第22回 この一枚を聴く Camel「The Snow Goose」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤 賢一です。
今回はファンタジーロックの雄、キャメルの名作です。
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プログレッシヴ・ロックにハマったのは中学時代で、高校になると徐々にシンプルなアンサンブルに興味が移っていきました。
大がかりなものは、一旦聴かなくなると縁遠くなるものです。そんな中でこのアルバムだけは不思議と聴き続けていました。
キャメルはシンプルな4人構成のバンドで、プログレバンドというよりはファンタジーロックといった趣のアルバムを作ります。
このアルバム「The Snow Goose」は同名小説からインスピレーションを得たコンセプト・アルバムで、全編ボーカル無しで綴られています。
アルバムごとにテーマ設定が明確なのは、前々回紹介したCuscoに通じる味わいですが、随所に見られるバンドらしいタイトな音がプログレ好きにとって妙な郷愁を誘います。特にタイトル曲でのギターは、レスポールそのものの甘い音色。これはレスポールによる名演の数々に仲間入りするほど印象的なプレイだと思います。
その他の楽曲の構成自体は他のプログレバンドに比べるとシンプルですが、凝った楽器編成によって彩りが加えられ、物語を綴っていきます。
バンドサウンドをメインに、突然フルートやストリングスが入ったり、ピアノ曲があったり、アコースティックギターとエレキギターのメロディーが乗ったり、飽きさせない見事なサウンドプロデュース。
アルバムとしても、前半と後半に山を作り、一気に聴かせる手法も秀逸です。
このバンドの中心人物は、ギター/フルートのアンディ・ラティマーとキーボードのピーター・バーデンスなのですが、私はドラムスのアンディ・ウォードのプレイが好きです。派手さは無いものの、実にまとまり良いアンサンブルにしてくれる。 しかも音色が心地よい。「Rhayader Goes To Town」での変化に富んだプレイ、「Dunkirk」での控えめなフィルインが個人的ハイライトです。
前半における「Rhayader」「Rhayader Goes To Town」の流れはロックバンドとしての聴きごたえもあるし、小品ながら「Fritha」でのアンサンブルは大変美しく、クラシカルな雰囲気を醸します。
アルバムとして「持っていない」気にさせる、美しい音楽世界を湛えた名作です。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2021年3月4日】
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