音楽を表現できました。
それぞれのソロでは、紅さんのバッハが聴けます。無伴奏チェロ組曲3番のプレリュード。私も大好きな曲です。
私はユダヤの民セファルディの伝承曲「モレニカ」を。これは当初全く収録予定は無かったのですが、ブース内でアレンジしながら録っていきました。なかなか面白いギター曲となりました。
個人的には、今回からクラシックギターの新しいメイン楽器、ハウザーⅡ世(1958)の音が収録された初めての作品というのもポイントです。こうして作品にしてみると、前作までのハウザーⅡ世(1960)とかなり違う音世界だと思います。
大変な騒動の中でしたが、素晴らしい作品を残せました。ぜひともたくさんの方々に聴いていただきたいです。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2020年7月2日】
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