第38回 この一枚を聴く 浜田隆史「24のアルコール・ワルツ」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回はギタリスト浜田隆史さんのワルツ集をご紹介します。
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ギタリスト浜田隆史は”ラグタイム・ギター”の日本代表と言えるでしょう。
ピアノ原曲の快活なラグタイムをギターにアダプトするために編み出した”オタルナイ・チューニング”(E♭A♭C F C E♭)を駆使し、人間には不可能と思われる運指 で弾きまくるさまは、迫力満点で圧倒されます。
また、クラシック・ラグタイムの形式にのっとったオリジナル作品も数多く、現代においてラグタイムの新作を発表し続けるとても貴重な存在です。
しかし、1ファンとしては、彼のイメージが”ラグタイム”一色になるのがとても勿体なく感じてしまうのです。
なぜなら、彼の作り出す音楽はラグタイムにとどまらず多岐に渡り、世界中の音楽を自身の中に取り込み昇華させた独自の”浜田曲”だからです。
現時点の最新作「24のアルコール・ワルツ」は、そんな浜田曲の素晴らしさを気軽に味わえる恰好の一枚かもしれません。
全24曲というと構えてしまいますが、各曲はそれぞれ2~3分台の曲ばかり。
疾走感、抒情性、不安感、さまざまな感情をそのサイズに収めた、音楽の図鑑のような趣もあります。
ワルツばかりを24曲書き下ろすだけでもすごいですが、その全てを1ヶ月で成したという事に驚嘆します。コロナ禍においてライブ活動が抑圧される中で創作意欲を爆発させた彼の音楽家としての姿勢を尊敬します。
またこの曲集は、各曲に副題もほとんど付いておらず、純粋な番号制なのが新鮮です。
聴き進めていくうちに、お気に入りの曲がきっと見つかる事でしょう。
個人的に好きなのは
ロマンチックさと不安感の不思議な揺らぎを持つ「第2番」 ド直球の大名曲「第3番」
快活な中に漂う郷愁「第5番」
無邪気な「第7番」
隠れた名品「第10番」
単調に見えてひねている「第15番」
美しい旋律の起伏「第20番」
ワルツに聴こえない「第24番」
皆さんもぜひとも、24篇の音楽の旅に出てみてください。
※ちなみに、楽譜集もこの度リリースされました。 ”オタルナイ・チューニング”(E♭A♭C F C E♭)のコード・フォームなども収められた貴重な一冊です!
ご注文は浜田隆史さんのHPまでお問い合わせください。
https://otarunay.at-ninja.jp/
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2022年7月1日】
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