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伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏


第33回 この一枚を聴く Dai Komatsu & Tetsuya Yamamoto 「Graphos」

アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回は日本を代表するアイリッシュ・デュオ小松大&山本哲也の新譜をご紹介します。

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素晴らしい音楽が誕生する瞬間というのは、何者にも代え難いものです。
それが友人の手によって生み出されたとなると、”嬉しい”を通り越して一種の”安らぎ”さえ感じさせてくれます。
今回はフィドル奏者小松大とギター奏者山本哲也の新譜「Graphos」(グラフォス)を強力お薦めします。

音楽を聴く時、私たちは旋律の持つ豊かさや楽しさと共に、「音色の力」を無意識 に感じています。
好きな音かどうか。
これは音楽を聴く時の最重要なポイントの一つです。

つまり「楽曲が良い」=「アイルランド音楽である」だけでは音楽として片手落ちと言えるでしょう。
美しい曲がそこにあったとして、素直に弾くだけでは音楽の良さを十全に引き出すことは難しい。そこに演者の持つキャラクターや意志がどれだけ投影されているか、そこに聴き手は知らず知らずのうちに引き込まれます。

私はこのアルバムを聴いて「あーこの音大好きだな」と強く感じました。こうなるともうこのアルバムはヘビーローテションせずにはいられなくなります。

派手さや煌びやかさよりも、本質をついた重めの表現が身上の彼等ですが、前2作よりも更に重心は低く、一音の熱量も高い。速い曲でもまったく上滑りしない技量は恐ろしいほど。とても軽く聴き流せない内容ですが、通して聴くとあっという間。アルバムのプログラミングがよく練られているからでしょう。

2曲目「Fisherman's Lilt~Ships are Sailing~Boys of Ballinahinch」のセットは、前半の山場でしょう。 ずっしりと、アイルランドの歴史や風土まで歌いこむかのような弾きっぷりの小松大のフィドルに、伴奏にとどまらないファンタジーを加えていく山本哲也のギター。

 

「Isle of Hope, Isle of Tears」では朗々とヴィオラで奏でる名旋律に心が開かれます。
そしてギターの一音一音の深さは比類なし。間にギターソロを交えたアレンジも秀逸です。

「Planxty Davies」での、ユニゾンでお互いせめぎ合うアレンジもこの2人ならではのもの。

「McGreevy's Favourite~Beare Island~Old Bush~Morning Dew~ Glass of Beer」のセットはまさにハイライトです。
フィドルソロのMcGreevy's Favouriteから、ギターユニゾンで切れ込んでくるBeare Islandへの切り替わりは鳥肌ものです。Old Bushで次第に熱くなるアレン ジとテンポ、そこから雪崩れ込むMorning Dew。フィドルの響きはいよいよ濃く深く心に迫り、Glass of Beerのラストでの咆哮に繋がっていきます。

2人の音楽には慰め合いは皆無で、常に格闘です。
「スタンドプレーから生じるチームワーク」
このアルバムを聴くと、この名台詞を思い出します。

全ての人に聴いてほしい、日本が世界に誇る一枚です。

Graphos





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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。

伊藤賢一

【2022年2月3日】

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