第28回 この一枚を聴く Robin Williamson「Myrrh」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回はロビン・ウィリアムスンの名(迷?)盤「ミルラ」をご紹介します。
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いわゆる「ジャケ買い」をした初めてのアルバム。
山の中腹で集まる人々。
何をしているかは不明。
今でも大好きなジャケットです。
インクレディブル・ストリング・バンドの鬼才ロビン・ウィリアムスンの初のソロアルバム。
ギター、フィドル、ブズーキ、マンドリン、ハープ、笛・・・・本当にたくさんの楽器を演奏できるマルチプレイヤーです。
1971年のリリースなので、インクレの活動の合間に制作していたようです。
一言で言うと不条理、変幻自在、摩訶不思議な世界。
それを徹頭徹尾アコースティック楽器で行うのがロビンのアイデンティティーでしょう。
ジャケットの風景から風が吹いてくるような一曲目「Strings In The Earth And Air」
パーカッション、ベースなどのリズム楽器はありません。
擦弦楽器のドローンに乗って、ゆったりと雲のように流れる旋律とへろへろな声。
間奏の笛では草や風の匂いまでただよってきそうです。
三曲目「The Dancing Of The Lord Of Weir」
ブズーキの伴奏に乗るロビンの歌唱は、歌というよりも劇の語りのよう。咆哮とブズーキのストロークが熱く絡みます。
四曲目「Will We Open the Heavens」では、味のあるフィンガースタイル・ギターから、なんとフルート、ピアノ、オーボエ、チェロ、までこなし、もちろんヴォーカルも彼。転調を自由に施したロビンの心象風景が、最もサウンドに表れたトラックかも知れません。
アルバムを通して民族楽器の響きに満たされ、東洋、中近東、東欧、古代、といった時代も土地も超えて旅するようなアルバム。
一回聴いただけでは掴みきれない難解な構成を持ちますが、決してテキトーでなく、彼の音楽的素養を感じさせるのが独特。
決して耳触りは良い音楽ではありませんが、味のある音が詰まった名盤です。
アコースティックを愛する人ならば、一度はトライしてほしい音楽です。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2021年9月1日】
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