第59回 この一枚を聴く シモーン・ホワイト「Yakiimo」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤 賢一です。
今回はシモーン・ホワイトの傑作小品集をご紹介します。
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ハワイ出身、カリフォルニア育ち。
儚げな声とギター。そして美しいソングライティング。
フォーキーが時代相を映す鏡のような存在だとしたら、確かに2000~2010年代は 少し冷めたような彼女の空気感がピタリと合う気がする。
このアルバムは特に日本人にアピールした。
なにしろ「やきいも」という曲が収められており、彼女の歌う「やき~い~も~いしや~き~いも~」という一節があるのだ。これを聴いてファンになった方もたく さんいるはずだ。私もその一人。試聴機で「これは面白い!」となったが、よくよく聴くと曲自体があまりにも秀逸でリピート必至なのだ。彼女がツアーの最中どのように日本に居て日本を感じたのか、それが美しい音楽として形になっている。
他の曲でも特に「Candy Bar Killer」には刺さりまくった。
柔らかなエレキサウンドと淀みないメロディ。そして、やはり声って大事だなと感じる。
彼女の声は儚げで力が抜けてはいるが、決してメロディを犠牲にしない。ウィスパーヴォイスを逆手に取り、しっかりメロディを書かないシンガーソングライターは、はっきり言って多いと思う。だが彼女はどの曲も起伏と伸縮を使いこなしている。非常に優れたソングライターだと感じる。
そんな彼女のセンスは、3コードがループする進行を持つ「You Are Loved」を聴けばわかる。コードの選択もメロディの跳躍も、全てが噛み合い単調にならず「この人めちゃくちゃ音楽オタクやん」と感じる珠玉の仕上がり。
短いながらも「Your Stop」も夢に満ちた世界で、強烈なポップセンスを示す。
全15曲 45分。
ぜひこのアルバムを持って、小一時間の散歩へ出かけましょう。 清々しい時間をお約束します。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2024年5月2日】
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