第26回 この一枚を聴く 伊藤賢一「Little Letter」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤 賢一です。
今回は、私の7枚目となるソロアルバム「Little Letter」をご紹介させていただきます。
自画自賛の回となります!ご容赦ください。
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「Another Frame」から4年。ようやく新作が完成しました。前作は楽曲の質にもかなりの手応えがあり、楽しめるアルバムだったと自負しています。また、私の 考える「アコースティックギターのサウンド」を表明するという裏テーマがありました。
そして今作。
前作で確立したサウンドには満足しているのでそれは一旦シャッフルし、今一度曲の持つドラマに焦点を当ててみようと思いました。そうなると当然マイクの選択か ら変わってきます。
今回は久しぶりに、単一指向性のマイクをメインとしました。
私は4枚目「かざぐるま」からずっと無指向性のマイクを選択してきました。無指向性マイクは、「その部屋にある音を録る」というコンセプトであり、ギターの持つダイナミクスを”余さずに”録れるという利点があります。それに対して単一指向性マイクは、狙った対象を”積極的に拾いにいく”というニュアンスでしょうか。もちろん アルバムを聴いてこれは無指向だ単一指向だと言い当てるのは難しいですが、録る前段階においては両者の比較はかなりはっきりと感じることができます。
なので今回は思い切って、名機ショップスCMC65の単一指向性モードをメインマイクに採用しました。
それによって、各曲の持つメロディの力がかなり前に出たと思います。
ただ、録音を進めていて、私のメインギターKen Oya(2008)だけは、今までの無指向性が合う事がわかり、無指向性マイクのベストチョイスDPA4006aを採用しています。大屋ギターの特長は、全ての声部が弱点無くアンサンブルとして機能するところ。その特長が、単一指向性だと若干「もれる」ような印象がありました。
DPAに変えて、かなりしっくりきました。
マイクの選択だけでかなりの時間を使いましたが、妥協せずに詰められるのが自主制作の良いところです。
ミックス~マスタリングの過程にもかなりのこだわりがあるのですが、長くなりす ぎるのでここでは割愛させていただきます。
完成したアルバムは、私の知る限りにおいて最も聴いていて楽しいギターアルバムとなりました。
メイン楽曲「Unknown Circle」のテーマ性。
散文詩的な「R357」のキレ味抜群のサウンド。
ヨークの大名曲をハウザーの美音で掘り下げた「Home」。
重ね録りのトレモロが広がりをみせる「盗めない宝石」。
それらの曲の合間に「ギルバートに」「どんぐりの庭」「雨百合」などの内容の濃い小品が配置され、何度聴いても楽しめます。 楽曲的にもサウンド的にも最高のアルバムが完成したと思います。
今回は手前味噌な内容となり恐縮ですが、伊藤賢一7thアルバム「Little Letter」 自信を持っておすすめいたします。
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1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2021年7月3日】
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