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          アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。 
          今回も雑感コラムです。すでにnoteにおいてリリースしている中から、アコースティックギター向きの内容をご紹介します。 
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        カポタストについて 
        アコースティックギタリストにとって最も身近な小物といえばカポタストでしょう。 
          中学生の時に初めて買ったのはゴム製のカポタストでした。↓こういうやつ            
           
           
          「これでS&Gができる!」と、勇んで7フレットに装着し、スカボロー・フェアを鳴らした時の感動。うーむめちゃくちゃ美しいじゃないですか。 
          原調で響かせる快感。こういう感動は忘れたくないですね。 
        カポタストをはめると全ての音が「押弦」となり、響きが平均化されるため、音が少し良くなったような錯覚がもたらされます。 
          特にチープなギターでは開放弦と押弦とのバラつきが大きい場合があるので、その錯覚が顕著になります。 
          中学生当時使っていたのは国産の合板ドレッドノートだったので「なんだカポ使うと音が良くなるじゃん!」と、まんまと勘違いしてました。 
          音とカポについての関係性については、後ほど少し触れます。 
        その後念願の「シャブ」を入手。 
          購入したのは18歳くらいの時でしたが、当時の価格¥3200。買った時はめちゃくちゃ嬉しかったです。それから長くメインとして活躍してくれました。 
          ↓初期型の、ガイドの無いタイプ。 
                      
         
        シャブの構造を見た時には感動しましたね。 
          ほぼ故障しようのない仕組み。実際このシャブは30年近く一度も壊れず現役です。最近色違いも買いました。 
          これはガイドがついていて、初期型とはまた違う使い心地です。「パタン」という装着感が独特です。↓ 
           
            
         
        そして、NSカポ。 
          これは軽くて携帯性に優れています。シャブに比べると単純な構造ですが、締め過ぎが続くとネジがもげるので、注意が必要です。↓ 
           
            
         
        下のはクラシックギター用のNSカポです。アールがほぼついてないフラットな指板にフィットします。 
          NSカポは気楽さが良いですね。 
          4フレットくらいまでならアコースティック用をクラシックギターに転用も可能な 
          ので、何かあった時のためにアコースティック用をカバンにひとつ常備していま 
          す。 
           
            
         
        そしてアコースティックギター用の現在のメイン、エリオットカポです。↓ 
           
            
         
        華奢なシルエットですが、鋳造ではない削り出しのため、剛性は高いです。 
           
         
          
          軽くてスタイルが良い道具は、気持ちが上がりますね。 
          機能としては、全弦に対して比較的均等に圧をかけられるので、片側からのアプローチをとるシャブやNSカポに比べるとチューニングは狂いにくいです。 
        しかしハンドメイド製法ゆえに、値段は3万円弱… 
          それでもしっかり見合ったクオリティは感じます。 
          何より演奏時に目に入るシルエットがとても良い。 
          思い切って購入して良かったです。 
        最後にカポタストとギターの音について 
        私の考えですが、カポタストの違いによって「音が変わる」という事は多少ありますが、決して「音が良くなる」わけではありません。それは先程述べた通り、全て押弦状態となり響きが平均化されるがゆえの錯覚です。 
          また当然の事ながら、ギター本体の質が高くなるほどカポタスト装着/非装着による差異は出にくくなるのもポイントでしょう。 
        カポタストによって少し低音側に偏るな、とかドンシャリになるな、とかの差異はありますが、ギターの音質自体が良くなることはありません。 
          むしろ、カポタストを装着すると多少なりともギターの響きをスポイルする方向性に振れるのです。 
        「このカポタストを使うと音が良くなるよ」というコメントをたまに見ますが、その点において論点を履き違えていると言えます。 
          カポタストの種類によって弾き心地や響きが「少し違う感じになる」程度には体感できますが、カポによって決定的な音の違いが生まれるのは私は体験したことがありません。 
        ただ、この「少しの違い」を感じられた人が 
          「これは決定的な違いである!」と他者にアピールしたくなる心理は理解できます。 
          でも問題は「違うからといってそれが自分とどう関係あるのか」という事です。ギターの機材小物関係の話題の多くはその点がいつも曖昧なまま話が進み、見ていてフラストレーションが溜まりますね。 
        気に入った道具を使うと気分良く演奏できる。 
          大事なのはその一点だと思います。 
        絶対値としての正解など求めずに、常に自分の好みを採用していく事。 
          それがひいては大きな楽しさへと繋がると思います。 
 
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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com 
   
  1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。 
  1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。 
  2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。 
  2001年1stアルバム「String Man」リリース。 
  2002年2ndアルバム「Slow」リリース。 
  2007年3rdアルバム「海流」リリース。 
  2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。 
  2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。 
  2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。 
  2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。 
  2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。 
  2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。 
  2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。 
     
    
   
  
【2025年4月4日】 
           
           
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