第66回 この一枚を聴く オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団「シベリウス
交響曲第6番」
アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
いよいよ冬到来となり、毎年この時期に聴きたくなるシベリウスをご紹介します。
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シベリウスの交響曲はどの曲も大好きです。
特に3,4,6番は青春時代の思い出と共に心に焼き付いていて、何はともあれ聴いてみたくなってしまいます。
特に好きな演奏はバルビローリ/ハレ管弦楽団、ベルグルンド/ヨーロッパ室内管弦楽団、ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団、そこに最近ラトル/ベルリン・フィルが加わって、ローテーションで楽しんでいますが、忘れてはならない名盤が
今回紹介するヴァンスカ盤です。
先に挙げた名演と並べても、最も「シベリウスに合う響き」を持っている演奏かもしれません。
進行は淡々と、音色は丸く清らか、場面ごとの変化はさりげないが美しくスムーズ、といったもので、私の好きな演奏が渋めの音色と暗い表現を持つのと対照的です。しかしこのヴァンスカの音、中毒性があります。この浸っているだけで良い感
覚、とても楽なんですよね。
シベリウスを聴いて北欧の空気を感じてみたい、という方には、まずこのヴァンスカ盤が最もおすすめかもしれません。
特に私の大好きな6番では第3楽章が見事で、木管と弦の高速掛け合いがここまでスムーズな演奏は他にありません。ラトル盤は各楽器の分離と名人芸を感じますが、溶け合いながら進行する快感はヴァンスカ盤が勝ります。
フィナーレ(第4楽章)冒頭の清らかさもヴァンスカ盤が圧倒的で、他の名演は多少のドラマを込めているのが「くさみ」にもなるところですが、ヴァンスカは冒頭からラストまで一貫して透明感で通しています。美しいものを、そのまま出す、という潔さを感じます。このフィナーレはあまりにも良い曲なので、どうしても歌い込んだり、テンポの出し入れで寂寥感を演出したりするのですが、ヴァンスカの演奏を聴くとそうした人間の想像するドラマを廃しているように感じるのです。これと対照的なのが、バルビローリ盤でしょう。歌い込みが実に人間臭く、それがかえって聴き手の胸を打つ。
クラシック、特に交響曲の演奏は、指揮者とオーケストラによって個性がものすごく分かれますから、比較しながら聴くのがとても楽しい世界です。
ヴァンスカを気に入ったら、対極のバルビローリ、本格のベルグルンドやヤルヴィなど手を広げていくととても楽しいと思います。
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com
1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。
【2024年12月2日】
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