第53回 この一枚を聴く Caravan「In the Land of Grey&Pink」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回はカンタベリー系プログレのレジェンド、キャラヴァンの名盤の登場です。
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レコード屋のプログレコーナーを見ると、「Camel キャメル」の次に必ず「Caravan キャラヴァン」が配置されるので、抱き合わせのようにどちらも聴いていた妙な記憶があります。
両者はプログレ界の中にあって名人芸や難解さよりも”叙情性”を表に出した点でも似ており、キャラヴァンがカンタベリー、キャメルがギルフォードと土地は違えど英国南部の風土をなんとなく想像させる。そんな気分で聴いていました。
どちらも好きでしたが、バンドの音像は断然キャラヴァンが好みでした。
リズム隊の音が立ち、なによりBassのリチャード・シンクレアが好きでした。比較するとキャメルのダグ・ファーガソンはかなり見劣りがしてしまいます。
このアルバムは彼らの最高傑作として知られています。
1曲目の「Golf Girl」が流れた途端から、名作の香りが立ちます。
とぼけた曲調の中で、全ての音が驚くほど活きている。登場する楽器の音全てが尖らず抑えが効いていて、個人技が目立ちがちなプログレの中で異色な音像です。個人よりも、響き全体がエキセントリックな印象。このアンサンブルの楽しさはアルバム全体通して途切れることがありません。
20分超の大作「Nine Feet Underground」が見事な展開で注目されますが、私のハイライトはタイトルナンバー「In the Land of Grey&Pink」です。全てのパートが音楽に帰依していて美しい。
驚くべくは間奏です。リードパートのはずのピアノのレベル(音量)の低さ!メインパートよりバッキングをビシバシ強調するセンスが圧巻です。続くキーボードはしっかりとメインパートの音量を出してくるあたり、確信犯なのでしょう。こういう仕掛け、大好きです。それにしてもリチャード・シンクレアのベースはすごい。淡々とした外観で常に動き続けている。このベースが、この曲全体の緊張感を生んでるのは間違いないです。内容が詰まった、驚くべき1曲です。
秋の夜長に音楽を。
ぴったりの一枚です。ぜひ!
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2023年10月1日】
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