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伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏


第50回 山本哲也「Museful」

アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回はリリースされたばかりの、ギタリスト山本哲也さん渾身作をご紹介します。

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アイリッシュ・ギターの達人であり、孤高の音楽家、山本哲也。
彼の素晴らしさは、このコーナーでも何度もお伝えしてきました。
表現は濃く深く、音色は透徹。無垢材からひとつの造形を彫り進めるかのような、唯一無二の世界。トラディッショナルは美しく強いだけの世界ではない。人間の儚さや醜さをも内包するものだ。と、音楽の奥底を照らして見せるような、彼の生き 様に強く共感します。

5作目となる『Museful』、聴きどころ満載ですが、ギタリスト竹内いちろの楽曲「黒の森」の見事なカバーは必聴。仄暗い和声の羅列と幻想的な展開。この淡く浮遊した世界は、厚い音色で紡がれた竹内いちろ本人演奏とは別の「闇」を見せてくれます。いちろさんと哲也さんと共通するのはタッチの「速さ」ですが、いちろさんの音が直進性を持って聴き手の心に届くのに対し、哲也さんは聴き手の上に音の粒子を降らせるようなニュアンスです。そんな比較も楽しい、実に味わい深い一品 となっています。

シンガー・ソングライター田野崎文(たのさきあや)の名曲「新しい感情」のカバーでは、淡々とした詩的な表現によりメロディの力が素直に描き出され、聴き手の 共感を生みます。

お家芸のトラッドも充実しており、中でも「Morrison’s Jig」が実に印象的です。
短いトラックですが転調を繰り返すことにより、感情のステージを演出する手法が 見事。

The Bothy Bandの演奏で有名な「Kesh Jig Set」も入魂のトラックです。愛器ボ ジョアOMによる濃密な音色での速いパッセージの連続は、彼のヴィルトゥオーソがいかんなく発揮された場面で聴きごたえ満点。

「Hours After」(John McCutcheon)は、デュオユニットThe Wheelでの哲也 さんの相方、ハンマー・ダルシマー奏者小松崎健の十八番として知られています。 この曲の快活なイメージから一転、ギターソロらしい沈着した世界を彫り出しま す。
ラストナンバーはなんとサン=サーンスの「白鳥」。この名曲を最後のご挨拶とばかりに登場させ、聴き手を和ませて締めくくります。

アルバム構成、演奏、録音、全てが充実した本当に見事なアルバムです。 この作品を、ギタリスト、しかも友人が作り上げたこと、とても誇りに感じます。

最後に、
私の個人的に思い入れで、1曲目の「Foggy Dew」を白眉として挙げます。 イースター蜂起をテーマとした歌詞はまさに戦争の描写で、悲惨この上ないものです。
この歌を、「怒り」ではなく「悲しみ」を持って表現した彼の眼差しに、私は強く共感します。

【山本哲也オフィシャルサイト】
https://www.tetsuya-yamamoto.com



Museful



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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。

伊藤賢一

【2023年7月4日】

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