第41回 この一枚を聴く Nightnoise「The White Horse Sessions」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回はナイトノイズの珠玉のライブ盤をご紹介します。
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ナイトノイズはアイルランド出身のギタリスト、ミホール・オ・ドーナルがアメリカ人フィドラー、ビリー・オスケイと共に結成したユニットで、かのウィンダム・ヒルから1984年にデビューを果たしました。
のちにミホールの妹でピアニストのトリーナ・ニ・ゴーナルとフルート/ホイッスルのブライアン・ダニングの2人のアイルランド人が加わり、4人編成に。
のちにオスケイが脱退し、後釡にジョニ・カニンハムが加わったことにより、メンバー全員がアイルランド人となりました。
彼らの音楽は、”ケルト・ミュージック”と表現されることが多かった気がします。
彼らがケルティックであるという事実以上に、ケルトという言葉の持つ、どことなく幻想的な響きと彼らの音楽が「イメージとしてのケルト」を形成した(少なくと も日本では)気がします。彼ら自身は、ケルトを意識するというよりもあくまで自らに素直に音楽を奏で、生み出していたのではないかと想像します。
彼らの魅力は、その群を抜いた演奏力と、ソングライティングの見事さにあります。
今でこそアイルランド音楽は日本においてよく知れ渡っていますが、1980~90年 代当時、アイルランドの空気をまとった彼らの楽曲にはじめて心を鷲掴みにされた人も多かったはずです。アイルランド伝統音楽へ確実に橋渡しをしながらも、彼ら自身のオリジナリティとアイデンティティは不滅の輝きがあります。
デビュー以来、コンスタントに名作を生み出していったナイトノイズですが、このライブ盤の充実ぶりは目を見張るものがあります。
ライブという事でベスト盤的選曲なのもありますが、演奏のキレが最高です。
スタジオ盤よりも非常にテンションが高く、小さめのスタジオでのライブという事で雰囲気も良かったのでしょう。彼らの息遣いまでダイレクトに伝わってきます。
白眉は個人的に大好きな「Hugh」。
トリーナのペンによるこの曲は、ピアノの節回しの自在さと裏に回ったホイッスルの哀愁が素晴らしい効果を生みます。そしてオブリガートでありながら全てを内包 するような存在感のミホールのギター。最高のテイクでしょう。
ヴァン・モリソンのカバー「Moondance」も実に自在なアレンジで、息を呑む圧 倒的な怪演です。
ナイトノイズ、未聴の方にはぜひ聴いてほしい一枚です。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2022年10月2日】
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