第48回 ジョン・ジェイムス「John James」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回は知る人ぞ知る名ギタリスト、ジョン・ジェイムスのアルバムをご紹介します。
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私の敬愛するギタリスト、ジョン・レンボーンは、ギタリストとデュオをいくつか組みました。
バート・ヤンシュ
ステファン・グロスマン
ウィズ・ジョーンズ
とのコラボが有名なところですが、個人的にはジョン・ジェイムズがとても印象深いのです。
何しろレンボーンの大名盤「ハーミット」でのデュオ演奏はジェイムズによるもので、このアルバムの色合いに多大な貢献をしています。
「ハーミット」収録の「ジョンズ・チューン」は、レンボーン本人の「ジョン」でなく相方ジョン・ジェイムズのことであり、ジェイムズの曲をメインテーマに拝借して対位法的アプローチを施しレンボーン作に仕立てたものです。
そして、世紀の名演「トイ~ウィーロビーのご帰還」の2ndギターも務めています。
ここでのジェイムズの音楽は組めども尽きぬファンタジーに満ちており、レンボーンの鋭い視点の効いたアレンジに拮抗するのではなく、おやかに包み込むような溶け合うような、絶妙な絡み方が最高です。ジョン・ジェイムズ無くして名盤「ハーミット」は生まれなかったでしょう。
ジョン・ジェイムズのついて個人的に感じるのは、音色への意識と独自性です。
アコースティック・ギターの「音色」については、なかなか語られる時代が来ないなと感じています。もちろん、「ギター本体」の音色については、材がどうだ年式がどうだメーカーや作り手がどうだと語られるのは見ますが・・・
どう音を引き出すか。「タッチ」の話になると途端に個人的な世界に収束していきます。
正解のない世界だけに、プロもアマチュアもそれぞれの美意識をもっと外へ出していくと面白いですね。
私は70年代に活躍したギタリストでは、ジョン・ジェイムズは音色に関してかなり意識をしていたギタリストだと感じています。
ではレンボーンはどうかというと、「ギターを鳴らす」という意識はそこまで持ってなかったのではないかと推測します。好きな世界観が確固としてあり、そこへ飛 び込むように表現をし続けるレンボーンに対し、ジェイムズは常にトーンへの意識が 効いている、そんな印象です。
私はこのジェイムズの視点、よくわかる気がするのです。
もちろん直接やりとりをしたことは無いので想像の域を出ませんが、こうしたギター弾き視点の聴き方もファンタジーを掻き立てられるものです。
今回紹介するアルバム「John James」は、非常に地味な内容ながら、ギターの音にだけある独自の「間」をつねに感じる、隠れた名作だと思います。
カフェなどでかかっていたらアルバム通して聴いていたくなるような、おだやかで少しシニカルな色合いのアルバムです。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2023年5月4日】
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