第45回 Crosby Stills Nash & Young「4Way Street」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。 今回はデヴィッド・クロスビーの追悼の意味を込め、不朽のライブ盤を取り上げます。
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2023.1.18
デヴィッド・クロスビーが亡くなって、自分でも意外なほどショックを受けてしまいました。
近年のソロ活動などを追っていたわけでもなく、はっきり言って「過去の人」でしかなかったのに・・・
思いのほか、自分の中にはたくさん彼の”音”が生きていたんだなと実感しました。
クロスビーといえばクロスビー・スティルス&ナッシュ(CS&N)。
そしてニール・ヤングを加えたクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング (CSN&Y)。
デビューから3年ほどが全盛期という、時代の寵児的な輝きを放ったユニットですが、その光の大きさは超弩級であったと言えるでしょう。
私にとっては、アコースティック・ギターの音の一つの規範であり頂点とも言えるサウンドを残してくれた先生、大恩人のような存在です。
サウンドの力を感じるならば、ライブ盤「4Way Street」がおすすめです。彼らのアルバムで最初に買う一枚としてもお勧めできるほど、充実した2枚組です。
1枚目がアコースティック・ステージ、2枚目がエレクトリック・ステージと、編成が分けられています。
私は特に1枚目ばかりヘビーローテーションしていました。
この中で特に刺さったのが「The Lee Shore」「Laughing」といったクロスビー の楽曲です。
もちろんニール・ヤングの名曲「On The Way Home」「Cowgirl In The Sand」もどっぷり嵌まり込みましたが、クロスビー作は、より内向的で、自身の美意識を音楽という形に置換する熱量に満たされている気がしていました。
その美意識は、彼自身の声とギターで実現できると、彼自身は確信していたのではないかと感じます。
クロスビーといえばマーチンD-45の輝かしいサウンドが思い浮かびます。
どうしてもギターの音に焦点が当たってしまいがちですが、最も特筆すべきはヴォイシングの美しさと揺蕩う転調を駆使した自在な世界観でしょう。
「Triad」での、1曲のサイズの中にあたかも組曲のように展開する場面の多彩さ。
ストロークで始まり、ハーモニクス、単音で歌とのユニゾン、元調に帰結する時には強い3度のフレーズを当てるセンス、こういうプレイにはなかなかフォロワーが出にくい。彼だけの唯一無二の音世界です。
彼を失って、彼の遺した熱量が自分の中でずっと消えずにあったことを思い知らされました。
ぜひこの名作を聴き、皆さんで語り継いでいってほしいと願っています。
デヴィッド・クロスビーよ、安らかに。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2023年2月5日】
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