第37回 この一枚を聴く Led Zeppelin「Led ZeppelinIII」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤 賢一です。
今回は言わずと知れたレッド・ツェッペリンの名盤をご紹介します。
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Led Zeppelin(以下Zep)の音楽は独特です。
言わずと知れたハードロックのレジェンドとして、もはや語られ尽くされた存在。
ハードとかブルージーとかはたまた英国的とか、そういった外観とは別の印象を個人的には持っています。
一言で言えば「クレバー」
彼らの音楽は一見すると直情的に見えますが、楽曲もサウンドも相当構築されたものだと思います。
その手法は多岐に渡り、ブルースのアレンジを見てもひとつの素材を”凝縮”するかと思えば、別の曲においては”拡張”手法に転じたり、一筋縄ではいかない自由な構成力があります。そういった味わいは、ロックというよりどちらかというとクラシッ ク的な態度と言えます。他のバンドがやったように、単純に”クラシカルなフレーズをロックに持ってくる”わけではなく、その構成力がクラシックに通じる匂いがするという点で、後にも先にも彼ら以外には成し得ていない音楽を残していると思いま す。
それでいて、メンバー各人の力量もずば抜けており、小難しい解釈を抜きにして純粋なタレントとして聴いても一生楽しめる。
まさにモンスターバンドと言えるでしょう。
そして特筆すべきは、”アルバム”に命をかけた点。シングル曲でヒットを飛ばそうとせず、アルバムトータルでのコーディネートを第一義とした点が非常に素晴らしいと思います。それが今になってZepの存在を神格化し、より大きな力を得ている気がします。
さてそれを踏まえてこの”III”。
「アコースティックをフューチャーしすぎ」とのリリース当時の酷評は有名な話ですが、現在では二転三転して名作としての評価が定着した感があります。
とはいえ私自身もZepといえば”II”という人間であり、”III”に関しては、そのアルバム全体に漂う穏やかで不思議な空気を浴びるために聴いています。
ただ一点、ロバート・プラントのボーカルに関しては全アルバムの中で最高の出来だと思っています。これを誰も指摘しないのが不思議なくらい。ハードでブルージーな大名曲「Since I've Been Loving You」をハイライトとし、「Gallows Pole」 での感情の振り幅、「Tangerine」での寂寥感、「Bron-Y-Aur Stomp」での小気 味良いキレ、「Hats Off To (Roy) Harper」ではジミー・ペイジのドブロとのデュオがまた素晴らしく、サウンド的に最も退色させた世界観をアルバムの締めに持ってくるセンス。充実した音楽の核としてプラントの貢献は多大です。
Zepにおいては、ボーカルといえども”構築物”のひとつであり、組み上げられたリフの1パートのように扱われることも多く見られます。後期のアルバムほどそれが顕著になり、ボーカルがメロディらしきものを歌うこと自体減ってきますが、このアル バムは最も”歌の力”で聴かせる世界観が強いと思います。
ジミー・ペイジのギターもジョン・ボーナムのドラミングも、ジョン・ポール・ジョーンズのマルチぶりも当然素晴らしいけれど、ぜひ今一度、このアルバムでのロバート・プラントのボーカルに焦点を当ててみてください。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2022年6月2日】
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