第27回 この一枚を聴く 小川倫生「live / april 14 , 2001」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回はこの7月にリリースされたばかり。小川倫生さんの新作ライブ盤をご紹介します。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
ギタリスト小川倫生。
私もかねてよりツアーを一緒にまわったりユニットを組んだりと仲良くさせていただいている小川さんですが、この人の魅力を表すのは意外と難しいのです。あえて言葉で表すならば「音楽そのもの」というのが最も近い気がします。
別の言い方をすると、「枕詞」が付きにくいタイプとも言えます。 リリカルな曲構成も、美しいボイシングも、時にはアクロバティックなテクニック も、どれも突出して聴こえないんですね。それら全てが音楽に集約されていく様が、小川倫生なんだと思います。
そんな小川さんが、この度ライブアルバムをリリースしました。
「live / april 14 , 2001」というタイトル通り、2001年4月14日のライブの模様を収録したものです。
時期的には、2ndアルバム「スプリング・サインズ」リリース直後で、そこからの楽曲が中心となっています。
とはいえ、冒頭のセットで自作曲にスウェディッシュ・フォーク・ユニット、ガルマルナのカバー「Flusspolska」を交えてきたり、随所で各国のトラッドを配置する など、ニューリリースのアルバムからの曲を中心としながらも、あくまでその日独自のプログラムでライブを彩っているのが印象的です。
個人的に大好きな「Two Years Or Three / The Gardener」がソロバージョンで聴けるのが嬉しいです。
ホイッスルとのスタジオ盤とは別の、行間の静謐さが沁みます。
また、「The Cuckoo」「The Lowlands Of Holland」での、弾き語りが味わい深いです。うーむこれは20代の芸風ではない。信じられないほど熟成を感じさせ る歌唱です。
締めくくりは大作「雪夢~長雨」。
ここで描かれる瞬間瞬間の季節の移ろいが、ライブ全体の走馬灯のように響き渡ります。
それにしてもこのライブが20年の間眠っていたというのが驚きです。
よく掘り起こしてくれました。今回のリリースに感謝です。
音楽が爆発したライブ。
控えめに言って「一家に一枚」のアルバムです。
伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏 TOP へ
伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2021年8月2日】
|