第57回 この一枚を聴く ヘルベルト・フォン・カラヤン:ベルリン・フィル・ハーモニー管弦楽団「ベートーヴェン交響曲第3番」1982年Live
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤 賢一です。
今回はカラヤン:ベルリン・フィルの世紀の名演をご紹介します。
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クラシックをあまり聴かない方でも、指揮者「カラヤン」という名前は聞いたことがあるでしょう。
20世紀に最も輝かしい成功を収めた指揮者であり、その膨大なレパートリーと録音 の多さを見るにつけ、もうこういう存在は現れないのではないか、とさえ感じます。何はともあれ、1960年台から80年代まで、カラヤン:ベルリン・フィルのコンビはクラシック界最大のアイコンでした。
しかしその成功の眩さゆえか「アンチ・カラヤン」も実に多く、もしかしたらカラヤン・ファンと同数くらいはアンチが存在するのかも知れません。
確かに、磨き抜かれたオケの響きは「きれいすぎて本質的ではない」「むやみにレ ガートすぎる」など色々と批判されてきました。カラヤンの前の時代の巨匠たち、トスカニーニやフルトヴェングラー、ワルターに比べると明らかに「何でもやる 感」が強いですし、何でもできる分だけ表現の極端さは慣らされているようにも聴こえます。
私個人の感覚だと、カラヤンは断然好きな指揮者です。
なぜなら、ライブで爆発する指揮者だから。
スタジオ録音が「整いすぎ、綺麗すぎ」という方は、カラヤンのライブをぜひ追ってみてください。
カラヤンはおそらくスタジオではテクノクラート的なアプローチをメインにし、その分(?)ライブでは感情を爆発させるタイプだったのではと感じます。カラヤンのライブにはムラっ気と感じるほど出来の波があり、うまくいった時の演奏はそれはそれは、もうこれ以上望めないほど凄まじいものだと思います。
その中でも最もおすすめできるのが今回ご紹介する演奏です。
ベルリン・フィル創設100周年記念ライブでのベートーヴェン交響曲第3番「英雄」。
このライブは映像も残されているので是非それをご覧になってください。 YouTubeにもアップされています。
https://www.youtube.com/watch?v=7fvzrs5caU0
DVDやBlu-rayでも発売されていますので、ぜひ一枚持っておくことをお勧めします。
とにかく鬼気迫る指揮ぶりと、100周年ということでタレントの揃ったオケの破壊力。
何よりも響きの厚みに心を持っていかれます。カラヤンらしいレガートな表現は健在ですが、それが鼻につくことはなく、素直でしかも精密なアンサンブル。隙がなくしかも熱い。冒頭からラストまでその気迫は持続し、フィナーレのコーダへ行き着くまでの、低音弦の上昇音型に乗せた転調を繰り返す箇所が最も凄まじい瞬間と感じます。
カラヤンの美点のひとつは、どのパートもしっかり鳴らすことなのです。だからこそ偏った表現を良しとする「通ぶりたい」層には受け入れられにくいのかも知れません。この演奏を聴いてなお、「カラヤンはダメだ」という意見も勿論あって良いですが、そういう方は少し色眼鏡が強いなと思います。「ベートーヴェンはこうで あるべき」「他の指揮者はこうだった」というところからしか演奏を見ないのは色眼鏡です。楽譜に書かれたものを素直に引き出して豊かに鳴らし、しかも気迫を持って手中に収めた演奏は、受け手も素直に讃えるべきです。
私はどんなジャンルでも良いライブを聴くのが好きです。
このライブを現場で目撃した人はおそらく生涯の思い出となった事でしょう。
映像が残される時代に生きている恩恵に感謝しつつ、あくまで良いライブに出会っていきたいです。
また私自身もギタリストとして、ライブを磨いていきたいと思います。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2024年3月5日】
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