第54回 「春は来たりぬ」デイヴィッド・マンロウ/ロンドン古楽コンソート

アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは！ギタリストの伊藤賢一です。
今回はデイヴィッド・マンロウによるイタリア古楽の名盤をご紹介します。
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デイヴィッド・マンロウの名前を初めて目にしたのは、ジョン・レンボーンのアルバム「レディ・アンド・ザ・ユニコーン」のライナーノーツでした。

このアルバムを聴いたのは17歳の時でしたが、今振り返っても私の人生を決定づけるアルバムのひとつだったと思います。
それまでアコースティックギターの音楽というと、フォーク、ロックはもちろんですがルーツ的なものだとブルースやブルーグラスしか知らなかった時に、この「いにしえのヨーロッパの香り」は強烈でした。
冒頭の「トロット〜サルタレッロ」のモーダルな空気感、「ブランル・ゲイ〜ブランル・デ・ブルゴーニュ」の牧歌的な世界、「アルマン」の寂寥。それら全てがジョンの流麗なアレンジとプレイで紡がれる様にやられました。
「ギター弾けるとこんな素晴らしい音楽と出会えるんだ」というワクワク感。これは決して忘れる事はないでしょう。その勢いのまま、ギタリストになって現在に至ります。

ライナーノーツには『デイヴィッド・マンロウの「春は来たりぬ」にこのアルバムの元ネタの一部を聴くことができる』的な事が書かれていて、早速買って聴いてみると流麗だった「トロット」は力強く、逆にリズムを強調していた「トリスタンの嘆き〜ロッタ」は儚げで、その表現の幅にものすごくのめり込みました。この先古楽をたくさん聴くようになったまさに入り口となったアルバムでした。

レンボーンネタとは別に強く惹かれたのが、ランディーニの楽曲です。
構築的というより断然旋律的で、メロディを歌う（弾く）喜びに満ちた曲達だなあと感じたのを覚えてます。
フルアンサンブルに慣れた現代の耳には所在無げに響くかもしれませんが、メロディの跳躍ひとつひとつの瞬間を感じるように聴けば、きっと入り込んで聴けると思います。音をひとつ発したら次の音をどこに描くか、それ自体が夢のある遊びなのだとランディーニから教わった気がします。

まだまだ馴染みの薄い古楽の世界。
その入口としてぜひ聴いてもらいたい一枚です。

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伊藤賢一　http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年　ギター専門学校（財）国際新堀芸術学院入学。
1998年（財）国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生＆伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。